1.アレルギー性皮膚炎
猫の脱毛で多いのがアレルギー性皮膚炎です。アレルギー性皮膚炎になると、目のまわりやお腹などにかゆみを伴った発疹があらわれます。かゆみが強いため、しきりに舐めたり、掻きむしったりといった行動が見られるようになります。
アレルギー性皮膚炎の原因はさまざまですが、おもに以下のことが考えられます。
- 食べ物
- ノミなどの寄生虫感染
- 花粉やハウスダスト
- カーペット
- 金属
アレルギー性皮膚炎の治療では、最初にアレルゲンを特定し、対処することになります。
食べ物が原因の食物アレルギーでは、アレルギー対応の食事に切り替える、ノミは予防と駆虫をおこなう、花粉やハウスダストが原因なら、ステロイドや免疫抑制剤による治療をおこないます。
日ごろから、アレルゲンに触れることがないように排除する、掃除を徹底するなど生活環境を整えることも重要になります。
2.真菌性皮膚炎
猫の真菌性皮膚炎は、真菌(カビ)に感染することが原因で起こります。マラセチアや皮膚糸状菌が原因となることが多いです。
マラセチアは猫の皮膚や外耳道にいる常在菌で酵母様真菌の一種です。過剰に増殖するとマラセチア性皮膚炎を引き起こします。脱毛や皮膚のべたつき、フケといった症状が見られます。治療では、抗生物質や抗真菌薬を服用します。
皮膚糸状菌は人獣共通感染症のため、動物同士はもちろん人間にも感染します。猫が感染した場合のおもな症状は脱毛とかゆみです。抗真菌薬を1ヵ月ほど服用するほか、抗菌薬入りのシャンプーや塗り薬を使用する場合もあります。
感染している猫との接触後は手洗い消毒をおこなうようにしましょう。また環境中からの感染を防ぐためには、猫が使っているものを消毒する、こまめに洗濯するなどして清潔を心がける必要があります。
3.ストレス(心因性脱毛)
猫はストレスが原因で過剰に毛づくろいをするようになる場合があります。執拗に毛を舐めたり、噛んだりするため体の一部に脱毛、毛が短くなる、炎症と言った症状が見られるようになります。
心因性脱毛の原因の多くは環境の変化です。
- 部屋の模様替えをした
- 引っ越しをした
- 新しく猫を迎えた
- ペットホテルに預けた
など多岐にわたります。どれも人間にとっては些細なできごとかもしれませんが、環境の変化に弱い猫にとっては大きなストレスになり得ます。
いちばんの対策は、可能な限りストレスの原因を排除することです。また動物病院では、心を落ち着かせる効果のあるサプリメントや薬が処方されることもあります。
猫が安心してくつろげる場所を用意する、いっしょに遊ぶなどしてストレスを減らす工夫も必要です。
4.内分泌疾患(ホルモン異常)
内分泌疾患が原因で、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモンの分泌が減ったり、過剰になったりすると、脱毛の原因になります。おもな疾患としては、甲状腺機能低下症、クッシング症候群などがあります。
内分泌疾患が原因で脱毛が起こる場合は以下の症状も見られるようになるでしょう。
- 毛づやがなくなる
- 毛が乾燥してパサパサになる
- 左右対称性の脱毛
- 脱毛部位の血管が透けて見える
内分泌疾患の診断では、血液検査、尿検査、レントゲン検査、腹部超音波検査などがおこなわれます。原因が特定できれば、それぞれの疾患に合わせた治療をおこないます。
まとめ
猫の脱毛の原因は、アレルギーや感染症、ストレス、内分泌疾患など多岐にわたります。原因によっては、かゆみを伴う場合があります。かゆみが強くなれば、大きな苦痛を感じることになるでしょう。
また脱毛した部分に毛が生えてくるかどうかは気になるところかと思いますが、原因にもよるので一概には言えません。
何はともあれ、ハゲている部分を見つけたら安易に自己判断はせずに、早めに動物病院を受診しましょう。原因を特定してきちんと対処することが大切です。