常同行動とは?
「常同行動」とは、ストレスや暇つぶしといったさまざまな理由で、動物が同じことを繰り返してしまう行動のことをいいます。
動物園に行くと、飼育場で同じ場所をグルグルしたり、同じ動きをくりかえしている動物を見たことがあるでしょう。その行動が「常同行動」というものです。
動物園動物の場合は、狭い空間のなかで本来の能力発揮できないことが主な原因とされますが、実はイエネコも似たような理由で常同行動を起こすことがあります。
この常同行動が生活や身体に影響を及ぼす場合は、「常同障害」と呼ばれる疾患(病気)となります。
猫の常同行動でみられる行動は?
猫の常同行動としては、次のようなものです。
毛づくろい
自分の体を舐めたり、引っ掻いたりする行為です。普通の毛づくろいとは異なり、同じ場所を強く舐めたり掻いたりするのが特徴。
自傷行為に発展する可能性もあり、毛づくろいし続けた箇所にハゲや皮膚炎が起きてしまうこともあります。
自分以外も舐める
自分の体以外のものを舐めることもあります。
たとえば積極的に家具や壁を舐め回したり、毛布や布などの織物を舐めたり飲み込んだりなど。毛づくろいと同様、自分を落ち着かせる本能的な行為だとも考えられます。
同じ行動を繰り返す
部屋中を一定のパターンで往復する・自分の尻尾をグルグル追いかけまわすなど、ずっと同じ行動を繰り返すことです。
ほかには、爪を噛み続ける・同じ場所をぼーっとみているといった行動が見られることもあります。
猫の常同行動の原因は?
ストレス
猫の常同行動の原因で多いのは、遺伝的な要因以外に、ストレスや不安などの精神的な問題が主と考えられています。ストレス自体の原因には、次のようなものが考えられます。
【環境の変化】
引っ越しや家族構成の変化、新しいペットの導入など、環境の変化によってストレスを感じます。
またトイレや寝床といった猫を取り巻く環境が不衛生であったり、設置場所や形状が好みに合わず落ち着かなかったりする場合も、ストレスの原因に…。
【病気やケガ】
痛みや不快感、痒みなどの身体的な問題によってストレスを感じることもあります。
【飼い主の頻繁な留守や冷たい態度】
飼い主の長期留守により生活リズムが崩れたり、人間との愛着関係が変化したり、分離不安など過度な愛着によるストレスも要因に。
【他のペットや家族との関係が悪い】
同じ空間で暮らす動物や人との関係が悪いと、猫はストレスを感じます。猫の「どうしても気の合わない同居人」がいるようなら、要注意!
暇つぶし
とくに強いストレスを感じていなくても、常同行動をすることもあります。動物園動物と同じような理由ですね。
ペットの猫も、今やイエネコとはいえ元は野生で生きてきたヤマネコでした。そのため野生の本能はしっかり残っています。
しかしそういった本能(狩りをする・高い場所へ登るなど)を発揮できる環境でないと、猫は暇をもてあましてしまうわけです。そしてそれが常同行動へとつながっていきます。
猫の常同行動の対処法は?
猫の常同行動を疑ったときは、次のような対処法を実践してみましょう。
ストレスの原因を取り除く
常同行動を疑ったら、まずはストレスの原因を探り、その原因を取り除くことが大切です。
たとえば環境の変化が原因の場合は、新しい環境に慣れるまで時間をかけてサポートしましょう。落ち着ける場所を用意したり、猫が好きなおもちゃやおやつで気を紛らわせたり。
また病気やケガが原因の場合は適切な治療を行って、気の合わない同居人がいるのであれば居住空間を隔てたりするのもいいでしょう。
生活環境を整える
猫が安心して過ごせる環境を整えることも大切です。たとえば隠れられる場所や爪研ぎ場などを用意したり、トイレや水飲み場を増やすなど身の回りの環境を整えたり。
可能であればキャットタワーやキャットウォークを設置して、猫の得意とする「上下運動」をできるようにしたり、おやつを隠して猫に探させる・知育トイを使う・ネズミなどのおもちゃを追いかけさせるといった「狩猟ごっこ」を取り入れたりしてみましょう。
専門家に相談
対策しても改善が見られない・重度の常同行動の場合は、動物病院や動物行動学の専門家を頼りましょう。
常同行動を治すためには、行動療法・環境整備と共に、重症度に応じて薬物療法が行われることもあります。数日で治せるような簡単なものではありませんが、専門家と連携して愛猫の常同行動の完治を目指せます。
まとめ
猫の常同行動は、主に猫のストレスや不安などの精神的な問題が原因で起こると考えられています。したがって愛猫に常同行動が見られる場合はその原因を探り、今回紹介したような対処を行うことが大切です。
しかし原因がわからない・なにをしても常同行動をやめないといったことがあれば、積極的に専門家に相談してみてください。そして専門家と相談しながら、愛猫の常同行動に対処していきましょう。