【獣医師監修】猫は牛肉を食べても大丈夫?与える際の注意点、栄養素やおすすめ部位まで徹底解説

【獣医師監修】猫は牛肉を食べても大丈夫?与える際の注意点、栄養素やおすすめ部位まで徹底解説

猫に牛肉を与える際の注意点を解説。生や味付けはNGです。安全な調理法(茹でる・蒸す)、1日の適量、アレルギーの注意点、脂の少ないおすすめ部位(ヒレ・モモ)まで、愛猫のために知っておきたい情報をまとめました。

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記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

猫は牛肉を食べても大丈夫?

並べられた牛肉に伸びる猫の手

牛肉は猫に与えても問題ない食材です。

猫は完全肉食動物であり、牛肉に含まれる動物性タンパク質は、猫の体を作るための重要な栄養源となります。

ただし、与え方や量、部位には細心の注意が必要です。人間と同じ感覚で与えると、猫の健康を害する危険があります。

牛肉の栄養素と猫への健康効果

赤身の牛肉の塊肉

牛肉には、猫の健康維持に役立つ優れた栄養素が豊富に含まれています。

タンパク質

タンパク質は、猫の筋肉、皮膚、被毛、内臓など、体を作るための最も重要な栄養素です。

牛肉には高品質な動物性タンパク質が豊富に含まれており、猫のしなやかな体格の維持をサポートします。

鉄分

牛肉に含まれる鉄分は「ヘム鉄」と呼ばれ、体への吸収率が非常に高いのが特徴です。

鉄分は血液中のヘモグロビン(酸素を運ぶ役割)の主成分であり、貧血の予防や体全体のエネルギー生成に役立ちます。

ビタミンB群

特にビタミンB12やB6などが含まれます。これらは、食べたものをエネルギーに変える「代謝」を助けたり、神経系の機能を正常に保ったりするために不可欠な栄養素です。

タウリン

タウリンは猫にとって非常に重要なアミノ酸の一種です。

猫は体内でタウリンをほとんど合成できないため、食事から摂取する必要があります。タウリンは、心臓の機能維持や視力の健康に不可欠です。

猫に牛肉を与える際の注意点

人間用に調理するため準備された牛肉を見つめる猫

牛肉は有益ですが、与え方を間違えると深刻な健康被害につながる可能性があります。以下の点を必ず守ってください。

生の牛肉は与えない

生の牛肉には、大腸菌やサルモネラ菌などの細菌が付着している可能性があります。

人間よりも体の小さい猫が食中毒を起こすと、重度の嘔吐や下痢を引き起こし、命に関わることもあります。特に子猫やシニア猫には絶対に与えないでください。

人間用に調理された牛肉は与えない

焼肉のタレ、すき焼きの割り下、ステーキ用のソースなど、人間用に味付けされたものは絶対に与えてはいけません。

塩分や糖分が過剰なだけでなく、猫にとって猛毒となる玉ねぎやニンニクが含まれていることが多いためです。

牛肉アレルギーに注意

猫によっては、牛肉にアレルギー反応を示す場合があります。

初めて与える際は、ごく少量(小指の先程度)にし、食後に嘔吐、下痢、皮膚のかゆみなどがないか、数日間は注意深く観察してください。

骨付きの牛肉は与えない

加熱した骨は、噛み砕いた際に鋭く割れやすくなります。

この骨の破片が、猫の口の中、喉、食道、胃腸などを傷つける可能性があるため、非常に危険です。骨は必ず取り除いてください。

少量に留める

牛肉は栄養価が高い反面、脂質も多く、高カロリーな食材です。

あくまで「おやつ」や「トッピング」として捉え、主食である総合栄養食のバランスを崩さないよう、ごく少量に留めることが重要です。与えすぎは肥満や下痢の原因になります。

猫に牛肉を食べさせる際の与え方・調理法

加熱してお皿に盛られた牛肉

猫の安全を最優先し、適切な調理法で与えてください。

火を通して与える(茹でる・蒸し焼き推奨)

食中毒のリスクを避けるため、必ず中心部までしっかりと加熱してください。

調理法としては、油を使わずに済む「茹でる」または「蒸す」のが最適です。フライパンで焼く場合は、油やバターを一切使わずに「蒸し焼き」にしてください。

脂の少ない箇所を与える

肉食動物の猫は、人間よりも脂質をエネルギー源としてうまく活用することができますが、高脂質な部位を与えると、下痢や嘔吐を引き起こしたり、長期的には「膵炎(すいえん)」という重い病気の原因になったりします。

脂身(白い部分)は極力取り除き、赤身の多い部位を選んでください。

猫に牛肉を食べさせる際の適量

食器からフードを食べている猫

牛肉は「おやつ」として考え、1日の総摂取カロリーの10%以内に収めるのが原則です。

標準的な体重4kgの成猫の場合、1日の必要カロリーは約200〜240kcalです。その10%である約20〜24kcalが、おやつの上限目安となります。

低脂質な赤身肉(モモなど)の場合、約10g〜15g程度(小さめの一口大)が目安です。高脂質な部位を与える場合は、さらに量を減らす必要があります。

牛肉を与えた日は、そのカロリー分、主食のキャットフードを減らし、1日の総カロリーが増えすぎないよう調整してください。

牛肉の部位と猫へのおすすめ度

部位の異なる牛肉が並んでいる様子

牛肉は部位によって脂質の量が大きく異なります。猫に与える場合は、脂質が少ない部位を厳選してください。

ヒレ(★★★★)

非常に柔らかい赤身肉で、脂肪が最も少ない最高級部位の一つです。猫に与えるには最適です。

モモ(★★★★)

ヒレと同様に脂肪が少ない赤身肉のおすすめ部位です。タンパク質も豊富で、猫に適しています。

ハラミ(★★★)

横隔膜の筋肉で、見た目は赤身肉に近いですが、厳密には内臓肉に分類されます。比較的脂肪が少なく、柔らかいため猫にも与えやすいです。

ただし、ヒレやモモに比べるとカロリーが高いので、食べすぎには注意が必要です。

肩ロース(★★★)

ヒレやモモに比べると「サシ」と呼ばれる脂肪が入りやすい部位です。肉質や風味が良く、柔らかい部位として知られていますが、与える場合はできるだけ脂身を取り除いてください。

バラ(★★)

いわゆる「カルビ」として使われることが多い、あばら骨周辺の肉です。脂肪が非常に多く、高カロリーです。あまりおすすめしません。

サーロイン(★)

ステーキ用の高級部位として知られますが、脂肪の「サシ」が非常に入りやすい部位です。猫にとっては脂質が過剰なため、おすすめできません。

カルビ(★)

焼肉の定番ですが、バラ肉の中でも特に脂肪が多い部分を指すことが多いです。猫には絶対に与えない方が良いでしょう。

リブロース(★)

ロースの中でも特に脂肪が入りやすく、高カロリーになりがちな部位です。猫に与えるのは避けた方が賢明です。

まとめ

食器から顔を上げて口周りを舌で舐めている猫

牛肉は、猫にとって優れたタンパク源となりますが、安全に与えるためにはルールを守る必要があります。

「加熱する」「味付けしない」「脂質の少ない部位(ヒレやモモ)を」「ごく少量だけ」という原則を守ってください。

特に人間用に調理された焼肉やステーキのおすそ分けは、猫の命に関わる危険があるため厳禁です。

与える量や部位に迷った場合や、愛猫に持病がある場合は、必ずかかりつけの獣医師に相談してください。