猫にイカを与えても大丈夫?「腰を抜かす」は本当?生が危険な理由や症状について

猫にイカを与えても大丈夫?「腰を抜かす」は本当?生が危険な理由や症状について

猫にイカを与えても大丈夫?生のイカは「チアミナーゼ」がビタミンB1欠乏症を引き起こすため絶対にNGです。「腰を抜かす」という噂の真相も解説。安全な加熱法、与える際の適量、イカの栄養素について知りたい飼い主さんは必見です。

猫はイカを食べても大丈夫?

生のイカ

結論から言うと、猫に「生のイカ」をあげるのは絶対にやめてください。猫の健康に深刻な影響を及ぼす危険な成分が含まれています。

もし、どうしてもイカを与えたい場合は、必ず加熱調理が必要です。加熱したものを、おやつとしてごく少量与える程度であれば問題ありませんが、与え方には細心の注意が求められます。

「生のイカ」が危険な理由・食べた場合の症状

イカ刺し

生のイカが猫にとってどれほど危険なのか、その理由と食べてしまった場合に起こりうる症状について詳しく解説します。飼い主さんが正しい知識を持つことが、愛猫の健康を守る第一歩です。

チアミナーゼが含まれている

生のイカには、「チアミナーゼ」という酵素が含まれています。このチアミナーゼは、生のイカ以外にも淡水魚や貝類に含まれており、ビタミンB1を分解してしまう働きを持っています。

ビタミンB1は、猫の神経機能や脳の働きを正常に保つために不可欠な、非常に重要な栄養素です。チアミナーゼを摂取すると、体内のビタミンB1が分解され、欠乏状態に陥ってしまいます。

ビタミンB1欠乏症を引き起こす

生のイカを食べることでチアミナーゼを摂取し続けると、猫は「ビタミンB1欠乏症」という病気を発症する可能性があり、数日から数週間で症状が進行することがあります。

ビタミンB1欠乏症になると、食欲不振や嘔吐といった初期症状から始まり、重症化すると、足元がふらつく、うまく歩けなくなるなどの神経症状が現れます。さらに進行すると、けいれん発作などを起こし、命に関わることもある非常に怖い病気です。

イカに含まれる栄養素と猫への健康効果

イカを食べる猫

危険な側面がある一方で、適切に加熱調理されたイカには、猫の健康に役立つ栄養素も含まれています。ここでは、イカに含まれる主な栄養成分とその効果について解説します。

タウリン

イカには「タウリン」が豊富に含まれています。タウリンはアミノ酸の一種で、猫にとっては体内で合成できない「必須アミノ酸」です。

タウリンは、心臓の筋肉の正常な働きを助けたり、目の網膜の健康を維持したりするなど、猫の生命維持に欠かせない役割を担っています。総合栄養食のキャットフードにも必ず添加されている重要な成分です。

タンパク質

イカは高タンパクで低脂質な食材です。タンパク質は、猫の筋肉や内臓、皮膚や被毛など、体を作るための基本となる栄養素です。

完全肉食動物である猫にとって、動物性タンパク質は非常に重要であり、健康な体づくりをサポートします。

DHA・EPA

イカには、魚ほど豊富ではないですが、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった「オメガ3脂肪酸」も含まれています。

これらの栄養素は、脳の健康を維持する効果や、皮膚や被毛を健やかに保つ効果が期待されています。また、関節の炎症を抑える働きもあるとされ、シニア猫の健康維持にも役立ちます。

猫にイカを与える場合の与え方と調理法

加熱しているイカ

猫にイカを与える際は、必ず安全な与え方と調理法を守る必要があります。愛猫の健康を損なわないために、以下のルールを徹底してください。

必ずよく加熱する

生のイカに含まれる危険な成分「チアミナーゼ」は、熱に弱い性質を持っています。そのため、与える前には必ず中心部まで十分に加熱してください。

調理法としては、茹でるか蒸すのが最適です。焼くと身が硬くなりエビやカニ同様に消化しにくくなるため、避けた方が良いでしょう。塩や醤油などの調味料は絶対に使用せず、味付けは一切しないでください。

少量ずつ与える

イカは、猫にとって消化しやすい食べ物ではありません。たくさん与えると消化不良を起こし、嘔吐や下痢の原因になる可能性があります。

与える際は、総合栄養食であるキャットフードの邪魔にならないよう、おやつやトッピングとしてごく少量に留めましょう。初めて与える場合は、アレルギーの可能性も考慮し、指先ほどの量から試すようにしてください。

加熱したイカを与える場合の量の目安

ボイルされているイカ

加熱したイカは、あくまで「おやつ」や「ご褒美」として与えるものだと考えましょう。おやつの量は、1日に必要な総摂取カロリーの10%以内が理想とされています。

例えば、体重4kgで避妊・去勢手術済みのアメリカンショートヘアのような成猫の場合、1日の摂取カロリーの目安は約200kcalです。その場合、おやつとして与えて良いのは20kcalまでとなります。

加熱したイカのカロリーは100gあたり約80kcalなので、20kcal分だと約25gになりますが、これは多すぎます。消化への負担も考慮し、細かく刻んだものをティースプーン1杯程度、または指先に乗るひとかけら程度に留めるのが安全な量です。毎日与えるのではなく、特別な日のお楽しみにしましょう。

猫が「イカを食べると腰を抜かす」と言われる由来

本と虫眼鏡

昔から「猫がイカを食べると腰を抜かす」という言い伝えがありますが、これは単なる迷信ではありません。この言葉は、生のイカを食べた猫に起こる症状を的確に表現しています。

前述の通り、生のイカに含まれるチアミナーゼは、ビタミンB1欠乏症を引き起こします。その症状として、神経系に異常をきたし、歩行困難や麻痺が起こることがあります。この状態が、あたかも「腰を抜かした」ように見えたことから、このような言い伝えが生まれたと考えられています。

まとめ

新鮮なイカ

猫にとって、生のイカはビタミンB1欠乏症を引き起こす大変危険な食べ物です。刺身はもちろん、スルメや塩辛などの加工品も絶対に与えないでください。

加熱したイカであれば、タウリンやタンパク質などの有益な栄養素を摂取できますが、消化しにくい食材であるため、与え方には注意が必要です。必ず十分に加熱し、味付けはせず、ごく少量をおやつとして与える程度にしましょう。

愛猫の健康を守る基本は、栄養バランスの取れた総合栄養食です。イカを与える際は、あくまで食事の楽しみを少し増やすためのトッピング程度と考え、安全なルールを必ず守ってください。