猫は好みがうるさい
「猫は餌の好き嫌いが激しい」というのは周知の事実。嗅覚が鋭敏で、おいしそうな匂いがしないと、まったく食べてくれないこともあります。しかも猫の味覚は人間よりも「うまみ」に敏感です。その代わり甘味は感じないと言われています。
そこで科学者たちは「絶対に猫に気に入られる味」について調べました。このたび「Journal of Agricultural and Food Chemistry」に発表された研究結果によると、「遊離アミノ酸」を含む味は、うまみと脂の風味を増すため、猫にとくに好まれることがわかっています。
スプレーをかけて味を比較
Shiqing Song氏(上海工業大学)をはじめとする研究チームは、お腹がすいた状態の10匹の成猫を対象に、さまざまな味の「食品スプレー」をフードに噴霧して実験を行いました。
まず鶏のレバーをつぶして熱処理し、酵素を使ってそのタンパク質をさまざまな程度に分解し、4種類のスプレーを作りました。こうしてでき上がったスプレーには、50種類を超える風味化合物が含まれていることがわかっています。「熱帯」や「花の香り」から、「汗」や「ゴム」のような香りまで、その匂いはさまざまです。
その4種類のスプレーを市販のキャットフードに鶏脂を塗ったものの上に吹き付け、それ以外のフードとともに猫たちに与えました。そして猫が最初にどのボウルを選ぶか、24時間でどのくらいの量を食べたかを観察したのです。
化学反応がうまみを増す?
その結果、ほとんどの猫がスプレーをかけたフードを好み、より多く食べることを発見しました。とくに分解の程度が高く、多くの遊離アミノ酸を含むタンパク質をスプレーしたものは、猫に気に入られたのです。
こうしたスプレーは、熱処理の段階で「メイラード反応」(加熱により糖とアミノ酸などが褐色に色づく反応のこと)を起こして風味が増したと想像されます。つまり加熱や熟成によって糖とアミノ酸が化学反応を起こしたのです。
同時に、猫が好む風味には、肉のほかにキノコや脂肪の風味も多く含まれていました。一方であまり好まれないスプレーには、酸味や甘味のある化合物が含まれていました。おそらくメイラード反応が少なかったのでしょう。
この研究は、将来キャットフードをうまく配合して猫に好まれる味に改良することに役立ちます。好き嫌いの多い猫でも好んで食べてくれるようになれば、飼い主も安心することでしょうね。
出典:Improving cat food flavors with the help of feline taste-testers