アジア編

古来の日本では、猫のことを「ねこま」(寝駒や寝高麗などの諸説あり)と呼び、鳴き声を「ねうねう」と表現していました。さて、他のアジアの国々ではどんな言葉が使われているのでしょうか?
中国、韓国、フィリピン、タイ、ベトナム、インド、さらにサウジアラビアを例に紹介します(以下、左側に猫の呼び名、右側に鳴き声を列記)。
- 中国語:猫(māo/マオ)、喵喵(miāo miāo/ミャオミャオ)
- 韓国語:고양이(goyangi/コヤンイ)、야옹(yaong/ヤオン)
- タガログ語(フィリピン):pusa(プサ)、ngiyaw(ニィャウ)
- タイ語:แมว(Mæw/メーウ)、เหมียว(Myū/ミヤウ)
- ベトナム語:mèo(メオ)、meo meo(メオメオ)
- ヒンディー語:बिल्ली(billī/ビッリー)、 म्याऊ(miyaanu/メヤウン)
- アラビア語:قِطّ(qiṭṭa/キッタ)、 مواء(muwāʾ/ムワァー)
では、ここで問題をひとつ。猫のことを「マヤ―」と呼ぶアジアの地域とは?
正解は、沖縄です。
ヨーロッパ編

続いては、ヨーロッパ編です。
すべての国は網羅できないので、ひとつの目安として、サッカーのFIFAランキング(7月10日現在)にちなんで、ヨーロッパ内のトップ7の国を順に取り上げてみましょう(イングランドは英語圏、ベルギーは多言語圏ゆえに割愛)。
- ①スペイン語:gato(ガト)、miau(ミャウ)
- ②フランス語:chat(シャ)、 miaou(ミャウ)
- ③ポルトガル語:gato(ガートゥ)、miau(ミヤウ)
- ④オランダ語:kat(カット)、 miauw(ミヤウ)
- ⑤ドイツ語:katze(カッツェ)、 miau(ミャオ)
- ⑥クロアチア語:mačka(マチカ)、mijau(ミヤウ) または mjau(ミヤウ)
- ⑦イタリア語:gatto(ガット)、 gatta(ガッタ) miao(ミャーオ)
では、「眠っている猫は起こすべきではない」という猫のことわざがある国とは?
正解は、フランスです。
さすが伝統的に猫を大事にするお国柄と言うべきでしょうか。ことわざの意味は、日本で言う「触らぬ神に祟りなし」と同じです。
かわいさ余って、スヤスヤ眠る愛猫にちょっかいを出すと、猫神様から強烈な猫パンチをお見舞いされます。みなさんも十分に注意してください。
アフリカ編

アフリカ各国は、歴史上、英語やフランス語などを公用語とする国も多いので、ここでは、現地の主要な言語を取り上げ、猫の呼び名のみ(鳴き声は事実確認が難しいため割愛)について紹介します。
- ナイジェリア(ハウサ語):kyanwa(キャンワ)
- ケニア(スワヒリ語):paka(パカ)
- ジンバブエ(ショナ語):katsi(カツィ)
- マダガスカル(マダガスカル語):saka(サカ)
こう見てみると、スワヒリ語の「paka(パカ)」は、日本で言う馬の足音であり、マダガスカル語の「saka(サカ)」は、日本語の「坂」と同じ響きです。この点にも、同じ音でもまったく別の意味を持つ言語、あるいは世界の多様性が表われています。
蛇足ですが、話のついでに触れておくと、ガーナを代表する言語のひとつ、アカン語では「とても良い」のことを「pápá(パパ)」と表現します。
ラテンアメリカ編

最後のラテンアメリカ編もまた、アフリカ篇と同様の歴史的経緯があり、各国で使われる公用語を除いたうえで、猫の呼び方をそれぞれの先住民の言葉で紹介します。
- ブラジル(トゥピグアラニー語):mbarakaja(ンバラカジャ)
- コロンビア(ワユ語):katuu(カトゥー)
- ペルー(ケチュア語):misi(ミシ)
- メキシコ(ナワトル語):miztli(ミストゥリ)
- グアテマラ(キチェ語):mes(メス)
英語には「When the cat’s away, the mice will play(猫がいないとき、ネズミが遊ぶ)」ということわざがありますが、実は、ラテンアメリカの国々にも似たようなものがそろっています。
たとえば、ブラジルでは、猫がいないと、ネズミがパーティーを開き、コロンビアやペルーでは、ネズミが踊り始めます。意味はもちろん、日本の「鬼の居ぬ間に洗濯」です。
上記の国々のネズミたちが一堂に集まれば、おそらく、リオのカーニバルのような大騒ぎになるにちがいありません。一度、その様子をこっそり覗き見したいものです。
まとめ

国が違えば、文化も違い、当然のことながら、使う言語も変わってきます。今回は、世界各国で猫の呼び名と鳴き声がどんなふうに表現されるのか、それぞれの地域ごとに解説しました。
本文を一読してもわかるように、呼び名はそれぞれの国で違うものの、鳴き声については各国間でほとんど共通した響きになっています。つまり、どの国で暮らそうが、猫の鳴き声は同じように聞こえる、ということなのでしょう。
今回、紹介した内容が、猫好き同士のちょっとした話のタネ、あるいは、子供たちの猫への探究心を高めるきっかけになれば、執筆者としてこれほどうれしいことはありません。