猫の白血病が発症した時の余命や症状、原因について

猫の白血病が発症した時の余命や症状、原因について

猫白血病ウイルス感染症とは猫白血病ウイルスに感染することで発症する病気です。リンパ腫など血液の腫瘍を発症したり、貧血や白血球の減少により免疫力が下がるため様々な症状を起こします。この猫白血病ウイルス感染症は残念ながら完治する治療法がないため、発症するとその多くの猫が命を落としてしまう恐い病気でもあります。感染した場合、発症してからどれくらいの期間生存できるのでしょうか?主に見られる症状や感染ルートも含めてまとめてみました。

SupervisorImage

記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫の白血病が発症したらいつまで生きられる?

窓際にいる猫

猫の白血病が発症した時の寿命
  • 持続感染した猫は2〜3年以内
  • 死亡率は3年半で83%
  • 子猫が発症した場合の死亡率はほぼ100%

治療法がない感染症である猫白血病ウイルス感染症は、治療法がないため一度でも発症すると完治することができない感染症でもあります。猫白血病ウイルス感染症は体を守ってくれる白血球や赤血球などをつくる骨髄に感染し、悪影響をあたえるため様々な症状を発症するようになります。

猫が白血病でも発症しない場合もある

猫白血病ウイルス感染症に感染しても健康であれば、元々猫が持っている免疫機能により原因である猫白血病ウイルスを排除することができ、発症しないこともあります。

また発症しても初期症状(急性期)が比較的軽症で済み、その後の潜伏期間から発症しない場合もあり、実際に10年以上も生存した例もあるそうです。

猫白血病の発症率と死亡率

しかしウイルスを排除できずに持続感染した猫の多くは2〜3年以内に発症し命を落としています。死亡率は感染後2年で63%、3年半で83%という報告データがあります。

特に体力もない生まれたばかりの子猫は、ほぼ100%の確率で発症し命を落とします。1〜6才頃と猫の年齢が若いほど発症率が高く、平均的におよそ3才前後の猫が発症しやすい傾向があります。

猫の白血病が発症した時の症状

横たわる猫

猫の白血病の初期段階で見られる急性期
  • 発熱
  • 元気喪失
  • 食欲不振
  • 全身のリンパ節の腫れ
  • 鼻水、くしゃみ
  • 口内炎
  • 下痢
  • 血が止まりにくい
  • 貧血
  • 体重の減少

原因である猫白血病ウイルスは口や鼻などから侵入し、リンパ組織から血液にのり体中に運ばれます。そして最終的に白血球や赤血球をつくる骨髄にまで感染が広がり細胞内で増殖をします。猫の免疫がウイルスにより増殖してしまった骨髄の細胞に対し攻撃するため様々な症状が現れてきます。

感染してから2〜6週間後ぐらいから発症し、発熱や元気喪失、食欲不振、全身のリンパ節が腫れてきます。他にも鼻水やクシャミ、口内炎など風邪と似た症状を起こしたり、下痢などの消化器症状も見られることがあります。

また白血球や赤血球をつくる骨髄に感染するため白血球や血小板の減少が見られ血が止まりにくかったり、貧血などの症状も起こし1週間〜数ヶ月間症状が続きます。

免疫力の低下に伴い、症状や病気が治りにくくなるため下痢や口内炎が続いたり、貧血で歯茎が白い、元気や食欲もなく体重が減少します。

年齢が若い猫ほど発症しやすく、急性期に命を落としてしまう可能性も高いといわれています。

猫の白血病の持続感染期

#写真の説明#

その後症状が一旦治ったように見え、状態が回復しそのまま症状を発症しないまま一生を過ごす猫もいますが、完全に治らなかった猫はウイルスが体内に潜伏し続けます。これを、持続感染といいます。

急性期後、一旦症状が落ち着きますが、これは免疫が猫白血病ウイルスによって感染した細胞を攻撃しなくなったからです。そのため、あたかも治ったかのように見えますが実際には猫白血病ウイルスが猫の体内に潜伏しています。

そのため急性期に見られる症状が比較的軽症だったり無症状に近い場合は一過性で終わりますが、重度の場合は持続感染になりやすい傾向があります。

潜伏期間

およそ1〜2年間潜伏期間に入るといわれており、その間は至って健康な状態になりますが、再びウイルスが活性化し発症します。持続感染したほとんどの猫は猫白血病ウイルスに感染してからおよそ3年以内に発症してしまい、その多くが命を落としています。

猫の白血病の持続感染期に多い症状

ウイルスが骨髄に感染し侵された場合は白血球の過剰な増加や減少、また赤血球も著しい減少がおき、白血球減少症や再生不良貧血などを発症し免疫力が下がります。

免疫不全、免疫異常による感染症

免疫力の低下により免疫不全や免疫異常がおこり猫ヘモバルトネラ症や猫伝染性腹膜炎、トキソプラズマ症、クリプトコッカス症などに感染したり、慢性口内炎や皮膚炎、鼻炎などの症状を発症する場合があります。

臓器の炎症

また細菌やウイルスなどに対して抵抗力がなくなるため、肝臓や腎臓などの臓器に炎症を起こしやすくなり糸球体腎炎を発症することがあります。その場合、腎臓機能低下により多飲多尿や食欲不振、体重減少などの症状が現れることがあります。

ウイルスは骨髄だけではなく体中にある細胞も感染し、その細胞を癌化させてしまったり殺滅してしまいます。そのためリンパ腫や骨髄性白血病、骨髄異形成症候群などの造血器腫瘍を発症します。

流産や死産

猫白血病ウイルスがメス猫に感染した場合、高い確率で流産や死産となり生まれたとしても早い時期に亡くなってしまうケースがほとんどです。

猫の白血病が発症する原因

野良猫たち

喧嘩による咬傷や接触感染

猫白血病ウイルスは感染力が弱いため同じ空間にいたり、すれ違うことで感染しませんが唾液や血液、涙、尿などにウイルスが存在します。特に唾液にウイルスが大量に存在するため、猫白血病ウイルスに感染している猫との舐め合いによるグルーミングや食器の共通などによって感染します。

特に感染猫との喧嘩による傷口から高い確率で感染し発症します。そのため喧嘩しやすい傾向がある去勢していないオス猫が発症率が高いのです。また尿や便といった排泄物にもウイルスが存在するため感染猫とのトイレの共有も感染するリスクが高いです。

胎盤や母乳を通して感染する母子感染

母猫が猫白血病ウイルスに感染していた場合、胎盤や母乳を介して子猫に感染します。しかし多くが流産や死産となったり、生まれたとしても早期に命を落とすケースが多いです。

また出産後、母猫が子猫を舐めることでも感染する場合がありますので母猫が猫白血病ウイルスに感染している限りは子猫は感染してしまいます。

まとめ

膝の上でくつろぐ猫

猫白血病ウイルス感染症は体を守る大事な働きをもつ白血球や赤血球をつくり出す骨髄に感染し様々な症状を発症していきます。最初の段階で現れる急性期では発熱や元気喪失、リンパ節の腫れなどが起こり数週間〜数ヶ月間続きます。

その後一旦症状が治り、そのまま発症せず一生過ごす猫もいますが約1〜2年の潜伏期間を得て再びウイルスが活性化し発症することもあります。骨髄に感染し侵されてしまうため白血球減少症や再生不良性貧血を起こしたり、リンパ腫などの血液の腫瘍も発症することがあります。

また免疫不全や免疫異常により、猫ヘモバルトネラ症や猫伝染性腹膜炎など様々な病気を発症してしまい最終的に命を落としてしまいます。

急性期の症状が比較的軽く、免疫によりウイルスを排除した場合や潜伏期間から発症しない場合は寿命が長くなりますが、一方で持続感染した猫のほとんどが感染してから約3年以内に発症し予後が悪く多くが命を落としています。

原因である猫白血病ウイルスは感染力は弱いですが唾液や血液、尿や便といった排泄物などにウイルスが含まれているため、感染猫とのグルーミングや食器・トイレの共有、交尾などで感染します。

特に唾液に多くウイルスが存在するため、発症している猫の多くが喧嘩による咬傷によって感染しています。

また母猫が猫白血病ウイルスに感染している場合は胎盤や母乳を通して子猫に感染します。多くが流産や死産となりますが、無事生まれたとしても早くに亡くなってしまうことがほとんどです。

猫白血病ウイルス感染症を完治する治療法がないため、感染しないように予防するしかありません。そのため確実に感染させないためには、感染猫との接触をしないことです。完全室内飼いにしたり、ワクチンの接種も効果があります。

もし多頭飼いでその中に猫白血病ウイルス感染症に感染している猫がいる場合は、他の猫にうつる恐れがあるため部屋を隔離させたり、食器やトイレも別々にしましょう。

また野良猫を拾ってきたり、保護団体で譲渡された猫は猫白血病ウイルス感染症に感染している可能性があるため、感染していないかどうかウイルス検査することを勧めます。

スポンサーリンク