【獣医師監修】猫はレバーを食べても大丈夫?効果や与える時の注意点を解説

【獣医師監修】猫はレバーを食べても大丈夫?効果や与える時の注意点を解説

猫にレバーを与えても大丈夫?貧血予防に役立つ栄養や、ビタミンA過剰症を防ぐための正しい与え方・適量を解説。生食の危険性や加熱のポイント、食欲がない時におすすめの手作りレバーペーストのレシピも紹介します。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

猫はレバーを食べても大丈夫?

空の食器の前に座って上を見上げる猫

レバーは猫に与えても問題ない食材です。

野生の猫が獲物の内臓を好んで食べていた歴史からもわかるように、本来は猫の体に適した優れた栄養源と言えます。

貧血気味の時や、なんとなく元気がない時の栄養補給として非常に有効であり、家庭で暮らす猫たちの健康維持にも役立つ食材です。

ただし、与える場合は少量に留めて下さい。栄養価が高い反面、過剰に摂取すると体調を崩す原因にもなります。あくまで「特別な日のトッピング」として扱うことが重要です。

レバーの栄養素と猫への健康効果

お皿に並べられた牛レバー

レバーは「自然のマルチビタミン」とも呼ばれるほど、猫の健康維持に必要な栄養素が凝縮された食材です。

具体的な栄養成分と、それが愛猫の体にどのような良い影響を与えるのかを解説します。

ビタミンA

レバーに含まれる代表的な栄養素がビタミンAです。猫にとってビタミンAは、皮膚や粘膜の健康を保ち、免疫力を維持するために欠かせません。

また、網膜の働きを助け、暗い場所での視力を確保する重要な役割も担っています。猫は体内で植物由来の成分をビタミンAに変換できないため、動物性食材から摂取する必要があります。

鉄分

レバーには吸収率の良いヘム鉄が豊富に含まれています。鉄分は赤血球を作るために必要な成分であり、全身に酸素を運ぶ役割を果たします。

貧血の予防や改善といった効果が期待できる可能性があるため、手術後の回復期のケアとしても注目されています。

タンパク質

体を作る元となる良質な動物性タンパク質が含まれています。筋肉や被毛、ホルモンなどを生成するために、猫にとって最も優先度の高い栄養素です。

植物性のタンパク質などに比べると、レバーのタンパク質は消化に優れているため、胃腸への負担を抑えながら効率よく栄養を取り込むことができます。

ビタミンB群

代謝を助けるビタミンB2や、神経機能を守るビタミンB12、葉酸などがバランスよく含まれています。これらは疲労回復や、健康的な皮膚・被毛の維持に役立ちます。

特に毛並みの美しさが特徴的なアメリカンショートヘアなどの猫種にとって、嬉しい栄養素と言えるでしょう。

猫にレバーを与える際の注意点

悲し気な表情で床に伏せている猫

栄養豊富なレバーですが、扱い方や与える量を間違えると、深刻な健康被害を引き起こすリスクも潜んでいます。

愛猫の健康を守るために、必ず守っていただきたい注意点を詳しく解説します。

ビタミンA過剰症に注意

レバーを与える上で最も警戒すべきなのが「ビタミンA過剰症」です。ビタミンAは体外に排出されにくく、過剰に摂取すると体内に蓄積されてしまいます。

蓄積が進むと骨が変形し、背骨や関節に激しい痛みを伴う症状が現れることがあります。首を動かせなくなったり、歩き方がおかしくなったりするため、継続的な大量摂取は絶対に避けてください。

アレルギーに注意

他の肉類と同様に、レバーも食物アレルギーの原因となる可能性があります。食べた後に体を痒がったり、下痢や嘔吐をしたりする場合はアレルギーの疑いがあります。

初めて与える時はごく少量にし、食後数時間は愛猫の様子に変化がないか観察するようにしましょう。

生のレバーは与えない

新鮮なものであっても、生のレバーを猫に与えるのは非常に危険です。サルモネラ菌やカンピロバクター、トキソプラズマなどの病原体に感染するリスクが高いからです。

これらの食中毒は重篤な下痢や嘔吐を引き起こし、場合によっては命に関わります。また、人間に感染する恐れもあるため、衛生管理には十分な注意が必要です。

必ず火を通して与える

食中毒のリスクを回避するために、必ず中心部まで加熱してください。表面の色が変わる程度では、内部の菌が死滅していない可能性があります。

茹でる、蒸すなどの加熱調理を行い、中まで完全に火が通ったことを確認してから与えましょう。加熱することで香りが立ち、猫の食欲を刺激する効果もあります。

人間用に調理されたレバーは与えない

焼き鳥やレバニラ炒めなど、人間用に味付けされたレバーは与えないでください。塩分や香辛料が猫の内臓に負担をかけるほか、タマネギやニラなどのネギ類は中毒症状を引き起こします。

タレやソースを洗い流しても成分は残っているため、必ず味付けをしていない猫専用のものを用意してください。

子猫や老猫に与えるのは避ける

消化機能が未熟な子猫や、機能が低下している老猫には、レバーは負担が大きすぎることがあります。栄養バランスが崩れやすく、ビタミンA過剰症の影響も受けやすいデリケートな時期です。

特に持病がある猫の場合は、リンやタンパク質の制限が必要なこともあるため、自己判断で与えず獣医師に相談してください。

猫にレバーを食べさせる際の与え方

スプーンにのせられたレバーペースト

安全に、そして美味しくレバーを食べてもらうためには、選び方と調理法にコツがあります。

ここでは、ビタミンAの含有量を考慮した部位の選び方や、猫が喜ぶ調理のポイントをご紹介します。

猫におすすめのレバーの種類

スーパーなどで手に入るレバーには主に鶏、豚、牛がありますが、それぞれビタミンAの含有量が異なります。特に鶏と豚のレバーはビタミンAが非常に多いため、注意が必要です。

猫に与えるのであれば、比較的ビタミンAが少ない牛レバーがおすすめです。どのレバーでも過剰症には注意が必要ですが、少しでもリスクを抑えるために、食材選びの段階から牛を選ぶようにしましょう。

猫に与えるレバーの調理法

加熱したレバーを刻んで与える方法もありますが、独特の食感を苦手とする猫も少なくありません。そこでおすすめしたいのが「レバーペースト」にする方法です。

ペースト状にすることで消化が良くなり、ドライフードに絡めやすくなります。食欲不振の時でも、ペーストの強い香りが猫の興味を惹きつけ、食いつきを改善する助けになります。

レバーペーストの作り方

自宅で簡単に作れる、添加物不使用の安全なレバーペーストのレシピをご紹介します。

1. レバーの下処理を行う

牛レバーを一口大にカットし、冷水で何度か洗って血抜きをします。臭みを抑えたい場合は、調理前に牛乳に浸しておき、その後よく洗い流すと食べやすくなります。

2. しっかりと加熱する

鍋にお湯を沸かし、レバーを入れて中心まで完全に火が通るまで茹でます。この際、塩などの調味料は一切使用しないでください。

3. ペースト状に潰す

茹で上がったレバーをすり鉢やフードプロセッサーに入れ、滑らかになるまで潰します。茹で汁を少しずつ加えて硬さを調整してください。人肌程度まで冷ませば完成です。

猫にレバーを食べさせる際の適量

食器からフードを食べている猫

猫に与えても良いレバーの量は、週に1回程度、5g~10g(小さじ1~2杯分)が目安です。

これはビタミンAの過剰摂取を防ぎつつ、栄養補給のメリットを得られる安全な範囲です。カロリーは10gあたり約13kcalと低めですが、主食の栄養バランスを崩さないためにも、この量を守ってください。

毎日ではなく、週末のスペシャルメニューとして与えるのが理想的な頻度です。

まとめ

食器から顔を上げて鼻先を舌で舐めている猫

レバーは猫にとって魅力的な栄養源ですが、ビタミンA過剰症などのリスクも伴う「諸刃の剣」です。

「牛レバーを選ぶ」「完全に加熱する」「週1回・少量」というルールを徹底することが大切です。

正しい知識と調理法で与えれば、愛猫の健康をサポートする頼もしい食材となります。ぜひ手作りのレバーペーストで、愛猫に美味しく健康的な食事の時間をプレゼントしてあげてください。