猫にも人にも寄生する『トキソプラズマ』気をつけるべきワケ 寄生されたら支配される?

猫にも人にも寄生する『トキソプラズマ』気をつけるべきワケ 寄生されたら支配される?

人畜共通感染症ということばをご存じですか?WHOによると、人畜共通感染症とは「脊椎動物と人の間で自然に移行するすべての病気又は感染」という定義がされています。その中には、猫が宿主であるトキソプラズマ症という寄生虫による感染症があります。妊婦さんが気を付けたい病気として有名です。今回はトキソプラズマについてくわしく解説します。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

トキソプラズマって何?

マウスと猫

トキソプラズマは、水や土の中にいる小さな寄生性の単細胞生物です。

動物(哺乳類や鳥類、げっ歯類)は、トキソプラズマが含まれている水や土から経口感染します。

感染したトキソプラズマは、動物の筋肉細胞内に侵入して外に出ることはありません。つまり、感染動物が肉食動物に捕食されない限りは、感染は広がらないのです。

猫へ感染する原因は、マウスや鳥の捕食によるものや感染した猫の排泄物からです。

猫の体内に入ったトキソプラズマは、ほかの動物への感染と異なり、腸管内へ移動してドンドン繁殖します。

排泄物とともに排出されたトキソプラズマは、再び土壌や水に乗って新しい宿主へ拡大していくのです。

人間が感染するのは、肉類を加熱せずに食べたり、汚染された野菜や果物をよく洗浄せずに口にしたりした場合です。また、湧き水や井戸水など浄化処理のされていない水も危険です。

ガーデニングの土や公園の砂場で感染猫がトキソプラズマを排泄している場合は、土壌が汚染されているため、土に触れた手から経口感染することがあります。

トキソプラズマに感染するとどうなる?

猫と妊婦

もし、トキソプラズマに感染したら、どうなってしまうのでしょうか。感染後に見られる症状と気を付けるべき理由を確認しましょう。

猫も人も健康なら変化なし、でも妊娠中は気を付けて

健康的な猫がトキソプラズマに感染した場合、多くは軽い下痢をする程度でひどい不調は見られません。

ただし、子猫や免疫の落ちた猫では、人間同様に発熱やリンパの腫れが見られ、けいれんや肺炎などを引き起こす可能性があります。妊娠中の猫は死産する危険もあります。

これらの症状は、トキソプラズマ感染によるものだけではないことに留意しましょう。

また、人間に感染した場合でも、ほとんど無症状で済んでしまいます。症状が出る場合でも、発熱やリンパ節の腫れ、関節の痛みなどが数日続き自然に治ることも多いです。

しかし、免疫が極度に低下している人は、命に関わるほど重症化することがあります。

また、妊婦さんが感染すると危険だといわれています。これは妊娠初期や妊娠してから初めて感染した場合です。胎児にも感染し、死産や重い障害を引き起こすおそれがあるので注意は必要です。

感染を防ぐためには?

トイレ掃除

トキソプラズマの感染は、一般的な衛生習慣で予防できます。

具体的には、以下のような対策があります。

  • 手洗い
  • 野菜やくだものはよく洗う
  • 生肉は食べない(猫にも与えない)
  • ガーデニング、畑仕事には手袋を使う
  • 妊娠を予定する人は抗体検査や予防を心掛ける
  • 湧き水や井戸水など処理されていない水を摂取しない

トキソプラズマは、アルコールや次亜塩素酸を含む消毒剤では死滅しません。そのため、流水でよく洗い流すことが最善の予防策になります。

また、飼い猫が外から持ってこないように、完全室内飼いを徹底することも大切な予防法のひとつです。

まとめ

芝生でイカ耳

今回は、寄生虫・トキソプラズマについてご紹介しました。

トキソプラズマの感染は、猫も人も健康体であれば無症状で済みますが、免疫の下がっている場合や妊婦さんの感染は心配です。

しかし、必要以上に恐れることもありません。ふだんから衛生管理や猫の飼育方法(完全室内飼いにするなど)に気を付けていれば問題ないでしょう。

基本的な感染予防対策をしっかりと行って、飼い主も猫もトキソプラズマに感染しないように心掛けましょう。

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