猫が頭を押し付ける『ヘッドプレッシング』とは?見逃してはいけない危険なサイン4つ

猫が頭を押し付ける『ヘッドプレッシング』とは?見逃してはいけない危険なサイン4つ

猫が壁や家具に頭を押し付けてじっとしている――。一見、甘えているようにも見えるこの行動、実は「ヘッドプレッシング」と呼ばれ、脳や神経に異常があるときに見られる危険なサインの可能性があります。放っておくと命に関わることもあるため、早めの気づきがとても大切です。この記事では、猫が頭を押し付けるときに考えられる原因や、すぐに受診すべきサイン、飼い主が取るべき対応を解説します。

SupervisorImage

記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

猫が頭を押し付ける「ヘッドプレッシング」とは?

うつむく猫

猫が壁や床、家具などに頭をぐっと押し付けて動かない。この行動は「ヘッドプレッシング(Head Pressing)」と呼ばれます。眠る前の“すり寄り”や“甘え”とは異なり、壁に頭を当てたままじっとしていたり、同じ姿勢を長時間続けるのが特徴です。

この行動は、神経系(脳、脊髄、末梢神経)の異常が起きているサインとして知られています。脳炎や脳腫瘍、肝臓疾患などで脳に毒素が溜まった場合にも現れることがあり、放置すると命に関わる危険があります。もし愛猫がヘッドプレッシングのような動きを見せたら、すぐに動画で様子を記録し、動物病院へ相談することが大切です。

ヘッドプレッシングで考えられる危険なサイン4つ

ぼんやりする猫

ヘッドプレッシングのような行動が見られるとき、以下のような症状を伴っている場合は特に危険度が高い状態です。すぐに動物病院を受診しましょう。

1.呼びかけへの反応が鈍い・目がうつろ

飼い主が名前を呼んでも反応せず、ぼんやりしていたり、焦点が合っていないような目つきをしている場合は要注意です。

脳に炎症や出血、あるいは中毒などで意識レベルが低下している可能性があります。寝ているだけとは違い、「まばたきが遅い」「目線が合わない」「動きがぎこちない」などが特徴です。

2.壁や一点をじっと見つめたまま動かない

壁や家具の角など、同じ方向を見つめて長時間動かない場合は、脳内で情報処理が乱れているサインかもしれません。

空間認識や視覚情報をうまく整理できず、「どこを見ているのか」「どう動けばいいのか」が分からなくなっている状態です。部屋の隅でうずくまる行動も、混乱や恐怖から起こることがあります。

3.同じ場所を行き来する・ふらつく

同じところを何度も往復する、壁にぶつかる、まっすぐ歩けないなどは、神経系や前庭(バランスを取る器官)の異常による行動です。脳炎や脳腫瘍、または高血圧による血管障害が原因の場合もあります。

ふらつきや転倒が見られるときは、動物病院に連絡し「歩き方の動画」を見せると診察がスムーズです。

4.神経症状や全身症状

けいれん・よだれ・瞳孔の左右差・極端な元気低下や食欲低下といった症状は、明確な神経症状または全身疾患の進行サインです。

けいれん発作や瞳孔の左右差は、脳の圧迫や損傷を示している可能性が高く、放置すると意識障害や呼吸不全に至るケースもあります。「よだれ」「吐き気」「極端な無気力」は、肝性脳症や中毒による脳の異常反応でも見られます。

まとめ

窓を見つめる猫

猫が頭を壁や床に押し付ける「ヘッドプレッシング」は、一見おだやかに見えても、体の中では深刻な異常が起きていることがあります。脳炎や脳腫瘍、肝臓や腎臓の不調など、命に関わる病気が隠れているケースも少なくありません。

いつもと違う様子でじっとしていたり、呼びかけに反応しないなどの行動が見られたら、「疲れているだけかも」と自己判断せず、できるだけ早く動物病院へ。

愛猫の小さな異変に気づけるのは、日々そばにいる飼い主さんだけです。早い段階で気づき、行動することが、愛猫の命を守るいちばんの鍵になります。

スポンサーリンク