猫の去勢手術についてのメリットと注意点

猫の去勢手術についてのメリットと注意点

猫の去勢手術に関しては、「した方が良い」という意見と「愛猫が可哀想だからしない方が良い」という意見、賛否両論あります。愛猫に去勢手術を受けさせるか否かは最終的に飼い主さんの判断となりますが、この記事が参考になれば幸いです。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫の去勢手術について

手術中の猫

猫の去勢手術とは、簡単に言うと全身麻酔をかけ精子を作っている精巣を取り除き、繁殖能力をなくす行為です。手術自体はものの数分で終わってしまいますが、全身麻酔というリスクはあります。その他にも気をつけるべき点が幾つか・・・。

しかし去勢手術を行うことで、大きなメリットも得られるのです。そうでなければ健康なオス猫の体にメスを入れることは許されないでしょう。それではまず、去勢手術を行うことのメリットを見ていきましょう!

猫の去勢手術のメリット

目を抑えている猫

オス猫の去勢手術を行うことで得られるメリットとはどのようなものなのでしょうか?

メリット

去勢手術をすることによるメリットは以下の通りです。

  • 生殖器系の病気の予防

オス特有の病気である精巣腫瘍の予防になり、前立腺肥大などの発症率を抑えることができます。また、ケンカをすることが少なくなりますので、ケンカによる感染症にかかる可能性も減少します。

  • 問題行動の抑制

去勢手術をしないと、縄張りを主張するためのスプレーや、徘徊(はいかい)によって飼い主さんが困る原因となります。時には深刻な問題となることもありますので、去勢をすることでこれらの行動を抑えられるようになります。困った飼い主さんに捨てられることもなくなるでしょう。

また、繁殖期にはメスを求めて網戸などを突き破って脱走することもあるようです。去勢手術をすればそのような強い性的欲求も感じなくなりますので愛猫もストレスから解放されます。

  • 殺処分の減少

去勢手術により繁殖能力がなくなりますので、産まれる子猫の数が減少することにより、殺処分される猫も少なくなることが考えられます。現在でも年間数万匹の猫が殺処分されていますが、少しでも不幸になる猫を減らすための手段として去勢手術は推奨されています。

デメリット

大きなメリットがあることは分かりましたが、手術にはいくつかデメリットがあります。

  • 全身麻酔のリスク

去勢手術時には全身麻酔を行います。麻酔から覚めない可能性もゼロではありませんので、その点は獣医師と相談の上、飼い主さんの慎重な判断が求められます。

  • 肥満

去勢手術を行うと肥満になりやすくなる傾向にあります。その原因はホルモン分泌の変化ですが、同じ食事をしていても、去勢した猫の方が未去勢の猫よりも、体脂肪や体重の増加が見られることが様々な研究で確認されています。肥満は病気を引き起こす原因となりますので手術後は特に注意しましょう。

  • 病気にかかる可能性が高くなる

下部尿路症候群は糖尿病などにかかりやすくなる、という研究結果が出ているそうです。予防、若しくは早期発見に努めるには、日頃の愛猫の様子を注意してみておくことが大切です。また、与える食事にも気をつかうと良いでしょう。

去勢手術の費用

お札と猫

去勢手術の費用は病院によって異なりますが、大体1万円から2万円と言ったところです。日帰り、若しくは1日入院で済みます。手術費用以外にも血液検査、内服薬やエリザベスカラー代金などが加算になる場合がありますが、病院によって異なります。ペット保険は使えませんので実費で支払うことになります。

地域によっては助成金が出る場合がありますので確認してみましょう。また、野良猫の去勢手術の場合は安くしてくれる病院も中にはあります。手術前に、幾つかの病院に費用について問い合わせてみると良いかもしれません。

去勢手術の適齢期

猫と獣医

去勢手術をいつ行ったら良いか、というのには様々な意見があります。日本では明確な適齢期は決められていませんが、アメリカの有識者会議では生後5か月が適齢期だ、とされたようです。ですが生後7週程度の早期に手術を行っても、体の成長や行動などに問題は見られないようです。

ただ前述したように日本では、現在、明確な基準は設けられていないため、担当獣医師に相談した上で、時期については決めることになるでしょう。

去勢手術の注意点

注射を打つ猫

では、去勢手術に関しての注意点はあるのでしょうか?

ワクチン接種を済ませておく

去勢手術を行う際に、病院でワクチン接種の有無を確かめられることがあります。病院には他の猫もいますので感染症を防ぐためにも、事前にワクチン接種を済ませる必要があります。

術後の管理

手術が終わった後は、傷口を舐めないようにエリザベスカラーが付けられます。愛猫が外してしまわないように注意しましょう。エリザベスカラーは猫にとって行動が抑制される煩わしいものです。病院で付けられるのはプラスチック製のものがほとんどですので、市販されている柔らかいものを用意しておくと、愛猫のストレスを軽減させられるかもしれません。

また、食欲が落ちることがあります。3日経っても食欲が回復しない時は受診するようにしましょう。排せつの様子にも注意し、下痢や便秘が長引くようでしたら受診しましょう。

まとめ

母猫と子猫たち

猫の去勢手術は愛猫だけの問題ではありません。飼い主さんはもちろん、去勢をしないことで産まれてくるかもしれない子猫にも関わってくることなのです。

繁殖を考えていて、産まれてくる子猫を世話できるのであれば問題はありませんが、どんどん増えてしまい結局殺処分に、というケースも少なくありません。去勢手術に関しては様々な問題が絡み合っていますが、是非ご自身がベストだと思う選択をしてくださいね。

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