猫の耳の中は掃除をしたほうが良いのか
飼い主さんから「猫ちゃんも耳の中を掃除した方がいいですか?」と聞かれることがあります。スコティッシュフォールドやアメリカンカールといった耳が特徴的な猫種を除けば、基本的に猫の耳は立っておりムレることがないため耳の中が過度に汚れることは、ほとんどありません。
逆に過度に耳の中までお手入れをしてしまうと傷つけてしまう恐れがあるため、健康な状態の耳であれば耳掃除をする必要性がありません。
猫の耳の中はL字型をしています。そして皮脂腺と耳垢腺が存在し、これらの分泌腺から出る分泌物が耳の奥に入ろうとする細菌や古い角質、毛やホコリなどと一緒になり固まって“耳垢”ができます。
通常であれば耳垢は自然と外に出ていくように働いていますが、何らかの要因によって分泌物が多くなり耳垢も大量に溜まってしまうことがあります。
猫の耳の中を掃除したほうが良い場合
猫の耳の中に黒い汚れがある場合
耳の中の分泌物が多くなるとその分、耳垢の量も増えます。分泌物の量はそれぞれ猫の個体差により異なり、多く出る猫もいれば、ほとんど出ない猫もいます。
正常な耳垢はこげ茶色をしていますが、耳垢が黒っぽい場合は外耳炎や耳ダニ、真菌症などを発症している恐れがあるため適切な治療や耳掃除をおこなう必要があります。
匂いや痒みを伴う場合
耳垢の量が多かったり、くさい臭いがする、耳を痒がる場合は外耳炎を発症している可能性があります。耳掃除をおこない清潔にするとともに、適切な治療を受ける必要があります。
外耳炎は早期に治療を受ければ早く治りやすいものですが、しっかり治療しないと再発することも多く、耳の中がムレやすい梅雨の時期や気温が高い夏の季節は、細菌や真菌が増殖しやすく外耳炎になりやすいため注意が必要です。
また元々耳の中が狭いアメリカンカールやスコティッシュフォールドは外耳炎になりやすい猫種でもありますので、定期的に耳の中をチェックしたり耳掃除をおこなうとよいでしょう。
猫の耳の中を自宅で掃除する場合の注意点
飼い主さんの爪は短く切っておく
猫を飼っている飼い主さんなら当たり前のことですが常に爪を短く切っておくことです。猫の皮膚は薄くて敏感なため、爪が長いと皮膚を傷ついてしまう恐れがあるからです。特に猫は鋭い聴覚をもっており、耳はその五感の中でもずば抜けて発達している感覚を受容する器官です。
また長いと爪の間が汚れやすくなり衛生的にも良くありません。もちろんつけ爪や装飾が付いた派手なネイル等もやめましょう。
手や指は一番猫に接触するパーツでもあり、爪は菌が入り込みやすいため、こまめに手を洗い清潔にすることも大事です。
猫を必要以上に押さえつけない
猫の“保定の仕方”によって耳掃除をさせてくれるかどうか大きく関わってきます。性格にもよりますが、そもそも猫は単独で行動する動物ということもあり拘束されるのがとても大嫌いです。
無理矢理押さえつけたり、力ずくで抑え込むことは返って逆効果となり、耳掃除ができないだけではなく、飼い主に対する恐怖感を与えてしまい信頼関係を崩してしまいます。安全におこなうためにある程度での保定は不可欠ですが、必要以上に抑え込まないように気をつけることです。
急に耳掃除を始めない
耳掃除ができない背景にはいきなり始めたケースが多く、意外に多くの方が無意識にそうしているのかもしれません。耳掃除をはじめ爪切りやブラッシングなど、猫にお手入れする際にいきなり始めてしまうと驚いてしまいます。
優しく声をかけたり、頭や体を撫でてリラックスさせてから始めてください。しかし、それでも耳掃除を嫌がる猫がいると思いますが、その場合はまず耳を触られることに慣れさせたり、短時間で済ませるように猫のペースに合わせてあげることが上手くいくコツです。
猫の耳の中を掃除する方法
コットンで拭く
コットンに耳掃除専用のイヤークリーナーを付けて、耳介部分を優しく拭き取ります。猫の耳の皮膚も薄くデリケートなのでゴシゴシ擦ってしまうと傷つきトラブルを引き起こす恐れがあります。
また猫の耳の中を綿棒で掃除している方もいますが危険なため使うことはおすすめしません。猫の耳の中の構造は私たち人と違いL字型をしており、耳鏡を使わなければ耳の奥を見ることができません。
そのため綿棒が耳の奥に刺さり傷つけたり、耳垢を耳の奥に押し込んでしまう恐れがあるからです。
お家で耳掃除をおこなう場合は見える範囲だけにし、耳の奥まで掃除をする際は必ず動物病院でおこなってもらってください。
イヤークリーナーを使う
猫の耳はデリケートなので必ず耳掃除をする際は専用のイヤークリーナーを使うことです。専用のイヤークリーナーは耳の洗浄を目的につくられており、耳垢や古い皮脂が取れやすい成分が入っています。
イヤークリーナーに使用頻度が記載されていますので、猫の耳の中の状態によりますが耳掃除の頻度を守っておこなうことです。
イヤークリーナーを使ったとしても使用頻度が多く、耳掃除をし過ぎてしまうと外耳炎を悪化させてしまう恐れがあるため、週に1回程度など耳の汚れの状態に合わせて耳掃除をおこなってください。
イヤークリーナーを猫の耳の中に直接入れて耳掃除をする方法もありますが、耳の中に腫瘍があったり奥が傷ついていると悪化して中耳炎を引き起こす可能性があるため、、自宅で行う場合にはコットンに付けて使用した方が良いでしょう。
耳の中を掃除する際に猫が嫌がる時の対処法
猫がリラックスしているときに耳掃除する
猫に耳掃除をおこなう時はリラックスしている状態のときにしましょう。このときに猫に声をかけながら、ビックリさせないように少しずつおこないます。
猫の正面からおこなうと怖がってしまうため、後ろから猫を抱っこするようなかたちで耳掃除をするとよいです。また後ろからの方が耳の中や全体が見えるため安全に耳掃除をおこなうことができます。
嫌がった時にはサッと手を引く
猫は我慢することが苦手なため耳掃除の途中で嫌がってしまうことがあると思います。嫌がっていても無理矢理耳掃除をおこなってしまうと更に嫌がり、今後耳掃除どころか触らせてくれなくなってしまうかもしれません。
特に外耳炎など耳に炎症を起こしている場合は痛みや痒みが伴い、耳を触られること自体を嫌がります。嫌がるようになった場合は一旦中断し、猫の様子が落ち着いてきたら再開しましょう。
猫の耳掃除動画
うっとり顔がたまらない お膝で耳掃除される猫
大好きな耳掃除でウットリな猫
猫の耳の中の状態で健康チェック
耳介の部分が汚れていないか
アメリカンカールやスコティッシュフォールドといった耳の構造が特徴的猫を除けば、通常猫の耳は立っているため汚れることはほとんどありません。
しかし外耳炎や耳ダニなど何らかの要因によって耳の中が汚れるようになります。耳の先の耳介部分まで汚れることが多く、特に細菌や真菌が増えやすくなる梅雨の時期や夏は定期的にチェックする必要があります。
耳垢が大量に出ていないか
健康な猫でも生理的なものとして耳垢が出ることがあり、茶色っぽく湿っています。しかし外耳炎や耳ダニなど、耳のトラブルが原因の場合は耳垢が真っ黒く、耳の中から耳介部分まで大量に出るのが特徴です。
放置してしまうと中耳炎となり奥まで炎症が広がってしまい平衡感覚を失ってしまう恐れがあります。耳ダニに関しても他の同居猫に感染するケースが多いため、早めに治療受ける必要があります。
耳の中の匂いがきつくないか
外耳炎や耳ダニの感染などでは、大量の耳垢だけではなく独特なくさい臭いや、痒みでしきりに掻いたり、頭を振る、壁や床に耳を擦りつけるなどの症状や行動がみられます。
炎症が進むと奥まで広がり中耳炎を引き起こしてしまったり、治るまで長い時間が必要になってしまうため、このような症状が見られたら必ず動物病院を受診し、原因をつきとめて正しい治療を受けることが大事です。
まとめ
耳に特徴をもつ猫種を除けば、基本的に猫の耳はピンと立っているため汚れることはほとんどなく、耳の中の皮膚もデリケートなため過度に耳掃除をすると、かえって耳の中を傷つけてしまう恐れがあります。
ですが元々の体質や年齢、生活環境などによっては汚れる場合があります。また外耳炎や耳ダニなど何らかの耳のトラブルが原因で、耳の中が汚れてしまうことがあるため、黒っぽい耳垢が大量に出ていないか、痒みで頻繁に掻いていないか、臭いがあるかなどチェックする必要があります。
原因によっては耳の中まで炎症が広がって中耳炎へと進行してしまったり、同居猫に感染する恐れがあります。
爪切りやブラッシングのように定期的なお手入れとして耳掃除をおこなうこともよいですが、猫の耳の中はL字型の構造となっているため奥まで見ることができません。自己流で耳の奥までおこなってしまうと耳の中が傷ついたり耳垢が奥まで入ってしまう恐れがあります。
そのため肉眼で見える耳介部分だけを専用のクリーナーでつけたコットンで優しく拭き取る程度にし、耳の奥の掃除は動物病院でおこないましょう。
定期的なお手入れや治療をおこなうことはとても大切ですが、自宅で耳掃除をおこなう時に何よりも大事なのは猫が嫌がらないようにしてあげることです。