1.環境変化によるストレス
猫は縄張り意識がとても強い動物です。毎日、テリトリー内をパトロールし、異変が起こっていないか律儀にチェックします。平穏無事な暮らしを好む猫にとって、環境の変化は一大事です。
そんな猫が散歩で外に出てしまったら、個体差はあるにせよ、室内と比べものにならない情報の洪水によって、パニックに陥ります。
車やバイク、救急車の音、すれ違う通行人、さらに外猫の匂い。たとえば、散歩途中の犬にいきなり吠えられたら、たちまち縮み上がってしまいます。外の世界は、飼い主さんの想像以上に刺激的です。
同時に、外を出歩くことは、縄張りのパトロール範囲が広がることを意味します。ところが、散歩は好きなときに行けるわけではありません。室内のパトロールとは大きく違う点です。外のテリトリーをチェックできない間、愛猫は相当なストレスを抱えることになります。
人間でもそうですが、ストレスの蓄積はやがて健康状態に影響します。もし運動不足が問題なら、散歩の代わりに室内で適度に身体を動かすほうが安全です。キャットタワーやおもちゃなどを上手に活かしながら、愛猫の健康維持に努めてみてください。
2.逸走の危険性がつきまとう
猫の散歩が難しいのは、逸走の可能性を否定できないことです。どれだけ用心しても、いったん外に出れば、いつどこで何が起こるかわかりません。
「ハーネスが外れる」「誤ってリードを離してしまう」など、些細なアクシデントがきっかけで逃げ出し、最悪の場合、そのまま「帰らぬ猫」になってしまう心配もあります。もしそうなったら、飼い主さんは悔やんでも悔やみきれないはずです。
首輪での散歩も注意が必要です。犬用のものと違い、猫用の首輪は、首の負担軽減のため、締めつけが比較的緩く、強度も十分ではありません。首輪がスルッと抜けて逃走したり、何かに引っ掛かって首輪が締めつけられたり、思わぬトラブルも起こり得ます。
いずれにせよ、一歩外に出ることは、常に危険と隣り合わせです。飼い主さんはそのことを自覚したうえで、愛猫にとって何がいちばん良いのか、適切な判断を下す必要があります。
3.交通事故や感染症のリスクがある
ストレス、逃走に加え、交通事故も気をつけたいところです。雑多な外の環境に影響されて興奮状態に陥った猫の行動は予想もつきません。急な飛び出しで車にひかれる恐れもあります。
同じように、ノミやダニ、フィラリアなどの寄生虫による感染症も大きなリスクです。特にマダニは要注意で、貧血、皮膚炎、猫ヘモプラズマ症を引き起こします。
また、マダニ感染症は、人間も例外ではなく、日本紅斑熱やライム病、外猫経由での死亡例もあるSFTS(重症熱性血小板減少症候群)などの危険性もあります。つまり、愛猫を散歩させると、飼い主さん自身も感染症の可能性を背負うわけです。
まとめ
映像や実際の散歩の様子を見ると、確かに猫の散歩は犬とは違った独特の面白さがあります。しかし、その裏に可視、不可視の危険がいっぱい潜んでいることも忘れてはいけません。
猫の散歩の問題点として、今回は、ストレス、逃走、交通事故・感染症、3つのリスクに着目しました。
飼い主さんの役割は、愛猫の安心安全を守ることです。リスクを伴う散歩はできるだけ避けたほうが賢明でしょう。
猫は、高さを活かした住環境を用意すれば、たとえ狭い空間でもストレスになりにくいと言われています。キャットタワーを取り入れた立体的な部屋づくり、おもちゃの活用などで愛猫の運動不足解消に取り組んでみてください。