猫のFIPに特効薬が?『新薬GS-441524』に期待大!

猫のFIPに特効薬が?『新薬GS-441524』に期待大!

1950年代に症例が初めて報告されて以降現在まで、不治の病とされている猫伝染性腹膜炎(FIP)。研究の潮目が変わったのはSARSやMERSといったコロナウイルス感染症に対する人間の薬の研究が進んでから。2016年頃からそれらのウイルスに対する抗ウイルス薬の研究結果が多く出るようになってきましたが、その中からFIPの治療についても確かな手ごたえのある薬があったようです!

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

猫のFIPの原因

FIPの原因ウイルスと症状

真剣な猫の顔アップ

猫伝染性腹膜炎(FIP)は、事実上不治の病として多くのブリーダーさんや、ねこの飼い主に恐れられています。

FIPは世界中に蔓延している普段はほとんど害のない猫コロナウイルスの突然変異で起こります。2歳以下の若い猫に多いとされています。症状は大まかに二つのタイプに分かれています。

それは、腎臓や腸、リンパ節などの臓器に肉芽腫病変(炎症反応によってできる細胞の塊り)をつくるドライ型タイプと、体内の空洞に液体が貯留する(多くは腹水)ウェット型タイプです。この二つの症状を移行したり、両タイプの症状が見られる場合もありますが、多くは数日から数か月のあいだに症状が重たくなり、亡くなってしまいます。

変異してFIPを起こすようになったウイルスが猫から猫へ伝染するとは考えられていませんが、複数の猫を飼育している家庭や場所では、FIPを発症した猫がいる場合には他の猫もFIPを発症する確率が高くなると考えられています。

猫のFIPこれまでの診断、治療と予防

ウィルスのイメージ

猫のFIPの診断には、コロナウィルス抗体価補助的にが使われてきました。しかしこれは突然変異株と、悪さをしない株を区別することができません。

FIPの症状、特にドライタイプでは他にも同様の症状が見られる病気があり、ウェットタイプでもこれでFIPを確定診断できるという検査や症状もなく、確定診断が難しいと言われてきたのです。

また、治療に関しても、様々な免疫調整剤が使われてきましたが、FIPを治すことの出来るものはありませんでした。予防については、アメリカやヨーロッパで発売されているワクチンがありますが、その効果には疑問が持たれており、また使える猫も限定されているようです。

監修獣医師による補足

悪さをしない猫コロナウイルスとFIPを引き起こす変異した猫コロナウイルスを区別できる検査が2015年より日本でも実施可能となっています。これにより、臨床症状と合わせてFIPがより診断しやすくなりました。

獣医師:木下明紀子

猫のFIPに新たな薬が!?

研究室で研究をする人

しかし、そのFIP治療研究の突破口ターニングポイントとなったのが人間のコロナウイルス感染症のアウトブレイクです。
その後、エボラ出血熱などのアウトブレイクも重なり、ウイルス感染症の研究に多くの研究費が付くようになりました。

抗ウイルス剤 GS-441524

注射をされているグレーの猫

そしてついに2016年、GS-441524という薬のFIPに対する効果が、ペットの最先端医療で世界に知られる、カルフォルニア大学デイビス校の研究から発表されました。

GS-441524はアメリカのギリアド社が開発したウイルスのRNA合成を阻害しウイルスの増殖を止める薬で、この研究もギリアド社からGS-441524の提供を受けて行われました。

研究は、平均13.6か月齢の、神経症状や眼症状を持たない猫について行われました。

《結果(一部抜粋)》31匹の猫のうち、重篤な4匹は(治療開始から)2-5日後にまた5匹目は26日目に死亡または安楽死された。しかし、残りの26匹は12週間の治療を完了し、さらに必要に応じて追加の治療も受けた。26匹中18匹はこの論文が公開される時期(初出はオンラインで2019年2月)まで健康を維持した。

《結果及び妥当性》
GS-441524はFIPの治療として安全かつ効果的であることが示された。最適な投薬量は最低12週間、4.0mg/kg 一日一回の皮下注射であるとわかった。
引用:Four of the 31 cats that presented with severe disease died or were euthanized within 2–5 days and a fifth cat after 26 days. The 26 remaining cats completed the planned 12 weeks or more of treatment. Eighteen of these 26 cats remain healthy at the time of publication (OnlineFirst, February 2019) (中略)
Conclusions and relevance
GS-441524 was shown to be a safe and effective treatment for FIP. The optimum dosage was found to be 4.0 mg/kg SC q24h for at least 12 weeks.
(SAGE journals First Published February 13, 2019)

このように、GS-441524は非常に良い治療成績を残したのです。

まとめ

飼い主の顔に体を擦り寄せる猫

この研究では、ドライ・ウェットのタイプに関わらず治療効果が見られました。
また、これほどの割合でこれほどの期間、完全寛解と言える状態にさせる薬は他に見つかっていません。
GS-441524はまだ一般的に手に入る状況ではありませんが、FIPが多くの人に恐れられている病気であるとすると、市場にはやく出てほしいと願わずにはいられません!

(参考)
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1098612X19825701
https://www.konekono-heya.com/news/2019/february/15.html

監修獣医師による補足

GS-441524は経口投与剤も開発され、FIPの治療のみでなく変異する前の猫コロナウイルスの根絶にも有効だとの研究が発表されているようです。しかし、コロナウイルスは複数回感染しうることを考えると予防的投与の効果が疑わしいことや、薬剤耐性ウイルスの発現の可能性を高めることなどから、研究者の多くは猫コロナウイルスの根絶とFIPの予防のためにGS-441524を使用することに反対しています。

詳しくは、英語になりますが「FIP(猫コロナウイルス感染症)新薬についての最新情報!期待の膨らむGS-5734とは?) 」

の参考記事に書かれています(カリフォルニア大学デイビス校のFIP研究についてのサイト)。

獣医師:木下明紀子

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