カンザス州で2歳の猫が発症
米国カンザス州の獣医師が、猫に引っかかれた後に「じくじくした紫色の潰瘍」を引き起こす「スポロトリコーシス症」、いわゆる「バラ庭師病」を発症しました。当局は猫の飼い主に対し、感染に注意をするよう呼びかけています。
疫病予防センターのIan Hennessee医務官は、次のように説明しています。
「この『スポロトリコーシス症』という病気は土に含まれる真菌によって起こり、植物やキズを通じて人間などの哺乳類に発症します。この真菌は伝染力が強く、ラテンアメリカでは猫の感染が広がっています。しかし、これまで米国内で動物から人間への感染が確認されることはありませんでした」
2022年8月には、動物病院を訪れた猫から医師へと感染したことがわかっています。その猫(2歳)は、カンザス州の北西地域で自宅と屋外を自由に出入りしながら暮らしており、妊娠中でした。けんかをしたらしく、キズのある片方の前足に潰瘍ができ、動物病院へ運ばれたのです。
治療を受けたものの、症状は悪化していきました。獣医がさらに細胞検査を行ったところ、真菌が見つかりました。さっそくスポロトリコーシス症の治療を受けた猫は、症状が改善し、9月には元気な子猫を2匹出産したのでした。
しかしその1ヵ月後に再発し、必死の治療にもかかわらず悪化を続けたため、残念ながら安楽死の処置がとられました。
猫から人間へ感染
治療に当たった女性医師は、手袋を破った猫の爪で指を刺されてしまい、その後リンパ節が腫れ、発症してしまいました。検査の結果、猫と同じスポロトリコーシス症であることがわかったのです。幸い、8ヵ月間の投薬治療を経て、回復しました。
さらに数ヵ月後、前述の猫の飼い主が、別の飼い猫に同様の症状が見られたため、受診しにやってきました。さっそく検査した結果、やはりスポロトリコーシス症の陽性反応が出ました。ただちにこの猫に投薬を行い、4ヵ月後にやっと完治したのでした。
報道機関の取材に応えたHennessee医官は「この病気は通常、バラのとげのように皮膚をキズつける植物から感染するため、『バラ庭師病』と呼ばれることもあります」と話しています。
「猫のスポロトリコーシス症が人にもうつることをきちんと認識することで、治療現場で迅速な処置をとれるようになるとともに、感染予防策を講じることができるでしょう。万が一ひっかかれたり噛まれたりした場合、ただちに石鹸と水でよく洗う必要があります」と研究者らは声明を出しています。
飼い主や獣医は十分注意を
スポロトリコーシス症は、真菌が体内のどこで増殖するかによって症状が異なります。多くは真菌にさらされてから1週間から3ヵ月の間に、痛みのない、小さな隆起が見られます。隆起は赤やピンク色、紫色をしています。皮膚のキズから菌が侵入するため、ふつうは指や手、腕に現れます。
疾病予防センターでは、こうした症状に注意するようウェブサイト上で呼びかけています。
同センターの真菌疾患部門の責任者Tom M. Chiller医師は、通常は植物などからキズ口を通じて感染するとしつつ、「感染した猫が首を振ったときに胞子が飛んできて人間の皮膚に付着し、感染してしまう可能性もあります。この種の菌類がこんな形で感染を広める例はこれまで聞いたことがなかったので、心配しています」と話しています。
さらに、「この病気をもつ猫と濃厚接触した人で、病変やリンパ節の腫れが見られる場合は、すぐに医師に診せてください」と注意を促しています。
出典:
・Officials identify a cluster of feline sporotrichosis, transmission to a vet tech
・All cat owners warned over disease causing 'oozing purple ulcers' in humans