猫に『お肉』をあげるときの注意点を7つの種類別に解説 定番のチキンからジビエまで

猫に『お肉』をあげるときの注意点を7つの種類別に解説 定番のチキンからジビエまで

猫は肉食性なため、タンパク質を多く必要とします。そのため、食事にお肉を与えることには問題ありません。しかし、お肉の種類によっては、注意すべき点があります。私たちの食卓に上る一般的なお肉からジビエまで、猫に与えるときの注意点を解説します。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

1.鶏肉

チキン

鶏肉は、キャットフードによく使われている原材料です。もちろん、猫に与えても問題ありません。

鶏肉は、脂肪が少なく、特にささみの部分は高たんぱく低カロリーなので、猫の食性にはとてもマッチした食材です。

鶏肉には、サルモネラ菌やカンピロバクターなど食中毒病原菌が付着していることがあるため、人用の精肉であっても、生の状態での給餌は推奨できません。十分に加熱してから与えましょう。

また、鶏肉に対してアレルギーが出やすい猫がいます。食物アレルギーを持っている猫やその疑いがある場合には、鶏肉を与えるのは控えましょう。

2.牛肉

ビーフ

牛肉は猫も食べられるお肉です。

牛肉は、鮮度の良い肉であれば生で与えることも可能です。ただし、その表面には菌や寄生虫が存在するため、十分に加熱して付着している菌を除去することが必要です。

人が牛肉を食べるときには、うまみを閉じ込めるための塩を振りますが、猫に与えるときには塩は不要です。中の肉汁が出やすくなりますが、味付けはしないでそのまま与えましょう。

また、牛肉は部位によって筋が硬いところがあります。猫は噛み切れないと、がんばって丸飲みしてしまうので、ブロックのままで与えると喉に詰まる危険があります。小さく切るか、薄切り肉をあげるようにしましょう。

3.豚肉

ポーク

豚肉も猫に与えられるお肉です。

ビタミンB1が牛肉の11倍もあり、虚弱体質の体質改善などが期待できる食材です。

豚肉には、トキソプラズマという寄生虫がいる可能性があるため、人間の食用に販売されている肉でも、十分に加熱してから与えるようにしましょう。

トキソプラズマの終宿主である猫が感染すると腸内で成虫が増殖し、下痢や嘔吐、食欲不振、肺炎などの不調を起こす危険があります。

また、トキソプラズマ症は人獣共通感染症です。免疫力が下がっている人や妊婦(胎児)に重大な合併症を引き起こしますので、十分注意しましょう。

4.馬肉

馬刺し

馬肉は、低アレルゲン食材といわれ、鶏肉や牛肉にアレルギーのあるペットにも食べさせられる食材です。

馬は牛や豚よりも5度ほど体温が高いため、寄生虫や菌に感染しにくいといわれています。

一方、馬刺しなどの生肉にも危険性はあります。

生肉にザルコシスティス・フェアリーという寄生虫がいると、馬刺しを食べた人は下痢や嘔吐、腹痛などの食中毒を引き起こします。

このザルコシスティス・フェアリーは馬と犬に寄生する寄生虫です。猫に感染するかは不明ですが、ザルコシスティスに属する寄生虫は、肉食動物が終宿主となるため猫への対策も必要です。

安心のためにも、馬肉も必ず加熱するようにしましょう。

5.羊肉(ラム、マトン)

ラムチョップ

北海道などをのぞくと日本の一般的なスーパーでは、取り扱いが少ない羊肉ですが、海外では比較的メジャーなお肉で、もちろん猫でも食べられます。

子羊の肉(ラム)は、やわらかくてクセがなく高たんぱく質。さらに、寄生虫の危険性も低く、新鮮な生食用であれば生で与えても問題ありません。

一方、2歳以上の成熟したマトンは、羊肉ならではの強いクセと歯ごたえがあります。

猫にマトンを与えるときには、しっかりと火を通し、小さく切って与える必要があります。マトンは噛み応えがある肉質なため、サイズが大きいと飲み込む際に窒息の危険があります。

猫の口に合わせた小さなサイズに切って与えるようにしましょう。

6.鹿肉

鹿肉ブロック

最近、流行りのジビエ肉とは、増えすぎた野生動物を狩猟によって駆除し、野生の鳥獣肉(ジビエ)として活用しているもので、日本では鹿肉もそのひとつです。

野生動物の肉は、農薬や抗生物質などの薬や原料を使った飼料が使われていないため、人為的な要素が少なく、クリーンでナチュラルな食材だと考えられています。

野山を駆けている鹿は、脂肪分が少なく高タンパク、アミノ酸バランスも良いため、多くのタンパク質が必要な猫に向いています。

一方、鹿はE型肝炎ウイルスを保持している可能性があります。E型肝炎は人獣共感染症で猫にも人間にも感染するため、猫への給餌だけでなく飼い主も注意が必要です。

E型肝炎ウイルスは、75℃以上で1分加熱すると死滅するため、鹿肉は十分に加熱してから与えるようにしましょう。

7.猪肉

イノシシの肉

地域によっては昔から「しし鍋」や「ぼたん鍋」などと呼ばれる猪肉を使用したお鍋が郷土料理として受け継がれていますが、最近では鹿肉と並んでジビエとして紹介されることも多いお肉です。

猪肉は、鉄分やビタミンB群が豊富で、豚肉よりもしっかりとした歯ごたえと濃い味が特徴です。

適切に処理されていれば、ニオイもクセもあまりありませんが、冬場のオスの成獣にはニオイや味にクセが出るといわれています。

猪肉も鹿肉と同様、E型肝炎ウイルスや腸管出血性大腸菌、寄生虫などさまざまな感染病原体を持っています。どんなに新鮮であっても決して生では与えず、十分に加熱してから与えるようにしましょう。

まとめ

生肉をもらう猫

この記事では、猫にお肉を与えるときの注意点を種類別に解説しました。

肉食動物である猫にとって、自然である食材がお肉です。しかし、数ある肉類のうち、新鮮な牛肉やラムを除いたほとんどのお肉が十分な加熱を必要としています。それでも基本的には、火を通した方が安全です。

猫にお肉を与える機会は、手作り食をはじめ、食べ飽きたキャットフードの味変などでも有効です。新鮮なお肉を少量与えることで、食欲の起爆剤となることが期待できます。

お肉を与える際には、猫の健康状態やアレルギーに留意することはとても重要です。特に療法食を食べている猫にお肉を与えようとするときには、かかりつけの獣医師によく相談するようにしましょう。

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