【獣医師監修】猫は鶏肉を食べても大丈夫?生は危険?おすすめ部位や茹で方、与える際の注意点まで徹底解説

【獣医師監修】猫は鶏肉を食べても大丈夫?生は危険?おすすめ部位や茹で方、与える際の注意点まで徹底解説

猫に鶏肉を与えても大丈夫?この記事では、獣医師が猫に鶏肉を安全に与える際の注意点(アレルギー、加熱、骨など)、ささみ等の部位ごとの特徴、正しい茹で方、適量を詳しく解説します。愛猫の健康のために正しい知識を身につけましょう。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

猫は鶏肉を食べても大丈夫?

1匹丸々の鶏肉

結論からお伝えすると、鶏肉は猫に与えても問題ない食材です。

多くのキャットフードの主原料として使われていることからも分かるように、猫の健康維持に役立つ栄養素を豊富に含んでいます。

適切に調理し、適量を与えることで、愛猫の食事の楽しみを広げ、健康をサポートすることができるでしょう。

猫に鶏肉を与える際の注意点

鶏肉をほぐす手

手軽で栄養豊富な鶏肉ですが、猫に与える際にはいくつかの重要な注意点があります。安全に与えるためのポイントを必ず守り、愛猫の健康を第一に考えましょう。

生のまま与えない

生の鶏肉には、サルモネラ菌やカンピロバクターなどの細菌が付着している可能性があります。これらの細菌は、猫に激しい嘔吐や下痢といった食中毒症状を引き起こす原因となり、非常に危険です。人間と同様に、猫にも生の鶏肉は絶対に与えないでください。

必ず火を通す

鶏肉を猫に与える際は、中心部までしっかりと火を通すことが不可欠です。加熱することで、食中毒の原因となる細菌を死滅させることができます。調理法としては、油や調味料を使わずに済む「茹でる」または「蒸す」が最も安全でおすすめです。

アレルギーに注意

鶏肉はアレルギーを引き起こしにくい食材とされていますが、個体差があります。初めて鶏肉を与える際は、ごく少量から試しましょう。食べた後に体を痒がる、皮膚が赤くなる、下痢や嘔吐をするなどの症状が見られた場合は、鶏肉アレルギーの可能性があります。すぐに与えるのをやめ、獣医師に相談してください。

味付けしない

人間用に調理された鶏肉は与えないでください。塩、こしょう、タマネギ、ニンニクなどの調味料や香辛料は、猫にとって有害です。特にタマネギは、猫に深刻な貧血を引き起こす可能性があります。猫に与える鶏肉は、必ず何も味付けせずに調理しましょう。

骨を取り除く

調理後の鶏の骨は、噛み砕くと縦に裂けて鋭く尖りやすくなります。これを猫が飲み込んでしまうと、口の中や食道、胃腸などの内臓を傷つける恐れがあり、大変危険です。与える前には、どんなに小さな骨でも完全に取り除かれていることを必ず確認してください。

鶏肉の栄養素と猫への健康効果

おやつを食べる猫

鶏肉には、完全肉食動物である猫の体を作る上で欠かせない栄養素がバランス良く含まれています。主な栄養素と、それが猫の健康にもたらす効果について解説します。

タンパク質

タンパク質は、猫の筋肉や皮膚、被毛、内臓など、体を作るための最も基本的な栄養素です。鶏肉にはこのタンパク質が非常に豊富に含まれており、しなやかで力強い筋肉の維持や、健康で艶のある被毛の育成をサポートします。

ビタミンB群

鶏肉には、エネルギー代謝を助けるビタミンB群が含まれています。ビタミンB群は、食事から摂取した栄養素を効率的にエネルギーへと変換するのを助ける働きがあります。これにより、猫が活発に活動するためのエネルギーを生み出し、健康を維持します。

タウリン

タウリンは、猫の心臓機能の維持や、視力の健康に不可欠な栄養素です。猫は体内でタウリンをほとんど合成できないため、食事から摂取する必要があります。鶏肉、特に「もも肉」にはタウリンが含まれており、これらの重要な機能の維持に貢献します。

猫に食べさせても大丈夫な鶏肉の部位

生の鶏肉

鶏肉は部位によって脂肪の量や含まれる栄養素が異なります。それぞれの特徴を理解し、愛猫の健康状態に合わせて選びましょう。

胸肉

鶏胸肉は、脂肪が少なく、タンパク質が豊富な部位です。ヘルシーなので、体重管理が必要な猫や、シニア猫にも安心して与えやすいでしょう。消化にも優しく、手作り食の入門としても適しています。

もも肉

鶏もも肉は、胸肉に比べて脂肪分が多く、ジューシーな味わいが特徴です。タウリンなどの栄養素も含まれていますが、カロリーが高めなので与えすぎには注意が必要です。与える場合は、脂肪の多い皮を取り除くとカロリーを抑えられます。

ささみ

ささみは鶏肉の部位の中で最も脂肪が少なく、高タンパクで非常にヘルシーな部位です。ダイエット中の猫や、膵炎など脂肪の摂取を控えたい猫にも適しています。食が細い猫でも、少量で効率的にタンパク質を摂取できます。

レバー

鶏レバーは、ビタミンAや鉄分が非常に豊富で、栄養価の高い部位です。皮膚や粘膜の健康維持、貧血予防に役立ちますが、ビタミンAは過剰に摂取すると中毒を引き起こすリスクがあります。与えるとしても、ごく少量(週に一度、ひとかけら程度)に留めましょう。

鶏皮(皮)

鶏皮は脂肪分が非常に多く、猫が好む風味を持っています。しかし、カロリーが非常に高いため、日常的に与えるのは避けるべきです。肥満や消化器系の負担になる可能性があるため、与えるとしても少量をおやつとしてたまに与える程度にしましょう。

猫に鶏肉を食べさせる際の与え方

茹でて割いた鶏のささみ 

愛猫に安全に鶏肉を楽しんでもらうための、具体的な与え方と調理法について解説します。

トッピングとして与える

最も手軽で安全な方法は、普段与えている総合栄養食のキャットフードに少量トッピングする方法です。茹でて細かくほぐした鶏肉を少し乗せるだけで、食欲増進につながります。あくまで主食は総合栄養食とし、鶏肉はおかずとして考えましょう。

茹でて与える

鶏肉を調理する際は、油を使わず茹でるのが一番です。茹でることで余分な脂肪を落とすことができ、ヘルシーに仕上がります。茹でた後のゆで汁は、鶏肉の旨味や栄養が溶け出しているので、冷ましてから飲み水として与えることもできます。

おすすめの調理法(茹で方)

安全で美味しい「茹で鶏」の作り方を、手順に沿って解説します。この方法なら、鶏肉が硬くなりにくく、しっとりと仕上げることができます。

手順1:鶏肉を準備する

ささみや皮を取り除いた胸肉など、与えたい部位を用意します。もし厚みがある場合は、均一に火が通るように開いて厚さをならしておくと良いでしょう。

手順2:鍋に水と鶏肉を入れる

鍋に鶏肉が完全に浸かるくらいの水を入れ、そこに鶏肉を入れます。この時、水の状態から火にかけることで、肉が柔らかく仕上がります。

手順3:加熱し、沸騰したら火を止める

鍋を中火にかけ、沸騰させます。お湯がグラグラと沸騰したら、すぐに火を止めてください。長く煮込むと肉が硬くなる原因になります。

手順4:余熱で火を通す

火を止めたら、鍋の蓋をしてそのまま冷めるまで待ちます。余熱でゆっくりと中心まで火を通すことで、パサつかず、しっとりとした食感に仕上がります。粗熱が取れたら完成です。

猫に鶏肉を食べさせる際の適量

鶏肉を食べる猫

鶏肉はあくまでおやつやトッピングとして与えるものと考え、一日の摂取カロリーの10%程度に留めるのが理想です。

例えば、体重4kgの成猫(避妊・去勢済み)の一日に必要なカロリーの目安は、約200〜240kcalです。その10%は20〜24kcalとなります。茹でた鶏ささみや皮なしの胸肉は、10gあたり約12〜13kcalなので、一日に与える量は15g〜20g程度が上限の目安となります。これは、指でほぐしたささみであれば、大さじ1杯強くらいの量です。

愛猫の体重や活動量、他に与えるおやつの量などを考慮して調整してください。

まとめ

いろいろな部位の鶏肉

鶏肉は、正しく調理し適量を与えるならば、猫にとって非常に有益な食材です。「加熱する」「味付けしない」「骨は取り除く」といった基本的なルールを守り、アレルギーに注意しながら、愛猫との食生活を豊かにするための一つの選択肢として上手に取り入れていきましょう。もし与える量や方法に不安がある場合は、かかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。