猫の避妊手術の方法、当日から退院までの流れ

猫の避妊手術の方法、当日から退院までの流れ

望まない妊娠の防止や生殖器系の病気の予防、発情特有の行動の抑制のためにおこなう猫の避妊手術は、どの動物病院でも多くおこなっている手術でもあります。しかし猫の避妊手術とは言うものの病院によって手術の方法がそれぞれ異なる事をご存知でしたでしょうか?これから避妊手術を考えている飼い主さんには知ってもらいたいため、今回は猫の避妊手術にはどんな方法があるのか、また避妊手術を受ける際に注意すべき事も含めて紹介したいと思います。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫の避妊手術の方法

手術中の医師たち

猫におこなう避妊手術は通常、妊娠を防いだり生殖器系の病気の予防、発情による行動の抑制のためにする手術です。避妊手術の方法がいくつかあり、動物病院によって異なります。

猫の避妊手術の方法である「卵巣子宮摘出術」「卵巣摘出手術」「卵管結さつ手術(卵管結紮術)」「インプラント埋込手術」「腹腔内手術」の5つの方法をそれぞれ紹介したいと思います。

卵巣子宮摘出術

猫の避妊手術は子宮と卵巣どちらも摘出する「卵巣子宮摘出術」の方法があり、私が勤務している動物病院では卵巣子宮摘出術をおこなっています。この方法の避妊手術は卵巣と子宮を一緒に摘出するため、妊娠防止のほかに子宮蓄膿症や卵巣腫瘍などの生殖器系の病気を防ぐことができます。

卵巣摘出手術

卵巣と子宮両方摘出する卵巣子宮摘出術の方法とは違い、卵巣だけ摘出する「卵巣摘出手術」の方法もあります。

卵巣子宮摘出術と同様に卵巣摘出手術の方法も猫が妊娠することはなく、子宮関係の病気も防ぐことができます。卵巣子宮摘出術よりも手術時間が短く済み、傷口も小さいため比較的猫の体に大きな負担がかかりません。

しかしこの避妊方法は卵巣だけ摘出するため、手術する際に少しでも卵巣の細胞が全て取り切れておらず残ってしまった場合は、発情が起きてしまうことがあるといわれています。

卵管結さつ手術

猫の避妊手術の方法で「卵管結紮手術」があり、卵巣と子宮どちらも摘出せずに卵管部分を縫合糸で結紮する方法です。この避妊方法でも猫の妊娠を予防することができます。

しかし元々卵巣は猫の発情に関係する性ホルモンを分泌している臓器なため、卵巣を摘出しないこの避妊方法の場合は手術を受けたとしても発情がおきてしまったり、後に卵巣や子宮に関連する病気を発症する恐れがあります。

インプラント埋込手術

猫の妊娠を避ける目的でおこなう方法に「インプラント埋込手術」があります。この避妊方法は猫の発情を起きないように黄体ホルモンを分泌させるホルモン剤入りのカプセルを猫の背中の皮下に埋め込みます。

黄体ホルモンを猫の体内に放出させることで妊娠しにくい体を作りコントロールさせる方法です。この避妊方法のメリットとしては他の避妊手術よりも短時間で済み、かつ猫の皮下に埋め込んだインプラントを取れば再び妊娠させることができます。

また全身麻酔のリスクもないこともメリットとしてあげられますが黄体ホルモンの分泌させることにより、黄体期が長期間になるため子宮蓄膿症や乳腺腫瘍などの病気を発症させるリスクが高くなります。

腹腔内手術

一般的な猫の避妊手術は開腹手術と同様に猫のお腹を切開し、卵巣を切除する際に靭帯組織を引っ張っておこなうため、それに伴い痛みが発生します。しかし、腹腔内手術の方法では約5mm程の傷を2〜3ヶ所つくり摘出するため傷口が小さいだけではなく、痛みが少なく術後の抜糸もありません。

開腹して避妊手術をおこなう場合は基本猫を一泊入院させる必要がありますが、腹腔内手術の場合は日帰りでおこなえます。ですがその分、獣医の腕によっては手術時間がかかってしまったり、特殊な機器を用いるため費用が高くなるなどのデメリットもあります。

猫に避妊手術を受けさせる流れ

手術台の上で横になっている猫

手術前検査

猫の避妊手術は基本的に全身麻酔をかけますので、安全におこなうために手術をしても問題ないか事前に血液検査をする必要があります。

その際に猫が元野良猫だったり、保護団体で譲渡された猫の場合は猫エイズや猫白血病に感染していることもあるため、一緒にウイルス検査をおこなうことがあります。その他に生まれつき持病がないかレントゲン検査をおこなうことがあり、内臓の大きさや骨格に異常がないかなど確認をします。

院内感染予防にワクチン接種を済ませる

避妊手術も通常の手術と同じように猫を院内でお預かりをしておこないます。動物病院でも感染症や病気にかかっている子が来院してくるため、ワクチン接種を受けていなければ預かっている間に院内感染してしまう恐れがあります。

特に猫の場合は鼻水やクシャミ、結膜炎などの症状を起こす猫カゼに感染しやすく、原因であるウイルスによっては症状が慢性化してしまうことも少なくありません。そのため院内感染予防のためにも手術を受ける前に必ず猫にワクチン接種をおこない、免疫力をつけることが必要です。

手術前日から絶食・絶水

避妊手術は猫を全身麻酔をかけておこなうため、手術前日の夜から絶食・絶水させます。

麻酔の影響で消化管の働きが低下するため、胃に食べ物が入っている状態だと手術中に嘔吐しやすく、嘔吐物が気管に入ってしまう誤嚥性肺炎を引き起こす恐れがあるからです。

動物病院によって絶食・絶水の時間指示が異なり、必ず避妊手術の予約を入れた際に病院スタッフから説明がありますのでしっかり確認しましょう。

一般的に猫の避妊手術は健康な状態の猫に対しておこなう手術ですので、もし誤って食事を与えてしまった際は場合によっては手術を延期させ、日程を変更することがあるため必ず病院に連絡して下さい。

手術当日

  • 来院
  • 毛剃り
  • 麻酔薬などの薬の投与
  • 手術
  • 入院

避妊手術の予約を入れた時に絶食・絶水の指示の他に当日の来院時間も病院スタッフからの説明がありますので、その時間までに避妊手術当日は来院するようにして下さい。

ほとんどの動物病院では休診時間の間に避妊手術をおこないます。避妊手術の方法はいくつかありますが基本、開腹手術となりますので切開する範囲のお腹の毛を剃ることになります。

避妊手術をおこなう際に最近では、麻酔薬の投与だけではなく血圧の調節や痛みを抑制する薬を投与したり、自然に溶ける吸収糸を使用している動物病院もあります。

手術方法にもよりますが、およそ手術時間は30分程ですが麻酔時間も入れるとトータルで1時間程かかります。

猫の状態や手術方法によって異なる場合がありますが麻酔や手術に対する猫の体の負担が大きいこともあり、1日もしくは数日間入院させます。麻酔からの覚醒が悪くない場合は、猫にかかるストレスを考慮して日帰りの病院もあります。

猫の避妊手術が終わった後の注意点

首にエリザベスカラーをつけている猫

激しい運動を控え、安静に

避妊手術後、だいたい7~10日程で抜糸や傷口の確認で再診にきてもらいます。それまでの間は走り回るなどの激しい運動を避け、安静にしてあげることです。

処方された薬を指示通りに飲ませる

動物病院によっては5~7日間ぐらい抗生物質の薬を処方されることがあります。投薬量を間違えないように指示された通りに最後までしっかり服用してください。

猫の体調に問題はないか

動物病院や避妊手術の方法などによっては入院させたり、あるいは猫のストレスを考慮して日帰りで済ませる場合があります。お家に帰宅してから猫の状態に異常がないか注意してください。2日程経っても食欲がなく、ぐったりして元気がない、嘔吐や下痢などの症状が続いているなどの場合は動物病院に連絡してください。

傷口を舐めていたりいじっていないか

猫が傷口を舐めたりいじったりしないように注意する必要があります。猫は元々自分の毛を毛づくろいするグルーミングする習性があり、少しでも気になるところがあれば、ひたすら舐め続けます。

避妊手術の方法によっては抜糸が必要な場合があり、傷口をいじってしまうことで縫合糸が取れてしまい傷口が開いてしまう恐れがあります。そのため猫の首にエリザベスカラーを付けたり、術後服を着させるなど傷口をいじらないようにしましょう。

手術後も発情特有の行動が続いているか

避妊手術を受けることで発情に伴う過剰な鳴き声や性格が落ち着きますが、個体差や避妊手術を受ける時期によって異なってきます。避妊手術する前に発情を迎えた猫は、手術後もしばらくの間はソワソワして落ち着きがなかったり、過剰に鳴くなど発情特有の行動をとることがあるそうです。

ですが、そのうちに少しずつなくなってはいきますが鳴き声や行動に全く変化が変わりない場合は、猫の体内に卵巣が残っており発情起こしている可能性が考えられます。

このように避妊手術後も発情行動が見られる原因としては、避妊手術の際に卵巣やその組織が完全に取りきれていない可能性が考えられます。

去勢手術や避妊手術は1番多くおこなわれている手術でもありますので、よっぽどの事ではない限り失敗することはないですが、個体差や時期などによる一過性のことも考えられるため避妊手術後、猫の行動や様子をしっかり見てあげてください。

猫に避妊手術を受けさせる費用と適した時期

お互いの毛づくろいをする仲が良い猫

最初の発情がくる前におこなうのがベスト

猫の避妊手術をおこなう時期として多少前後することがありますが、1番好ましいのは最初の発情がくる前に避妊手術を受けることです。

一般的に猫の体の成長および性成熟が終わるのが生後約6ヶ月頃ですので、およそ生後6〜8ヶ月頃が目安といわれていますが、発情を迎える時期は個体差があり、遅くくる猫もいれば早くにきてしまう猫もいます。

いつもとは違い過剰に鳴いたり、常に落ち着きがないなど発情期を迎えてしまうと子宮が2倍以上も太くなり出血量が多くなってしまいます。場合によってはリスクを避けるため手術の日程を延期することもありますので、避妊手術受ける前に猫が発情期を迎えているかどうか注意が必要です。

避妊手術にかかる費用・助成金制度

猫の避妊手術にかかる費用は手術の方法や動物病院によって異なり、およそ平均的に30000円程かかります。

一般的な猫の去勢・避妊手術は生殖器系の病気の予防や、発情特有の行動を抑制するためにおこなう手術ですので保険対象外となり全額支払いとなります。最近では動物病院のホームページに診察料のほか、去勢・避妊手術費用などの料金表が記載されているところもありますので、どれくらい費用がかかるのか事前に確認しておきましょう。

また猫は人や犬とは違い、交尾排卵動物なため避妊手術を受けていないとほぼ100%の確率で妊娠・出産し、どんどん猫の数が増えてしまいます。

通常、猫を飼育している場合は去勢・避妊手術の費用は飼い主さんの全額負担となりますが、捨て猫や殺処分される猫を1匹でも減らすために地方自治体で猫の去勢・避妊手術費用を負担してくれる「助成金制度」が設けられている地域があります。助成金制度は自治体によって異なり、飼い主がいる猫の場合は対象にならないことがほとんどです。利用できるかどうかは自治体で確認してください。

まとめ

クッションの上の猫を見つめる女性

避妊手術は去勢手術と同様に、猫の望まない妊娠を防いだり発情に伴う行動の抑制、生殖器系の病気の予防のためにおこなう手術です。どの動物病院でもよくおこなわれる手術ですが、猫の避妊手術の方法は卵巣と子宮どちらも摘出する卵巣子宮摘出術や、卵巣だけを取る卵巣摘出手術などがあり動物病院によって手術方法が異なります。

以前と比べてホームページがある動物病院が増え、料金や診察時間、院内案内の他に手術方法についても載せているところもあり事前に確認したり病院選ぶ際にも重要点ではないでしょうか。

避妊手術はよくある手術とはいえ、避妊手術も通常の手術と同様に猫を麻酔をかけておこないます。人の手術と同じように猫も避妊手術を受ける際は絶食・絶水させる必要があり、必ず手術の予約を入れた際に病院側から説明がありますので聞き洩らしがないようにし、不明な点や疑問点は確認しましょう。

また避妊手術後は傷口の管理や元気・食欲があるかなどの体調管理などをおこなう必要がありますので、せめて手術後の再診までの間は猫の目の届く範囲にいるようにしてください。

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