動物病院で起きた事故
猫は好奇心旺盛な生き物です。私達が気がつかないような所に隠れていたり、高いところに登ったり、興奮したりパニックになると予想外な行動をします。その為安全なはずの家の中でも予期せぬ事故にあってしまいます。
私が動物看護師として働いてきて、病院で起こった事故についてお話します。
ヒモ状のおもちゃ
2歳の若い猫ちゃんが数日前から嘔吐していて元気がなく、全くご飯も食べないとの事で来院されました。お腹を触ると痛がります。エコーをとると何かが腸に詰まり、胃腸も全く動いていませんでした。エコーからは何かヒモ状の異物ではないかと考えられました。飼い主さんに確認すると、少し前にヒモ状のおもちゃで遊んでいたそうです。
その日の夜緊急手術となりました。開腹するとやはりヒモ状のおもちゃでした。細いヒモの先に小さな鳥のぬいぐるみがついてあり、遊んでいるうちに誤って飲み込んでしまったと考えられます。
ヒモ状の異物はとても危険です。腸にヒモが引っかかり引っ張られる事で腸が切れてしまう事もあるからです。その子は処置も早かった事もあり助かりましたが、腸はかなり痛んでいました。
猫はヒモで遊ぶのが大好きです。ジャレて遊んでいる姿は可愛くて癒されますが、稀に飲み込んでしまう事があるので遊ぶ時は注意して下さい。
7階から落ちた猫
夜間救急で働いていた時に猫の落下事故はよくありました。2階ぐらいならちょっとした怪我で済むことが多かったですが、それ以上になると骨折や縫合が必要な大怪我になります。打ち所が悪ければ、来られた時にはもう亡くなってしまっている事もありました。
7階から落ちたと電話を受けた時、正直難しい状況を覚悟しました。ですが来られた時には意識もはっきりしていましたが、前足2本は変な所で曲がっていたので骨折しているのは確実でした。落ちた所が花壇で下が柔らかかった事と、落ちた時前足をついて頭や内臓には影響が出なかった為、たまたま命は助かりましたが、両前足骨折という痛い思いをしました。
普段は部屋から出ることはなかったそうです。たまたま飼い主さんが玄関を開けた時に大きな音がしてビックリしてそのまま玄関を出て7階から落ちてしまったと飼い主さんから聞きました。興奮やパニックになると、予想外の行動に出る事があります。
マンションでずっと暮らしている猫ちゃんは、高い所に住んでいる意識はあまりありません。普段出ないから大丈夫と思っても「もしかしたら」と考え、落下事故が起きないよう注意しましょう。
ドアに挟まったしっぽ
以前夜間救急で勤めていた時、子猫のしっぽをドアで挟んでしまったと電話がありました。来院されしっぽをみてみると、しっぽの先の皮膚が剥がれてしまい筋肉が剥き出しになっていました。すぐに縫合しましたが、しっぽには神経が多く痛みも強い所です。縫合後痛み止めを打っても痛みが強いのかずっと鳴いていました。しっぽにテーピングをして数日通ってもらいましたが完治するのに1ヶ月以上かかりました。
いつも飼い主さんの後ろをついてまわるので気をつけていたそうですが、ドアを閉めた時にドアの蝶番部分に挟まれてしまったそうです。切断せずに済みましたが、ひどい場合は切断しなくてはいけなくなります。人について回る甘えん坊な猫ちゃんは特に注意してあげて下さい。
洗濯された猫
猫は狭い所や隠れる所が好きな生き物です。この子は最初から洗濯機の中にいたのか、洗濯物の中に隠れていたのかは解りませんが猫は入ったまま洗濯機を回してしまった飼い主さんがいました。すぐに気がついて止めたそうですが、来院した時は恐怖と寒さで震えていました。
すぐに止めたので怪我をしておらず、ドラム式で水が少なく溺れなかったので低体温になったぐらいで済みましたが本当に危ないところでした。無事だったのが奇跡です。
確かに猫はいろんな所に隠れて寝ている事はよくあります。でもまさか洗濯機の中や洗濯物の中にいるとは考えつかないと思います。でも実際起きた事故です。
まとめ
私が動物病院で働いていて実際に経験した事故です。そんな事起こるなんてと思われるかもしれませんが、ヒモ状の異物・落下事故・しっぽを挟んでしまう事故は年に数件は起こります。洗濯機の事故は稀なケースかもしれませんが実際に起った事故です。
もしこの記事を読んで少し気をつけてもらえると嬉しく思います。猫にとって1番安全なはずのお家で起こる事故は、私達飼い主が気をつけてあげれば防げるはずです。