猫の肉球の秘密1ぷにぷにの正体は?
デリケートな場所であまり触られたくない猫さんも多い肉球ですが、人間である私たちはついつい触りたくなりますよね。
あのぷにぷにとした感触は一度触ると癖になってしまいます。でもそもそもあのぷにぷにの正体は何なのでしょうか。肉球は脂肪と弾性繊維でできています。よってあのぷにぷにとした触り心地なのです。
猫の肉球の秘密2.肉球の名称
肉球の正式名称は蹠球(しょきゅう)といいます。さらに肉球には細かく部位によりそれぞれ名称が別れています。
- 指球(しきゅう):人間でいう指の部分。
- 掌球(しょうきゅう):人間でいうてのひら。
- 手根球(しゅこんきゅう):人間に例えると手首に近い場所に位置する肉球。被毛とは別の毛が2~3本生えており触覚の役割を果たす。
- 狼爪(ろうそう):人間でいう親指。
- 足底球(そくていきゅう):後ろ脚の中央にある大きな肉球。
- 趾球(しきゅう):後ろ脚の各指にある小さな肉球。
ちなみに肉球の数は前脚の指が10本、後ろ脚のの指が8本です。
猫の肉球の秘密3.肉球の役割
肉球はただぷにぷにとした脂肪ではありません。実に様々な役割を果たし、猫が生活していくうえで欠かせない大切な存在です。これから紹介する肉球の役割を知ると、猫が触られることを拒む理由も自ずと理解できるかもしれません。
音を消す
猫が狩りの達人なのは優れた聴覚や跳躍力だけではありません。肉球にもその秘密が隠されています。肉球には音を消す役割があります。そのため音を立てず、獲物にそっと近づきチャンスが来たら一気に襲撃することができるのです。
滑り止め
猫は木登りが得意です。滑ることなく登ることが出来るのは肉球が滑り止めの役割を果たしているからです。ちなみに優れた滑り止めをもってしても、猫は木から降りることは苦手です。颯爽と木に登る姿とは裏腹に、木からなかなか降りられずに立ち往生している姿は少し残念な気もしますね。また、狩りの際も肉球の滑り止めが一役買っています。この機能のおかげで獲物に飛びかかることができるのです。
クッション
猫種によって差はありますが、猫は木登りと同様に高いところに登ることも得意とし、そしてよく好みます。猫が高所から降りる際、足裏を負傷せずにいられるのは肉球のおかげです。肉球には衝撃を吸収するクッションの役割があり、着地の際の衝撃に耐えることができるのです。
グルーミング
猫は肉球を人間の手のひらのように活用し、顔を洗う(グルーミングをする)ことがあります。
マーキング
猫は自分のテリトリーや、お気に入りの場所や物に自分のにおいを付着させる習性があります。肉球には臭腺があり、歩く度に目には見えない足跡を残しているのです。
汗をかく
猫は人間とは異なり、身体に汗腺がありません。つまり身体から汗をかくことができないのです。よって体温調節は身体を舐めて濡らし、その水分を蒸発させる気化熱を利用しています。
しかし、猫にも唯一汗腺が存在する部位があります。それが肉球です。肉球だけは気化熱を利用することなく汗をかくことが可能です。
余談ですが、人間は緊張すると手汗をかきますよね。実はにも似たようなことが起こるようです。例えば車での移動が苦手な猫は乗車中、緊張を伴い手汗ならぬ肉球汗をかいています。
猫の肉球の秘密4.犬と猫の肉球の違い
犬も猫のような形状の肉球を持つ動物です。しかし、犬と猫の肉球には明らかな違いがあります。
肉球のかたち
犬の肉球は、人間でいうてのひらの部分にあたる掌球が大きく、指にあたる指球のほうがやや小さめになっています。猫の肉球はその逆で、掌球よりも指球のほうがやや大きめの印象を受けます。肉球をモチーフにしたグッズを見てみると、「これは犬っぽい」もしくは「猫っぽい」とそれぞれイメージできるかと思います。
肉球の質感
犬と猫、それぞれの肉球の違いはかたちだけではありません。質感にも大きな違いがあります。
まず犬の肉球は、分厚くてカサカサした触り心地です。これには先祖のオオカミの影響があると考えられています。オオカミは雪の積もった滑りやすい環境にも適応できるように、より滑り止めの役割が大きい肉球を持っていました。
やがてそれが犬にも引き継がれていったとされています。よって猫のような、ぷにぷにとした柔らかい触り心地ではありません。ちなみに犬も子犬の頃は柔らかい肉球です。やがて成長し、外を歩くことで分厚くなっていきます。
次に猫の肉球ですが、こちらは先に述べたように人間が思わず触りたくなるような質感です。これには先祖にあたるリビアヤマネコが生活していた環境による影響が考えられます。
リビアヤマネコはオオカミとは正反対で、砂漠のような気候の中で生活してきました。よって滑り止めの役割はオオカミほど発達しませんでした。むしろ獲物に静かに忍び寄る手段として、柔らかくぷにぷにとした質感へと発達していったと考えられます。
このように比較すると、犬と猫の肉球が見た目以外にも大きな違いがあることが分かりますね。先祖も含め、それぞれの環境に適応できるように肉球が発達し、必要とする役割りも全く違うのです。
猫の肉球の秘密5.肉球の色
猫の肉球の色は、猫の被毛の色と関係があるとされています。白系の猫はピンク、黒系の猫は黒や黒に近い茶色など、模様のある猫は肉球の色もまだらになる場合が多いとされています。
猫の肉球を守るために気をつけたいこと
猫にとって肉球はとても重要な役割を持つ存在です。猫が安全に生活していくために、飼い主さんとしていくつか気をつけてほしいことがあります。それは以下のようなケアです。
長毛種の肉球
長毛種の肉球は柔らかな毛で覆われています。ノルウェージャンフォレストキャットやメインクーンのように厳しい寒さから守る必要のある環境下では必要不可欠な存在です。
しかし、家庭内で生活する長毛種にとっては思わぬ怪我のもとになることがあります。とくにフローリングがメインの家庭では足裏に毛があることで滑りやすく、怪我をしたり脚に負担をかけてしまいます。よって定期的に足裏の毛を剃ることをおすすめします。
冬場の乾燥対策
猫は基本的に身の回りの手入れは自分で行います。これをセルフグルーミングといいます。肉球も基本的にはセルフグルーミングで十分です。
ただし、冬場は人間の手のように乾燥しやすく、ひび割れてしまうことがあります。肉球の乾燥が気になる場合はケアを手伝ってあげましょう。ここで重要なのは必ず猫専用のクリームを使うということです。ペットショップをはじめネットでも購入することができます。
人間用のハンドクリームは、アロマの成分が含まれていることがあるため猫には危険です。猫の肝臓は人間の肝臓と異なり、アロマに使われている成分を解毒することができません。よって人間用では猫にとって害になってしまうのです。
肉球も病気になることがある
実は肉球にも病気があります。それは猫の肉球皮膚炎、別名を形質細胞性足皮膚炎(けいしつさいぼうせいあしひふえん)といいます。この病気になると「猫の肉球に炎症が起こり、むくんだり潰瘍を起こした状態」になります。
原因不明とされていますが、何かしらのアレルゲンに対する免疫反応の一種ではないかといわれています。治療法は原因が不明であるがゆえに対処療法で、症状を軽減させる治療を行います。
具体的には副腎皮質ホルモンを用いた治療となります。肉球が潰瘍を形成している場合は外科手術が必要になるケースもあります。肉球に異変があると感じたら、一度獣医さんに相談しましょう。
まとめ
今回は猫の肉球の秘密について紹介させていただきました。普段何気なく触れ、その触り心地に癒される猫の肉球には様々な役割があることが分かりました。
そして猫の肉球は改めてその秘密に迫ると意外と奥深く、興味深いことが明らかになりました。これを機に猫の肉球をいつもとは異なる視点で観察し、猫との生活がより楽しくなるきっかけになっていただけると嬉しいです。