引っ越しのあと、猫が行方不明に
去年(2022年)の夏のこと。Sarahさんが休暇で訪れたイタリアの湖畔で、のんびりしていたときに突然、ペット捜査員から「11年前に失踪した猫のBiffが見つかった」という電話が入りました。
Biffはかわいくて勇敢で、愛情深い猫でした。Sarahさんはこの猫を愛していましたが、Biffはじっと家にいるタイプの猫ではありませんでした。2011年にロンドン東部からグロスターシャー州に引っ越したとき、ある朝ひょいと家を出たBiffは、そのまま行方不明になってしまったのです。
捜索もむなしく、見つからない愛猫
心配したSarahさんは何時間も近所を探し回り、おやつの袋をシャカシャカ振りながら名前を呼び続けました。ポスターをあちこちに貼り、獣医にも聞いて回り、ネットでも捜索を続けました。
悲しんだ彼女は、「もしかしたら、イワシとガス暖房機が好きなおばあさんに気に入られて、一緒に住んでいるかも。幸せに生きているはず」などと想像して自分を慰めていました。でも心の中では、車に轢かれてしまったのではないかと案じていたのです。
何年もたって、猫が発見されたとの連絡があったとき、彼女の目には涙があふれ、口はあんぐりと開いてしまったのだとか。猫の捜査員であるルイーズさんが散歩中の猫を見つけ、マイクロチップをスキャンしてみて、Biffだとわかったのだそうです。
しかし、問題がありました。Robinさんという男性が「わたしの猫だ」というのです。11年前に庭に現れた人懐こい猫と仲良くなり、家族に迎えたのだそうです。
感動の再会を果たすものの…
彼の家でBiffはすばらしい生活を手に入れていました。遊び相手として迎えた猫Cocoと一緒に農場に暮らし、映画に「特別出演」までしたそうです。
一方で、Sarahさん家族はすでに新しい子犬を迎えているし、子供たちも成長しています。彼女は、このままBiffをRobinさんの元に置くことにしました。
Robinさんはこれまでの経緯を彼女に話してくれました。それによると、住んでいた家が全焼してCocoが亡くなってしまい、Biff(現在はFernandoという名前)は大やけどをして耳を失ってしまいました。
しかし、Robinさんの懸命の看護で健康を取り戻し、元気になった今では、彼がやっている事業に協力して「オフィス・マネージャー」に昇進したとか。事務所には、専用の柔らかい椅子と自分専用のマグカップまであるそうですよ。
その事務室で、Sarahさん一家はBiffと再会しました。彼女の子供たちも大興奮。記念にTシャツとポスターを作って、再会を祝いました。懐かしいBiffを抱いて大泣きしたSarahさんですが、いまではすっかり年老いて、新しい飼い主にたっぷり愛されているBiffは、落ち着きはらっていたそう。
そんな再会から数ヵ月後、Sarahさんの元に「猫は虹の橋を渡りました」というRobinさんからの悲しい知らせが。Biffのために、これまで何度も涙したというSarahさん。今回が本当に最後の涙になりました。どうか天国で安らかに。