猫が『目を回している』ときに考えられる3つの病気 そもそも、猫は人みたいに目を回すことがある?

猫が『目を回している』ときに考えられる3つの病気 そもそも、猫は人みたいに目を回すことがある?

「猫も目を回すの?」と思ったことはありませんか?実は猫も目を回すことがあります。私たち人間のようにグルグルと回ることが原因になる場合もありますが、重篤な病気の可能性もあります。今回は猫が目を回す原因となる代表的な病気を3つ紹介します。

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記事の監修

日本では獣医師。世界では旅人。”旅する獣医師”として世界各国を巡り、海外で見てきた”動物と人との共生の様子”を、執筆や写真展を通して皆さんと共有する活動をしています。

猫も人間のように目を回すの?

歩いている猫

猫も実は、人間と同じように「目が回っている」ような症状を見せることがあります。猫がふらふらして歩けなかったり、頭を傾けたり、眼球が左右に速く動いているように見えるときは「目が回っている」状態と言えるでしょう。

たとえばおもちゃを追いかけてグルグル回転したときなどに見られることがあります。

ただし猫が目を回しているように見えるときは、病気の可能性もあるため注意が必要です。普段とは明らかに違う動きやバランスの乱れが見られた場合には、動物病院への受診をおすすめします。

では猫の「目が回る」原因になる病気にはどのようなものがあるのでしょうか?代表的な原因をピックアップしてご紹介します。

1.前庭疾患

床で寝転んでいる猫

前庭疾患は、猫が「目が回る」ような症状を起こす代表的な原因のひとつです。

前庭とは、耳の奥にある平衡感覚を司る器官のことを指します。前庭に異常が起きると、猫はまっすぐに歩けずふらつく、頭を傾ける、眼球が震える「眼振(がんしん)」、嘔吐といった症状があらわれることがあります。

猫の場合、原因の多くは中耳炎や内耳炎だと言われていますが、原因不明の突発性の前庭疾患を起こすこともあります。

外耳炎や中耳炎が原因の前庭疾患は、炎症の程度にもよりますが、治療を行うと多くの場合1~3週間程度で、ある程度症状の改善が期待されます。

2.小脳障害

毛布に潜り込んでいる猫

小脳は運動の調整やバランス感覚を司る部分で、障害や異常があると「目が回る」ような動きが出ることがあります。

小脳障害の猫は、小脳の失調部位によって症状が異なりますが、歩くときに足取りが不安定になり、よろける、ふらつくなどの症状のほか、眼振などが見られることがあります。

猫の小脳障害が若齢で起きている場合、多くは正常な大きさまで発育しない低形成や先天的な奇形が原因です。たとえば母猫が妊娠後期のあたりに猫汎白血球減少ウイルス(パルボウイルス)に感染すると、小脳の形成不全がおこり小脳障害の子猫が生まれる可能性があります。

また後天的に小脳障害を起こすこともあり、ウイルスや細菌への感染、外傷、脳腫瘍などが原因となり得ます。

先天性の小脳障害は完治が難しいとされていますが、猫自身が慣れて日常生活を送れるようになるケースも多く、生活環境を工夫することで快適に暮らすことができるでしょう。

3.脳腫瘍

ヘソ天で寝転ぶ猫

脳腫瘍も神経症状を引き起こし、猫の目が回る原因になります。

脳腫瘍は、猫の脳にできる良性または悪性の腫瘍です。発生する部位や大きさによって症状は異なりますが、猫に多い髄膜腫では平衡感覚の喪失、食欲低下、痴呆症状、けいれん、徘徊、性格の変化など、多様な症状が見られます。

髄膜腫のほとんどは良性とされていますが、大きくなると脳や神経を圧迫してさまざまな症状が見られるようになり、生活に支障をきたすようになるでしょう。

診断にはMRIなどの高度な検査が必要です。治療としては外科手術が一般的ですが、状況によっては放射線治療または対症療法が選択されることもあります。

まとめ

診察中の猫

猫の「目が回っている」ときは、重大な病気のサインである可能性があります。前庭疾患、小脳障害、脳腫瘍など、いずれも平衡感覚や神経系に関わる深刻な病気です。

飼い主さんが日ごろから猫の動きや行動の変化に敏感になり、少しでも異変を感じたら早めに動物病院を受診することが大切です。

猫は言葉で体調を伝えることができないからこそ、猫の様子を注意深く観察し、早期発見、早期治療を心がけるようにしましょう。

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