猫が『かかりやすい代表的な病気』3選 できるだけ避けるための予防方法も解説

猫が『かかりやすい代表的な病気』3選 できるだけ避けるための予防方法も解説

「愛猫には健康で長生きしてもらいたい」という想いは、飼い主さん共通の願いでしょう。今回は、とりわけ、猫に多い3つの病気を取り上げます。あわせて、予防対策についても解説するので、愛猫の健康長寿のためにもぜひ一読してみてください。

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記事の監修

日本では獣医師。世界では旅人。”旅する獣医師”として世界各国を巡り、海外で見てきた”動物と人との共生の様子”を、執筆や写真展を通して皆さんと共有する活動をしています。

1.慢性腎臓病

腎臓を検査中の猫

まず、紹介したいのは、「慢性腎臓病」です。「慢性腎臓病」は、「腎不全」とも呼ばれ、腎臓の機能低下が慢性化した状態のことで、命の危険が非常に高い病気と言われています。

もともと砂漠地帯に暮らす猫は、主に獲物から得た水分を効率よく使うため、尿を濃くしてから排出します。その分、どうしても腎臓に負担がかかりやすくなってしまいます。

また、腎臓内にあるネフロン(腎小体と尿細管の機能単位)の数が少ないことも、「慢性腎臓病」の大きな要因として考えられています。腎臓ひとつにつき、人間は約100万個、犬は約40万個のネフロンがあるのに対し、猫は約20万個しかありません。

「慢性腎臓病」になった猫は、「多飲多尿」をはじめ、「食欲不振」「嘔吐」などの症状が表れやすくなります。症状の進行レベル別に4つのステージに分かれていて、最も深刻なレベル「ステージ4」に移行すると、死亡率が極めて高くなります。

いったん腎臓がダメージを受けてしまうと、もう二度と元通りには機能しません。「慢性腎臓病」に関しては、根本的な治療法はなく、飲水量を増やすことで腎臓の負担を軽減したり、療法食などで病気の進行を遅らせたり、高血圧など二次的に起こる症状を軽減する内服をしたり、定期的に点滴をして腎臓の血流量を維持したりといった対症療法がメインです。

「慢性腎臓病」の最も効果的な予防方法は、日常的にこまめな水分摂取に努めることです。一日の飲水量のおよその目安は、1kgあたり50~60ml程度。しかし、実際にはそれほどの量の水を飲みたがらない猫も多いため、カロリー計算しつつ、ウェットフードを積極的に活用してみてください。

2.膀胱炎

トイレ中の黒白猫

2つ目に挙げるのは、「膀胱炎」です。

「膀胱炎」は、大きく分けて、「細菌性膀胱炎」、「尿結石(結晶)による膀胱炎」、「特発性膀胱炎」があります。

「細菌性膀胱炎」はその名の通り、大腸菌やブドウ球菌などの細菌によって引き起こされる病気です。雌猫は尿道が太くて短いため、「細菌性膀胱炎」にかかりやすい傾向にあります。

「尿結石(結晶)による膀胱炎」は、雄雌に関わらず起こる「膀胱炎」です。ただし、特に雄猫の尿道は、S字に曲がっているうえに細いのが特徴。そのため、構造的に小さな結石や炎症のカスが詰まりやすく、結果的に「膀胱炎」や「急性腎不全」のリスクが高くなります。

一方、「特発性膀胱炎」は、雄猫(特に若い猫)がかかりやすい「膀胱炎」です。雄猫の尿道は、S字に曲がっているうえに細いのが特徴。そのため、構造的に小さな結石や炎症のカスが詰まりやすく、結果的に「膀胱炎」のリスクが高くなります。

「特発性膀胱炎」の原因はいまだに特定できていませんが、大半のケースでは、背景にストレスが深く関係していると推測されています。こちらも雌雄関わらず起こりうる膀胱炎です。

これらの膀胱炎は併発して起こることもあります。

「膀胱炎」の症状としては、「頻尿」や「血尿」、「排尿時に痛がる、鳴く」、「粗相」などが挙げられます。「膀胱炎」は再発しやすく、特に結晶や結石がある場合や炎症産物が多い場合、放置しておくと、やがて「尿道閉塞」に陥り、命を落とす危険性もあるので、何よりも早期発見が大切です。

「膀胱炎」を未然に防ぐには、前項でも述べたように十分な水分摂取に加え、「トイレ環境を清潔に保つ」「肥満防止のための適度な運動」などが欠かせません。飼い主さんは、愛猫のために、日頃からトイレ掃除と排泄確認をこまめに行い、ストレスの少ないおうち環境を整えるようにしましょう。

3.糖尿病

猫の血糖値を測定する獣医師

私たち人間社会でよく言う「肥満は万病のもと」という格言は、猫の場合でも当てはまります。肥満や偏った食事によってもたらされるのが、「糖尿病」です。

「糖尿病」とは、血糖値を下げるインスリンの分泌量が足りない、もしくは、インスリンが分泌されても十分に機能せず、結果として、血糖値が高くなってしまう病気です。「糖尿病」の原因は、加齢や肥満、運動不足、不適切な食事などが大半を占めています。膵炎に続発・併発する場合もあります。

「糖尿病」がひどくなると、「多飲多尿」「食欲増加」「元気減退」「体重低下」「毛づやの衰え」などの明らかな体調異変が表れやすくなり、末期症状では、全身機能に障害をきたす「糖尿病性ケトアシドーシス」という致命的な状況になることもあります。

「糖尿病」の改善への近道は、療法食などの活用で食事状況の見直し(高タンパク、低炭水化物、低カロリー)を図り、適度な運動を習慣化することです。

ちなみに、猫の理想体型は、簡単に言うと、上から見て、腰のくびれがちゃんとわかるうえに、肋骨に触れる状態です。

みなさんの愛猫が肥満レベルかどうかは、5つの体型に分類した「ボディ・コンディション・スコア(BCS)」でチェックしてみてください。

まとめ

調子の悪そうな猫

本文でも説明しましたが、「慢性腎臓病」は砂漠地帯出身の猫にとって、宿命的とも言える病気です。

この病気を未然に防ぐためには、毎日の水分摂取が欠かせません。カロリーオーバーにならないように気をつけながら、ウェットフードを積極的に活用して、日々、愛猫の必要な水分量を満たしてあげてください。

その他の病気についても、若いからといって油断はできない病気ばかりです。日頃から尿量や頻度、色などの排泄状況の確認と体重管理を行い、動物病院での定期的な健康診断を受けることで、早期発見・早期治療を心がけましょう。

愛猫の末永い健康のために、今回の記事が何らかの役に立てば幸いです。

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