1.「体内時計」はすべての生物が持っている
「体内時計」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
体内時計とは、「サーカディアンリズム」「概日リズム」「生物時計」などとも呼ばれている「昼と夜を作り出す1日の体内リズム」のことです。体内時計は、バクテリアを含むすべての生物が持っていることが分かっています。
最初に発見されたのは18世紀で、フランスの天文学者が、暗室に置かれているオジギソウが、光がなくても24時間周期で葉を立てたりしおれたりする周期的な動きをしていることに気付いたのが発端でした。
1970年代になると遺伝子解析技術の進歩により、X染色体のある領域に、体内時計に関わる「時計遺伝子」があることが分かりました。この時計遺伝子を最終的に特定し、機能を解明したのが、2017年のノーベル医学・生理学賞を受賞した3名の博士による「体内時計の分子生理学的仕組み」という研究でした。
2.「体内時計」は調整が必要
体内時計は、細胞内や細胞間で起こるさまざまな反応や相互作用が、約24時間周期で営まれることから作り出されます。この約24時間周期で営まれる分子力学的な作用が、睡眠サイクルや行動パターンを決定するのです。
体内時計はほとんどすべての臓器内に存在し、その臓器内の細胞組織の働きを統合し、脳にある親時計によって外部環境と同調されます。この親時計は、哺乳類の場合は視床下部の視交叉上核にあることも分かっています。
厄介なのは、体内時計と外部環境の時間とのズレを調整しなければならないことです。
体内時計の周期は約24時間であり、正確なわけではありません。外部環境の1日も、正確に24時間ではないことは、閏年があることからも分かります。この体内時計と環境時間のズレは、大抵の動物の場合、視覚から取り込まれる光によって調整されます。
3.「体内時計」が狂うと心身に影響を受ける
体内時計は自律して約24時間の周期を保っていますが、前述の通り外部環境の影響を受けます。
主な要因は光ですが、深海魚などのように特殊な環境で暮らしている生物の場合は光が届かないため、水温など、他の影響を受けるようです。
私たち人間の場合、夜でも明るい電灯の下で過ごし、寝る直前までパソコンやスマホなどを使用することで、長時間光を受けた状態で過ごします。このような生活は、体内時計と外部環境の時間のズレを大きくしてしまい、その結果体内時計の自律性を大きく乱してしまいます。
また、飛行機などで活動範囲が広くなったことで生じる時差も、体内時計を狂わせる大きな要因の一つです。
体内時計が狂うと、肥満、糖尿病、高血圧、がんなどの発症リスクが高まり、疲労が蓄積しやく、肌が荒れやすくなる、睡眠の質を下げるなど、心身に与える影響が大きいことも分かっています。
体内時計の乱れを抑えるためには、睡眠と食事のサイクルを規則正しくし、十分な睡眠を取るために就寝前の飲酒やコーヒーの摂取、夜食などを控えることが大切です。
現代の猫の場合は、完全室内飼いが一般的になったため、外敵から予想外に襲われることもなく、日々決まったルーティンで生活できます。そのため、人間のように体内時計が狂うようなことがほとんどないため、人間の目には猫の体内時計が正確に思えるのかもしれません。
猫の「体内時計」が正確な理由
なぜ時計を読めない猫が、毎朝同じ時間に飼い主さんを起こせる正確な体内時計を持っているのかに関する研究は、残念ながら見つかりませんでした。
しかし、ここまでの体内時計に関する豆知識から考えると、猫は人ほどには電灯、パソコン、スマホなどの人工灯の影響を受けず、アルコールやコーヒーを摂取することもなく、体内時計に従った規則正しい生活を送っていることが、原因なのではないかと考えられます。
昼行性の人間は、特に朝の光で体内時計がリセットされます。一方猫の場合は薄明薄暮性であるため、薄暗い時間帯に活動性が高まります。
日の出の時間は季節により大きく変動しますが、薄暗がりの時間帯は幅があることもあり、季節による変動もそこまで大きくはありません。おそらくこのような要素も、猫の体内時計をあまり狂わせないことに影響しているのかもしれません。
また、1日の行動にさまざまな制約があり、時間に追われるような日々を過ごしている人間と比べると、あまり時間に追われることがなく、規則的に暮らしやすい猫のライフスタイルは、体内時計を狂わせるような要素が少なく、体内時計の正確さを高めているのかもしれません。
まとめ
猫の飼い主さんは、猫の影響で比較的規則正しい生活ができているのではないでしょうか。
しかし、人によっては夜遅くまで起きていたり、眠る直前までスマホを見たりしているかもしれません。その行動は愛猫にも影響し、体内時計を乱して心身にストレスをかけている可能性があります。
愛猫家の皆さんは、愛猫に規則正しい生活をするように習慣づけられて、幸せなのかもしれません。そのことを肝に銘じて、愛猫のために規則正しい生活を心がけるように努力してみることをおすすめします!