1.犬と猫はそもそも食性が違う
猫にドッグフードがダメなのは、犬と猫では、そもそも食性が違うからです。猫は完全肉食動物で、俊敏な身体能力を武器に、昔からウサギや鳥、ネズミ、カエル、昆虫などを捕らえ、命をつないできました。
一方、犬は雑食性の動物です。祖先とされるオオカミは、シカやイノシシといった動物以外に、ブルーベリーなどの植物、キノコも食べていました。人に飼い馴らされるようになってからは、人間の食べ物も口にするようになり、さらに雑食化が進みます。現在の犬にもその名残が受け継がれているわけです。
食性の違いは、腸の長さにもよく表れています。猫は肉を消化しやすいように約2mと短く、犬は約3.5m。猫と比べて犬の腸が長いのは、肉以外にも食べるため、時間をかけて栄養を吸収する必要があるからです。
ちなみに、同じく雑食性のヒトの腸の長さは約7m、牛が約50m、マッコウクジラにいたっては約300mとなっています。
2.タンパク質が不足する
食性が異なると、当然、必要な栄養素の割合も変わってきます。
犬と猫で違いが際立つのは、タンパク質の必要量です。猫は犬よりも約2倍のタンパク質が欠かせません。みなさんにもおそらくおなじみのAAFCO栄養基準(米国飼料検査官協会)によれば、キャットフードのタンパク質最低基準は26%以上で、ドッグフードは18%以上となっています。
上記の数字が示すように、猫が日常的にドッグフードを食べ続ければ、必要量をクリアできず、健康な体の維持が難しくなる可能性が高いです。
タンパク質が足りなくなると、筋肉量が落ちたり、毛づやが悪くなったり、免疫力が低下したり、さまざまな健康被害を引き起こします。健やかな身体づくりには、適量のタンパク質摂取がどうしても不可欠なのです。
3.深刻なタウリン不足で目や心臓が病気に
さらに「タウリン不足」も問題です。実は、犬は体内でタウリンを合成できますが、猫は身体のしくみ上、できません。なぜかと言えば、野生の時代からずっと、捕らえた獲物を通してタウリンを得ていたからです。
ただし、イエネコになった今は別で、キャットフードで取り入れるしかありません。そのため、総合栄養食用のフードには必ずタウリンが含まれています。
目や心臓の健康を支えるタウリンが不足すると、進行性網膜萎縮症による失明や拡張型心筋症になってしまう恐れがあります。
犬は体内で合成できるので、AAFCO栄養基準の総合栄養食用ドッグフードであっても、タウリンが入っていません。そんなフードを猫が常食してしまうと、間違いなくタウリンが不足し、やがて深刻な病を抱えることになります。
まとめ
犬と猫は、身体の構造や中毒を引き起こす食材にも共通点が多いのですが、もともと食性が違います。猫は完全肉食動物で、犬は人間に近い雑食性です。
猫がドッグフードを食べ続けると、タンパク質、タウリン不足につながる状況に陥り、健康へ悪影響が出ます。どちらも愛猫の元気な暮らしには欠かせない栄養素なので、きちんと猫には猫用のキャットフードで必要量を満たしてあげましょう。
ただし、犬も猫も食べることが出来る総合栄養食であれば、猫にも十分に配慮されている組成になっていることが多いので、選択してあげても良いでしょう。判断に困る場合は、かかりつけの先生やショップの店員さんなど専門家に確認してみてくださいね。