猫語を正しく理解するために必要なこと

2021年に、スウェーデン・ルンド大学のシュルツ博士が行った「猫の鳴き声の分析」の論文に対して、イグ・ノーベル賞が贈られました。この論文では、場面によって猫が鳴き方を変化させていることが報告されています。
しかしイタリア・ミラノ大学の研究では、録音された鳴き声だけでは、猫の伝えたいことを人が正確に読み取るのが難しいこともわかっています。
つまり、猫は飼い主さんに対して自分の気持ちを伝えようと鳴き声を意図的に変えて工夫をしますが、飼い主さんが愛猫の気持ちを正しく汲み取るためには、声とボディランゲージとその場の状況を総合的に判断する必要があるということなのでしょう。
ポジティブとネガティブの違いをおさえる

声だけで愛猫の気持ちを汲み取るのは難しいですが、大体の傾向を押さえておくことは、決して無駄ではないでしょう。猫は過去の経験から、どういう鳴き方をすれば「ご飯の催促」や「トイレ掃除の催促」が飼い主さんに伝わるかを学習します。そのため、すべての猫が同じような鳴き方をするわけではありませんが、それでもある程度は共通した傾向を持っています。
猫はポジティブな気持ちの時、柔らかい表情をしながら高めの声で鳴く傾向があります。そしてネガティブな気持ちの時は、硬い表情をしながら低めの声で鳴く傾向があります。また、感情の振れ幅が大きいと、鳴き声が大きくて長くなる傾向があるようです。
これらの傾向を押さえた上で、猫が「グゥ」という不思議な鳴き声を出す時の気持ちを推察してみましょう。
猫のグゥという不思議な鳴き声に込められた気持ち

1.威嚇・警戒
低めの声で唸るように「グゥー」と長めの鳴き声を出しているときは、何かに対して強い警戒心を抱き、威嚇している可能性が高いです。必ずしも「グゥー」ではなく、「ウゥー」とか「フゥー」などと聞こえることもあります。
また、声だけを聞くと強そうに感じますが、耳を後ろに倒したり、腰が引けたようになっている場合は、恐怖心が強くて弱腰になっていることが多いです。
2.興奮
興奮した時に、思わず「グゥ」という声が漏れてしまうこともあるようです。ただし、興奮にもポジティブな感情とネガティブな感情があります。ネガティブな感情で興奮している場合は、ストレスを受けているということです。
声の高さや表情、仕草やその場の状況などからどちらなのかを判断し、ネガティブな場合は原因を取り除くようにしましょう。
3.甘え
人と一緒に暮らしている猫は、成猫になってからも子猫の気分を失うことがないと考えられています。子猫の気分、成猫の気分が交互に入れ替わるのです。
目を細めながら飼い主さんに擦り寄り、甘えた声を出しているときは、完全に子猫気分のモードです。そのときに「グゥ」という声を出すこともあるようです。特徴は、うっとりとした表情と高い声です。声が高くなりすぎると、サイレントミャオ(ニャー)と呼ばれる、口を開いているのに声は聞こえないという鳴き方になることもあります。
4.返事
飼い主さんが愛猫の名前を呼んだときに、はっきりとした声で「ミャオ」と返事をすることもありますが、声を出さずにしっぽの先をぴくりと動かして返事をすることもあります。時には、控えめな小声で「グゥ」と返事をすることもあるようです。
猫のグゥ以外の不思議な鳴き声

「グゥ」以外にも、いくつか知られている猫の不思議な鳴き声があるのでご紹介します。
クラッキング
窓の外にいる鳥などに向かい、「カッカッカッカッカッ」という短い声を繰り返し発することがあります。これはクラッキングと呼ばれる鳴き声です。獲物を狩る時のような姿勢をしながら発しているため、狩猟本能から発している鳴き声だと考えられています。
シャーッ
猫は非常に警戒心が強いですが、決して好戦的ではありません。見知らぬ猫が出会うと、猫同士の暗黙のルールに従い、「勝ち目がない」と判断した側の猫が「降参」の意を示します。それで喧嘩をすることなく、お互いがその場を離れるのです。しかし相手がいつまでも動じないでいると、耳を倒して牙を剥き出し、マズルに皺を寄せた怖い表情で「シャーッ」という声を出し、相手を威嚇します。
アォーン
避妊手術を受けていないメス猫は、発情すると身をくねらせるようにしながら、驚くほど大きくてしぼり出すような独特な声で、「アォーン」という声を出して鳴きます。これは、オス猫を惹きつけるための鳴き方だと考えられています。
まとめ

猫が声で自分の感情を伝えようとする相手は、主に飼い主さんです。これまでお互いが築いてきた関係性をもとに、愛猫と飼い主さんだけのオリジナルな声のコミュニケーションができあがるケースが多いです。
猫が時々発する、「グゥ」という不思議な鳴き声について、どういう気持ちが隠されているのかについて、いくつかのケースを推測してみました。この例を参考に、愛猫の声や表情、仕草とその場の状況で、愛猫の気持ちを汲み取ってあげてくださいね。