猫に鮭を与えても大丈夫?主な栄養素と健康効果、正しい与え方から注意点まで解説

猫に鮭を与えても大丈夫?主な栄養素と健康効果、正しい与え方から注意点まで解説

猫に鮭を与えても大丈夫?この記事では、鮭の栄養素や猫への健康効果から、安全な与え方、適量、アレルギーや塩分などの注意点まで詳しく解説します。加熱や骨の処理など、愛猫に与える前に飼い主が知っておくべきポイントが全てわかります。

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記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

猫は鮭を食べても大丈夫?

鮭の切り身のそばで座っている猫

結論からお伝えすると、鮭は猫に与えても問題ない食材です。

鮭には良質なたんぱく質や健康維持に役立つ栄養素を豊富に含んでおり、適切に与えることで猫の健康をサポートする効果が期待できます。

ただし、与え方にはいくつかの重要な注意点があります。例えば人間用の味付けがされたものや、生の鮭をそのまま与えることは猫の健康を損なう危険性があります。正しい知識を持って安全な方法で与えることが大切です。

鮭に含まれる栄養素と猫への健康効果

お皿にのせられた3切れの鮭の切り身

鮭には、猫の体にとって有益な栄養素がたくさん含まれています。ここでは、鮭に含まれる主な栄養素と、それが猫の健康にどのような良い効果をもたらすのかを解説します。

アスタキサンチン

アスタキサンチンは、鮭の身の美しいピンク色のもとになっている天然の色素成分です。これは非常に強力な抗酸化作用を持つことで知られています。

抗酸化作用とは、体内の細胞を傷つけ老化や病気の原因となる活性酸素の働きを抑える力のことです。猫の健康維持や免疫力のサポートに役立つと考えられています。

オメガ3脂肪酸(DHA・EPA)

鮭には、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といったオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。これらは体内で作ることができない必須脂肪酸の一種です。

オメガ3脂肪酸は、健康な皮膚や美しい被毛を維持する働きや、関節の健康をサポートする効果が期待されます。特にシニア期の猫の健康維持にも役立つ栄養素です。

たんぱく質

猫は肉食動物であり、健康な体を作るためには動物性のたんぱく質が不可欠です。たんぱく質は、筋肉や内臓、皮膚、被毛など、体のあらゆる部分を構成する重要な栄養素です。

鮭は消化吸収の良い良質なたんぱく質を豊富に含んでおり、猫にとって優れたたんぱく源となります。手作り食の材料や、いつものフードへのトッピングとしても活用できます。

ビタミン類

鮭には、カルシウムの吸収を助けて骨や歯の健康を維持するビタミンDや、エネルギーの代謝をサポートするビタミンB群などが含まれています。

これらのビタミン類は、猫が健康に活動するための体の機能を正常に保つ上で欠かせない栄養素です。ただし、特定の栄養素の過剰摂取は健康を害する可能性もあるため、バランスが重要です。

猫への鮭の与え方・調理法

鮭の切り身をグリルで焼いている様子

愛猫に安全に鮭を与えるためには、適切な調理法と与え方を守ることが非常に重要です。ここでは、具体的な方法を一つずつ解説します。

必ず加熱して与える

生の鮭には、アニサキスなどの寄生虫や食中毒の原因となる細菌が付着している可能性があります。これらは猫の健康に深刻な害を及ぼすため、必ず加熱処理をしてください。

調理法としては、油や調味料を使わずに「茹でる」または「焼く」のが最も安全です。加熱することで、寄生虫や細菌を死滅させることができます。

細かくカットして与える

猫が大きな塊のまま飲み込むと、喉に詰まらせてしまう危険性があります。特に、マンチカンやシンガプーラのような体の小さな猫種や、子猫、シニア猫には注意が必要です。

加熱した鮭の身は、手で細かくほぐしたり、フォークの背で潰したりして、猫が食べやすい大きさに調整してから与えるようにしましょう。

骨を取り除く

鮭の骨は硬く、喉や食道、胃腸などの消化器官を傷つけてしまう恐れがあります。非常に危険なため、与える前に必ず全ての骨を丁寧に取り除いてください。

身をほぐしながら、指で触って骨が残っていないかを注意深く確認する作業が不可欠です。小さな骨も見逃さないように、細心の注意を払いましょう。

味付けはしない

人間用に味付けされたものは、猫にとって塩分や糖分、香辛料が過剰です。特に塩分は、猫の腎臓や心臓に大きな負担をかけてしまいます。

調理する際は、塩やこしょう、醤油、バターなどは一切使わず、素材そのものの味を活かしてください。水だけで茹でるか、何も加えずに焼くのが基本です。

猫に鮭を与える場合の量の目安

食器からフードを食べている猫

鮭を猫に与える場合は、あくまで「おやつ」や「トッピング」として、主食のキャットフードの邪魔にならない量にとどめることが大切です。

一般的に、おやつやトッピングの量は1日に必要な総摂取カロリーの10%以内が目安とされています。体重4kgの標準的な体型の成猫の場合、1日に必要な最低カロリーは約200kcalなので、その10%である20kcalが上限となります。

鮭(しろさけ・生)のカロリーは100gあたり約124kcalなので、20kcalに相当するのは約15gです。これは、おおよそ大さじ1杯程度の量になります。与えすぎは栄養バランスの乱れや肥満の原因となるため、必ず適量を守りましょう。

猫に鮭を与える際の注意点

飼い主と一緒に獣医師の診察を受ける猫

鮭は有益な食材ですが、与え方を間違えると健康リスクにつながる可能性があります。ここでは、特に注意すべき点を解説します。

アニサキスに注意

アニサキスは、主に魚介類に寄生する線虫の一種です。生の鮭に潜んでいる可能性があり、猫が摂取すると激しい腹痛や嘔吐などの症状を引き起こすアニサキス症になる危険があります。

このアニサキスは、マイナス20℃以下の環境で24時間以上冷凍するか、中心部までしっかりと加熱することで死滅させることができます。愛猫の健康を守るためにも、鮭を与える際は必ず加熱調理を徹底してください。

アレルギーに注意

猫によっては、魚に対して食物アレルギーを持っている場合があります。鮭もアレルゲンとなる可能性があるため、初めて与える際は特に注意が必要です。

鮭を食べた後に、体をかゆがる、皮膚が赤くなる、下痢や嘔吐をするといった症状が見られた場合は、アレルギーの可能性があります。すぐに与えるのを中止し、動物病院で獣医師に相談してください。

塩分のとりすぎに注意

人間用に加工された鮭製品は、猫に与えてはいけません。例えば、塩鮭、スモークサーモン、鮭フレーク、鮭とばなどは、猫にとって過剰な塩分が含まれています。

猫が塩分を過剰に摂取すると、腎臓や心臓に重い負担がかかり、深刻な病気の引き金になる可能性があります。猫に与えるのは、必ず味付けをしていない「生鮭」を調理したものだけにしましょう。

ビタミンB1欠乏症に注意

生の魚介類には「チアミナーゼ」という酵素が含まれていることがあります。この酵素は、体内でエネルギー代謝に重要な役割を果たすビタミンB1を分解してしまう働きがあります。

生の鮭を継続的に大量に摂取すると、ビタミンB1欠乏症に陥り、食欲不振やふらつき、重篤な場合は神経症状を引き起こす危険性があります。チアミナーゼは加熱によって働きを失うため、この点からも加熱は非常に重要です。

まとめ

食器の前に座って舌で鼻先を舐めている猫

鮭は、良質なたんぱく質やオメガ3脂肪酸など、猫の健康に良い栄養素を含む食材です。正しく調理すれば、愛猫の食事の楽しみを広げる素晴らしい一品になります。

ただし、与える際は「必ず加熱する」「骨を完全に取り除く」「味付けはしない」「適量を守る」という基本ルールを徹底することが最も重要です。塩鮭やスモークサーモンなどの加工品は決して与えないでください。

これらの注意点を守り、安全に美味しく鮭を食事に取り入れてあげましょう。

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