猫はささみを食べても大丈夫?

ささみは猫に与えても問題ない食材です。
高タンパクかつ低脂質であり、猫にとって優れた栄養源となります。ただし、与え方には注意が必要です。
ささみは、あくまで「総合栄養食」のキャットフードを補うトッピングやおやつとしての位置づけです。ささみだけでは猫に必要な全ての栄養素を賄うことはできないため、主食の代わりにはなりません。
ささみの栄養素と猫への健康効果

ささみには、猫の健康維持に役立つ優れた栄養素が豊富に含まれています。ここでは主な栄養素と、それが猫にどのような良い影響を与えるかを解説します。
タンパク質
ささみは、高品質な動物性タンパク質の塊です。猫は「真性肉食動物」と呼ばれ、人間や犬よりも多くのタンパク質を必要とします。
タンパク質は、猫の筋肉、皮膚、被毛、爪、そして内臓など、体を作るための最も重要な材料です。良質なタンパク質を摂取することは、しなやかな筋肉と健康な体を維持するために不可欠です。
ビタミン類(ビタミンB群)
ささみには、やビタミンB群(B2、B6、ナイアシンなど)が含まれています。
ビタミンB群は、エネルギー代謝を助ける重要な役割を担います。タンパク質や脂質からエネルギーを作り出す過程をサポートし、猫の活発な活動を支えます。
ナイアシン
ナイアシンはビタミンB群の一種で、特にささみに比較的多く含まれています。皮膚や粘膜の健康維持を助けるほか、エネルギー生成の過程で「補酵素」として機能します。
補酵素とは、体内の化学反応(代謝)をスムーズに進めるために必要な潤滑油のようなものです。ナイアシンが不足すると、皮膚炎や口内炎、食欲不振などを引き起こす可能性があります。
猫にささみを与える際の注意点

ささみは有益な食材ですが、与え方を間違えると猫の健康を害する可能性があります。以下の点に必ず注意してください。
生肉は与えない
猫に生のささみを与えるのは絶対に避けてください。生の鶏肉には、サルモネラ菌やカンピロバクターなどの細菌が付着している可能性があり、これらは猫に深刻な食中毒(嘔吐や下痢)を引き起こします。
人間よりも体が小さい猫にとって、食中毒は重症化しやすい危険な状態です。ささみは必ず中心部まで十分に加熱してから与えてください。
リンの過剰摂取に注意
ささみを含む肉類には、「リン」というミネラルが含まれています。リンは骨や歯を作るために不可欠な栄養素ですが、過剰に摂取すると腎臓に負担をかける可能性があります。
特に、すでに腎臓の機能が低下している猫や、シニア猫(高齢猫)に与える場合は注意が必要です。おやつとして少量与える程度なら問題ありませんが、主食のように大量に与え続けるのは避けましょう。
アレルギーに注意
鶏肉は、猫にとって食物アレルギーの原因(アレルゲン)となる可能性があります。アレルゲンとは、アレルギー反応を引き起こす物質のことです。
初めてささみを与える際は、まずごく少量(小さくちぎった一片程度)から始めましょう。
与えた後、数時間から数日にわたり、嘔吐、下痢、皮膚のかゆみ(特に顔や耳を頻繁にかく)などの症状が出ないか注意深く観察してください。
人間用の加工食品は与えない
人間用に加工されたささみ製品(サラダチキン、燻製、缶詰、ジャーキーなど)は、猫に与えてはいけません。
これらの食品には、猫にとって過剰な塩分、香辛料、保存料、調味料(玉ねぎエキスなど)が含まれていることが多く、猫の内臓に大きな負担をかけたり、中毒を引き起こしたりする危険性があります。
猫にささみを食べさせる際の与え方・調理法

猫にささみを与える際は、必ず加熱し、味付けは一切しないでください。ここでは、安全で簡単な調理法をご紹介します。
茹でる
最もシンプルで安全な調理法です。
手順1:下ごしらえ
ささみにある白い筋は、硬くて消化しにくいため、可能であれば取り除いておくとより親切です。
手順2:茹でる
鍋にささみと、ささみが浸かるくらいの水(またはお湯)を入れます。沸騰したら弱火にし、中までしっかり火が通るまで数分間茹でます。
手順3:冷ましてほぐす
茹で上がったら火を止め、人肌程度に冷まします。熱いまま与えると猫が火傷をしてしまいます。冷めたら、猫が食べやすいように細かく手でほぐすか、小さくカットして与えます。
ジャーキーにする
おやつとして少しずつ与えたい場合や、歯ごたえを楽しませたい場合は、自宅で無添加のジャーキーを作る方法もあります。
手順1:薄く伸ばすかスライスする
ささみの筋を取り、綿棒やコップの底面などで叩いてできるだけ薄く伸ばすか、スライスします。
手順2:加熱・乾燥
耐熱皿にクッキングシートを敷き、伸ばした(スライスした)ささみを重ならないように並べます。
150℃~160℃にした電子レンジのオーブンで30分焼き、その後はささみの硬さを見ながら加熱します。カリカリになるまで水分を飛ばしてください。
手順3:冷ます
加熱後は非常に熱くなっているので、完全に冷ましてから与えます。手作りジャーキーは湿気やすいため、密閉容器に入れて早めに使い切りましょう。
補足:ゆで汁は与えて大丈夫?
ささみを茹でた後の「ゆで汁」は、猫に与えても問題ありません。ゆで汁には、ささみの旨味や水溶性の栄養素が溶け出しています。
冷ましたゆで汁をそのまま与えたり、ドライフードに少量かけたりすることで、猫の水分補給に役立ちます。ただし、アクは取り除き、必ず冷ましてから与えてください。
腎臓病などでミネラル制限がある猫の場合は、獣医師に相談してからにしましょう。
猫にささみを食べさせる際の適量

ささみをおやつやトッピングとして与える場合、その量は1日に必要な総摂取カロリーの10%以内(多くても20%未満)に抑えるのが理想です。
ささみ1本(約45g)のカロリーは、約47kcalです。
例えば、体重4kgの標準的な体型の成猫(スコティッシュ・フォールドやアメリカン・ショートヘアなど)が必要とする1日のカロリーは、約200〜240kcalとされています。
この場合、10%(約20〜24kcal)がおやつの目安となります。これは、ささみ約半本分(1/2本分)に相当します。
ただし、これはあくまで目安です。愛猫の体型、年齢、活動量、他に与えるおやつの量などを考慮して調整してください。
まとめ

ささみは、高タンパク・低脂質で猫にとって魅力的な食材です。しかし、与える際には「必ず加熱する」「味付けはしない」「アレルギーに注意する」といったルールを守る必要があります。
また、ささみは「総合栄養食」の代わりにはなりません。主食は栄養バランスの取れたキャットフードを与え、ささみはあくまで特別なご褒美やおやつとして、適量を守って与えるようにしましょう。
正しい知識を持って、愛猫との食生活を豊かにしてください。