愛くるしい姿の背後に「痛み」が
品種改良された猫には、健康上の問題があるケースが多いと言われていますが、「RSPCA(英国動物虐待防止協会)」には、こうした猫が保護されるケースが急増しています。
「品種改良されたペット」といってふつう思い浮かぶのは、ラブラドゥードルやパグル、コカプーなどの犬かもしれません。
しかしここ数年は、猫の品種改良も増えています。ペルシャやスコティッシュフォールド、メインクーンなどがその代表的な例です。
ユニークな見た目はとても愛くるしいのですが「こうした品種には健康上、大きな問題がある」とRSPCAは話します。2018年以降、同団体の保護施設に持ち込まれる品種改良猫は3倍に増えています。主な理由は、飼い主が十分な世話をすることができないためです。
「飼い主はペットの幸せと健康を願っています。でもかわいさを優先させた品種改良によって、猫たちが大きな健康上の問題を抱えていることには、気づかない人が多いのです」と説明するのは、RSPCAのAlice Potterさんです。
実際、同施設に保護される品種改良された純粋種の猫は、かつてないほどに増えています。とくに多いのはペルシャ猫で、2018年と比較すると92%も増加しています。これに次ぐのがラグドール(61%増)、ベンガル(22%増)などです。
「ここ数年、品種改良猫の人気が高まるにつれ、そうした種類の猫たちが保護されるケースも増えました。改良によって誇張された容姿になったせいで、疼痛に悩む猫も多いのです。特定の病気にかかりえやすい猫や、正常な営みができない猫の品種もあります。たとえばペルシャ猫は、平べったい顔になるよう品種改良されているため『短頭症』になって、呼吸や睡眠、出産さえも困難になるのです」
映画公開にあわせてデータを発表
RSPCAは、Chipという名前のスコティッシュフォールドが出演する映画「アーガイル」(Matthew Vaughn監督)の公開に合わせて、今回のデータを発表しました。
監督夫人のClaudia SchifferさんはChipの飼い主ですが、この猫を連れて映画発表イベントに登場したことから、動物保護団体のひんしゅくを買っていました。
「映画にも登場するスコティッシュフォールドは、ひどい痛みのために正常な歩行ができない遺伝性疾患を抱えています。この品種の特徴である折れ耳は、軟骨の異常によるものです。これが関節にも影響し、子猫時代から関節炎を発症して痛みに苦しむ可能性があるのです」とAliceさんはいいます。
外見よりも中身を優先してほしい
「2018年以来、ここで保護しているスコティッシュフォールドは7匹だけです。でもこの映画で猫が美化され、みなさんが深刻な健康上の問題に気づかないまま、人気が急上昇するのではないかと心配しています」
英国内でも、スコットランド政府は品種改良を行うブリーダー向けの指導方針を定めています。RSPCAは、これを国内全域に広げるよう求めています。
「猫の飼い主には、ペットを選ぶときに外見よりも健康や性格を優先してほしいですね。それが健康で幸せな猫をはぐくむことにつながり、さらに健康な子猫へと引き継がれることになるのです」
「ブリーダーのみなさんには、幸せで健康な子猫を育ててほしいです。あわせて猫を家族に迎えたいと考える人は、ブリーダーから買うのではなく、ぜひわたしたちの施設を訪れて、保護された猫たちにチャンスを与えていただきたいですね」