猫を中絶させることはできる?
答えは「できる」です。
猫の妊娠期間は65日前後であり、医師による妊娠の確定診断は交尾から20日以降からとされています。猫の妊娠のメカニズムは人とは異なり、交尾によって排卵が誘発されるため、人でいう月経のようなものもなく、妊娠に気づく要素が少ないため、妊娠に気づいた頃には既に、妊娠後期であるということも少なくありません。
人の場合、人工中絶手術が可能な時期が定められていますが、猫の場合は分娩するまでは手術が可能とされています。しかし、獣医師によっては期間を定めている場合もありますので、事前に相談しておく必要があります。
猫を中絶させる方法
①薬
猫の妊娠が早期に発覚した場合、薬による中絶が可能とされています。ただ、お腹の中の子猫が大きくなっている場合は使用できず、副作用などが生じる可能性もあります。
また、薬による中絶ではまたすぐに妊娠することができるため、妊娠を望まないのであれば避妊手術が勧められることが多いようです。
②手術
猫を中絶させる方法として最も多く用いられるのが、外科手術で子猫が入ったままの子宮と卵巣を摘出するという方法です。
基本的な手術の内容としては避妊手術と同じですが、妊娠後期になり、お腹の中の子猫が大きくなればなるほど、傷口は大きくなり、出血量も増加するため母体への負担は非常に大きくなります。
猫の場合、分娩するまでは中絶が可能とされているものの、そのリスクは決して少ないものではありません。輸血が必要になることはもちろん、手術が長時間に及ぶこともあります。
猫を中絶させる方法は、お腹の中の子猫の大きさや母体の状態などによって異なります。中絶のための手術は、避妊手術と似たものだとお話しましたが、妊娠後期になれば母体への負担も大きくなり、やはり避妊手術と同等のリスクという訳にはいきません。事前に獣医師からしっかりと説明を受けましょう。
猫を中絶させるときの費用
①検査費用
- 超音波検査 2,000円~5,000円程度
- レントゲン検査 1,500円~3,500円程度
まず、猫の妊娠を診断するための検査費用が必要になります。猫の妊娠の診断は、獣医師による触診や心音確認、超音波検査(エコー)、レントゲン検査などが行われます。
動物病院によって料金は異なりますが、超音波検査は2,000円~5,000円程度、レントゲン検査は1,500円~3,500円程度であることが多いようです。
②手術費用
- 避妊手術費用 20,000円~30,000円前後
- 中絶手術 5,000円~10,000円程度
- 輸血 5,000円~20,000円程
- 血液検査費用 10,000円前後
猫を中絶させるときの手術費用は、避妊手術費用+中絶費用となることが多いようです。猫の避妊手術の費用も動物病院によって異なりますが、多くは20,000円~30,000円前後であることが多く、麻酔の料金などが含まれていることが多いです。他に術前の血液検査代金が必要です。
この避妊手術の料金を基本として、中絶手術に5,000円~10,000円程度の追加料金が必要になります。
また、妊娠後期の中絶手術などで輸血が必要になった場合は、別途の費用が必要になる場合もあります。動物医療において、人のような献血システムは存在しません。
そのため、ドナーから提供された血液は非常に貴重なものであり、5,000円~20,000円程度の費用が必要になる場合もあります。
③入院費用
- 入院費用 5,000円~20,000円程度
- 診察料や術後の抗生物質投与費用 3,000円~6,000円程度
猫に中絶手術を受けさせる場合、入院が必要になることが多いようです。入院費用も動物病院によって異なりますが、5,000円~20,000円程度であることが多いようです。この追加料金についても、お腹の中の子猫1匹に対して料金が追加される場合と、頭数に関係なく、一律の追加料金が定められている場合があります。
上記の他にも、診察料や術後の抗生物質投与などの費用が必要になります。
妊娠していない状態での避妊手術に必要な費用+30,000円~60,000円程度準備しておく必要がありそうですね。
猫を中絶させた後のケア
①安静に
猫に中絶手術を受けさせた後は、猫が少しでも安心して体を休めることができるよう心がけましょう。猫の中絶手術は、妊娠後期になればなるほど、母体に大きな負担が掛かります。
妊娠をしていない避妊手術でさえも、全身麻酔を用いた開腹手術ということもあり、術後は安静に過ごすことを勧められます。
特に、中絶手術中に出血多量など何らかのトラブルが生じた場合は、自宅へ帰った後もしばらく家族の誰かがそばに居て、様子を見守ることができる環境を作るのが理想です。
トイレや食事、水分摂取がいつも通り行えているかをしっかりチェックしながら過ごし、何か少しでも異変を感じた場合は、かかりつけ医を受診しましょう。
②猫が傷口を舐めないよう注意する
猫に中絶手術を受けさせた場合、妊娠していない状態での避妊手術時よりも、傷口が大きくなります。猫が自分で舐めることによって傷口が開いたり、炎症を起こしたりする可能性もありますので、術後服やエリザベスカラーなどを使用して、猫が傷口を舐めないよう注意しましょう。
③猫のメンタルケアをする
猫によっては、中絶後に大きなストレスを感じる場合があります。猫の体も妊娠することによって、子猫を育てる準備を始めます。母乳を出すために乳房が膨らみ、妊娠50日を過ぎれば胎動も感じます。
人と妊娠期間に比べれば、たった2か月という短い期間かもしれませんが、それでも命がけでお腹に宿る命を守ってきたのです。
それをある日突然奪われたとなると、精神的に不安定になるのもごく自然なことです。飼い主さんに異様に甘えたり、何かを探すような素振りを見せたりしたら、しっかり抱きしめて寄り添ってあげましょう。
④胎児の供養をする
猫を中絶させた後は、胎児の供養を執り行いましょう。動物病院によっては、提携している寺院やペット霊園などで供養してもらうことも可能です。その場合は、手術費用と別途供養代が必要になります。
また、胎児の亡骸は依頼者の手に返すという病院も少なくありません。手術前に胎児に関して動物病院と話し合っておきましょう。中には、動物病院まで霊園が来てくださり供養していただける場合もあります。市の環境局に引き取ってもらうことも可能ではありますが、可能な限り、ペット霊園の合同墓や寺院に依頼するなどの方法で供養してあげてください。
猫を中絶させる前に考えること
①中絶のリスク
猫を中絶させるためには、様々なリスクが伴うことは重ね重ねお話しましたが、最悪の場合、命に関わることもあります。
妊娠している猫の健康状態や、中絶手術を受けることのリスクをしっかりと確認しておく必要があります。ただ、中絶だけではなく出産にもリスクは付きものです。
猫も人と同じように陣痛が始まり、長い時間をかけて命を産み落とします。難産や死産の可能性もありますし、母体にも負担が掛かります。
特に健康状態の悪い保護猫が妊娠していたケースなどでは、出産のリスクが格段に高くなる場合も。妊娠猫にとって最も安全で負担が少ない方法を、獣医師としっかり相談しましょう。
②産むという選択もある
猫が妊娠した場合、中絶するという選択肢もあれば、「産む」という選択ももちろんあります。しかし、猫は多胎動物であり、一度の出産で2匹~6匹の子猫を産みます。
生まれてくるすべての命に責任が持てるかどうかが、重要な課題になってきますよね。
ただ、お腹の中の子猫が何匹なのかは事前の検査で調べることが可能です。前もって知人やボランティアさんなどに引き取ってもらうことができないか、里親制度を利用して引き取り手を探すことはできないかも考えてみましょう。
保護猫がすでに妊娠していたという場合であれば、動物病院が里親探しを手伝ってくれたり、提携しているボランティア団体を紹介してくれたりすることもあります。
もちろん、離乳までは母猫と一緒に暮らす必要があるため、生まれてすぐに他人任せにすることはできません。ワクチンやその他に必要な検査費用なども必要になります。
ただ、すべての子猫を引き取ることができないからといって、必ずしも中絶という選択一択という訳ではありませんので、まずはかかりつけの動物病院や、ボランティア団体に相談してみましょう。
③望まない妊娠を繰り返さないために避妊手術をする
猫を中絶、又は出産させることを決断した後は、望まない妊娠を二度と繰り返さないためにできることを考えましょう。
まず、第一に避妊手術をすることで、妊娠を避けることは可能です。完全室内飼いだから妊娠の心配はないと避妊手術を行わずにいたところ、脱走やオス猫の侵入で妊娠したというケースも少なくありません。
猫は交尾によって排卵が誘発される「交尾排卵動物」であり、交尾をするとほぼ確実に妊娠が成立します。まさか短時間の脱走で妊娠するわけがないという甘い考えは捨て、避妊手術を受けましょう。
まとめ
いかがでしたか?正直なところ、猫に中絶させることが正しいことなのか、正しくないことなのかは状況によって大きく異なるのではないかと思います。
完全室内飼いではなかった、避妊手術をしていなかったなど、飼い主さんが防ぐことができる妊娠であったのならば、猫に中絶させることはとても身勝手な話ではあります。ただ、引き取り手もないのに産ませてあげることが正しいとも言えませんよね。
猫の中絶、出産には多大なリスクが伴うことをしっかり頭に置き、避妊手術や生活環境についてしっかりと考えていきたいですね。