若い単身者に猫が大人気
韓国では、昔は迷信のため不幸の象徴とされて嫌われた「猫」。まるで人間の赤ちゃんのような鳴き声や、大きな目を恐れる風習もありました。
しかし、いまは違います。猫はペットとして大人気なのです。SNSでは猫が多数登場し、猫関連の商品も数えきれないほどたくさんあります。
都会で暮らすひとり暮らしの男女にとって、猫は理想的なパートナーです。国際市場調査会社「Euromonitor」が2023年に行った調査では、韓国で猫を飼う人は、犬を飼う人の2倍にのぼっています。しかも2028年までに、飼い犬の数は年間1%増と見込まれるのに対し、飼い猫は4%もの増加になると予想されています。
犬の飼い主は幅広い年代に分布していますが、猫の飼い主は20代から30代が顕著に増加する傾向にあります。韓国では10世帯のうち約3世帯が単身であり、その単身世帯の19.2%が29歳以下になっています(2022年の韓国統計局のデータによる)。つまり、若い単身者が猫を飼う傾向が強くなっているのです。
忙しい人々に理想的なペット
都市部の単身者向け住宅は狭いため、犬よりスペースが小さくてもすむ猫が好まれるのでしょう。散歩も不要で、1日に平均13~16時間も眠る猫は理想的なペットなのです。
「平日は9時から5時まで働く毎日なので、1日の大半を寝て過ごす猫は家に残しても安心です。猫は、なわばり意識の強い動物だと聞きました。だから外に出さないことで、愛猫が肉体的にも精神的にも健康に過ごせます」と話すのは、20代のParkさんです。
それでも、猫が孤独を感じることもあります。
獣医師のKim Myung-chulさんは「猫も寂しい気持ちになります。飼い主が猫と毎日一緒に遊び、きちんと時間をかけて世話をすることは、とても大切なのです。猫の環境や行動のニーズに、飼い主が的確に対処することが求められます。極端に活発な猫の場合は、もう1匹増やして一緒に遊ばせるのもいいでしょうね」といいます。
人間をボスと慕う犬と違って、猫の飼い主は自身を「執事」(韓国語でjipsa)と表現することもあります。外見がかわいいだけでなく、独立心が強く、家庭内で独特の力関係を築く能力のある猫は、若者たちにとってたいへん魅力的なようです。
飼い猫が精神的な支えに
「東亜ビジネスレビュー」が20~30代の500人に行った2021年の調査(複数回答可)では、74.9%が猫を「家族の一員」と考えている一方、56.9%が猫を「友達」と考えていました。同じ調査で、人々は猫の特性を「かわいい」「生意気」「落ち着いている」「クールだ」などと表現しています。そして25%以上は「猫のようになりたい」と回答しています。
猫であれ犬であれ、一般にペットを飼うことは孤独な人々に精神的な利益をもたらすことが複数の研究でわかっています。
ワシントン州立大学の人間発達学准教授Patricia Pendryさんが率いる研究チームは、雑誌「AERA Open」に掲載された研究成果で、犬や猫を含むペットとふれあうことでストレス軽減ができると主張しています。研究では、犬や猫を10分間なでた大学生は、ストレスホルモンであるコルチゾールのレベルが低下したことがわかったのです。
猫の飼い主であるChoi Min-jooさん(ソウル在住・20代)は「精神的に辛いときは、猫に慰めてもらいます」といいます。
「仕事で強いストレスに直面したとき、うちの猫はそばにやってきて、ゴロゴロと喉を鳴らして顔を舐めてくれるの。大事なわたしの赤ちゃんです。それと同時に、古くからの友でもありますね」
忙しい韓国の若者たちにとって、「猫ブーム」はまだまだ続きそうです。
出典:Cat ‘butlers’: Why more Koreans are cat-ering to feline friends