猫は『抜歯』したほうがいい場合もある?歯を抜く必要がある病気とメリット・デメリット

猫は『抜歯』したほうがいい場合もある?歯を抜く必要がある病気とメリット・デメリット

猫の病気で、「抜歯」が必要になるのは、どんなケースなのでしょうか?今回は、考慮すべき病気と「抜歯」のメリット、デメリットについても解説します。ぜひ最後まで読んで、愛猫の健康のために役立ててみてください。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

歯周病改善には「抜歯」が有効

歯周病の猫の歯

猫は、基本的に虫歯になりません。人間とは異なる歯の構造や食性(完全肉食)、さらに虫歯の原因となるミュータンス菌が生息できない口腔環境だからです。

一方で、歯周病は、3歳以上の猫で高い割合でかかっている可能性が高い病気と言われています。

歯周病の具体的な症状は、よだれの増加や口臭悪化、食欲不振などです。状態がひどくなった場合、顔が腫れたり、歯茎から出血したり、最終的に歯が抜けることもあります。

歯周病を放置したままでいると、問題を引き起こす細菌が、血液によって全身に運ばれ、心臓などの臓器にも大打撃を与えます。

治療法には歯石の除去や抗生剤などの投薬がありますが、歯のぐらつきなど、症状が重くなっているケースでは、効果は望めません。そこで有効になってくるのが、「抜歯」です。

以下のトピックでは、「抜歯」のメリット、デメリットをそれぞれ紹介します。

主なメリットは全身への悪影響を防げること

元気な猫

前述したように、猫の歯周病は、進行すると、全身の臓器にも悪影響を及ぼします。

最悪の場合、命の危険につながる非常にシビアな病気です。状況を打開する手段として、「抜歯(全臼歯、全抜歯)」があります。

「抜歯」すれば、問題の歯や歯の根元に巣食う歯周病菌も取り除け、全身への悪影響も未然に防げます。

また、痛みやストレスが消えることで食欲が戻り、元気になることも「抜歯」の大きなメリットです。

ただし、「抜歯」しても、必ずしも歯周病が完全に根治するとは限りません。その点もあわせて頭に入れておいてください。

歯を抜いたら、愛猫が食事に困ってしまう、と心配する飼い主さんもいるかもしれません。

猫の食事スタイルは、丸飲みが基本です。人間のように歯で噛み砕く必要がないため、影響は少ないと考えていいでしょう。

デメリットは全身麻酔のリスク

病院で歯をチェックされる猫

「抜歯」の際立ったデメリットは、全身麻酔のリスクです。

全身麻酔は、シニア猫や持病を抱えている猫にとっては大きな負担となります。同時に、飼い主さんにとっては、費用面も気になるところでしょう。

状態や病院にもよりますが、抜歯の治療費は、歯1本ごとに、約3000~12500円が一般的な相場とされています。

全身麻酔や入院などの諸経費を含めると、さらに金額が上乗せされます。

歯を抜く本数や歯周病、口内炎の状態によっては、10万円を超えることもあり、「抜歯」には一定の経済的な負担が不可欠です。

歯周病は、噛み合わせなどの個体の状況にもよりますが、加齢につれてかかりやすくなる病気です。

日々のケアを怠った場合、シニア猫になった段階で、重い症状を抱えているのも珍しくありません。必然的に「抜歯」するかどうか、直面する機会も多くなります。

治療の選択肢として「抜歯」を検討する際は、麻酔を使用するため、全身状態を把握してリスクなどを考慮したうえで、信頼できる動物病院に必ず相談し、実際にやるかどうか決断してみてください。

まとめ

歯磨き中の猫

猫の歯周病は、やがて全身を蝕む危険な病気です。早期の段階では歯石除去や投薬という手段もありますが、悪化する一方の場合、「抜歯」が不可欠な状況も出てきます。

メリットは、症状の改善と元気になること、デメリットは、全身麻酔のリスクと経済的な負担。いずれにしても、「抜歯」の必要性に迫られる事態を避けることが先決です。

そのためにも、飼い主さんが責任を持って、日々、歯磨きなどで予防し、歯周病のリスクから愛猫を守ってあげましょう。

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