猫はさんま(秋刀魚)を食べても大丈夫?

さんまは猫に与えても問題ない食材です。
ただし、それは「適切な下処理と加熱を施し、適量を与える」場合に限られます。さんまは栄養価が高い一方で、猫にとってリスクとなる側面も持つため、与え方には細心の注意が必要です。
さんま(秋刀魚)の栄養素と猫への健康効果

さんまには、猫の健康維持に役立つ優れた栄養素が豊富に含まれています。特に注目すべきは、DHAやEPAといった不飽和脂肪酸です。
DHA(ドコサヘキサエン酸)
DHAはオメガ3脂肪酸の一種で、特に脳や神経系の発達、機能維持に重要な役割を果たします。シニア猫の認知機能のサポートや、成長期の子猫の脳の発達に良い影響が期待できます。
EPA(エイコサペンタエン酸)
EPAもDHAと同じオメガ3脂肪酸です。主な働きは、体内の炎症を抑える「抗炎症作用」です。関節炎の痛みの緩和や、皮膚・被毛の健康維持に役立つとされています。
たんぱく質
さんまは良質なたんぱく質の供給源です。たんぱく質は、猫の筋肉、皮膚、被毛、爪など、体を作る基本的な材料であり、生命維持に不可欠な栄養素です。
ビタミン類(ビタミンD、B群)
さんまにはカルシウムの吸収を助けるビタミンDや、エネルギー代謝をサポートするビタミンB群(特にB12)も含まれています。これらは猫の全体的な健康を支えるために役立ちます。
猫にさんま(秋刀魚)を与える際の注意点

さんまは栄養豊富な反面、猫に与える際にはいくつかの重大なリスクが伴います。飼い主が必ず把握しておくべき注意点を解説します。
アレルギーに注意
猫によっては、さんまを含む特定の魚に食物アレルギー反応を示すことがあります。
初めて与える場合は、ごく少量(ティースプーン半分程度)から始め、食後に皮膚のかゆみ、下痢、嘔吐などがないか、数日間は注意深く観察してください。
ヒスタミン中毒に注意
さんまのような青魚は、常温で放置されると「ヒスタミン」という物質が急速に生成されます。
ヒスタミンは熱に強いため、加熱しても分解されず、摂取すると嘔吐や下痢などの中毒症状を引き起こすことがあります。必ず新鮮なさんまを選び、すぐに冷蔵・冷凍保存してください。
寄生虫・アニサキスに注意
さんまの内臓や筋肉には、「アニサキス」という寄生虫が潜んでいる可能性が非常に高いです。アニサキスは猫の胃腸に深刻なダメージを与え、激しい腹痛や嘔吐を引き起こします。
アニサキスは加熱(70℃以上)または冷凍(-20℃で24時間以上)で死滅します。
黄色脂肪症(おうしょくしぼうしょう)に注意
黄色脂肪症(イエローファット)は、さんまやアジ、サバなどの青魚に多く含まれる不飽和脂肪酸の過剰摂取によって引き起こされる病気です。
この病気は、体内のビタミンEが不足し、皮下脂肪が酸化して炎症を起こすものです。猫がお腹を触られるのを嫌がったり、しこりができて痛みが現れたりします。
「総合栄養食」と記載のあるキャットフードを主食にしていて、さんまはごくたまにおやつとして与える程度であればほとんど問題ありませんが、適量以上の食べすぎ・与えすぎは避けるようにしましょう。
猫にさんま(秋刀魚)を食べさせる際の与え方・調理法

猫にさんまを安全に与えるためには、人間の調理法とは異なる、猫専用の下処理が不可欠です。
小骨は取り除く
猫は魚の骨を上手に消化できません。特にさんまの小骨は硬く鋭いため、喉や消化器官に刺さる危険があります。
加熱後に身をほぐし、指で触って確認しながら、全ての骨を徹底的に取り除いてください。
味付けはしない
人間用の塩、醤油、タレなどは一切使用しないでください。
猫は人間と比べて塩分の必要量が少なく、過剰な塩分摂取は腎臓や心臓に大きな負担をかけます。素材そのものの味で十分です。
刺し身は与えない
さんまを生(刺し身)で与えるのは絶対にやめてください。
前述の通り、アニサキスなどの寄生虫による健康被害のリスクが極めて高いためです。必ず中心部までしっかりと加熱する必要があります。
内臓は取って与える
内臓はアニサキスが最も多く潜んでいる部位であるため、調理の段階で必ず取り除いてください。
また、内臓はリンの含有量も多いため、特に腎臓に配慮が必要な猫には与えるべきではありません。
少量に留める
さんまは高カロリーであり、主食(総合栄養食)の代わりにはなりません。
あくまで「おやつ」または「トッピング」として、主食の栄養バランスを崩さない程度の少量に留めることが重要です。
塩焼きはNG
人間用に調理した塩焼きのおすそ分けは厳禁です。
塩焼きは猫にとって塩分過多となります。また、加熱が不十分だと、表面が焼けていても中心部まで熱が通っていない可能性があります。
猫用のさんまは塩を振っていないものを別に用意し、蒸し焼きにする・煮てスープごと与えるなどの調理法を用いて、中心までしっかりと加熱してください。
猫にさんま(秋刀魚)を食べさせる際の適量

さんまは高脂質・高カロリーな食材です。与えすぎは肥満や黄色脂肪症の原因となります。
猫に与える「おやつ」や「トッピング」の量は、1日の総摂取カロリーの10%以内が目安です。体重4kgの成猫(避妊・去勢済み)の場合、1日の必要カロリーは約200〜240kcal程度です。
さんま(生)の可食部100gあたりのカロリーは約290kcalと高めです。
したがって、体重4kgの猫に与える場合の適量は、1日あたり7~8g程度(1日の総カロリーの10%未満)が上限の目安となります。
これは、加熱したさんまのほぐし身で、ティースプーン1〜2杯程度に相当します。
まとめ

さんまは、適切に調理すれば猫に与えても良い食材です。DHAやEPAといった健康に良い栄養素を含んでいます。
しかし、アニサキスやヒスタミン中毒、黄色脂肪症といったリスクも伴います。
猫に与える際は、必ず「加熱」し、「骨と内臓を抜き」、「味付けをせず」、1日の摂取カロリーの10%以内の「少量」に留めてください。特に人間用の塩焼きのおすそ分けは絶対に避けましょう。