流産と検査のあとで体調が悪化
Martha Keithさんはとくに猫好きというわけではありません。でもある日、金色の目をした、大きな人懐っこい黒猫が現れ、彼女を救ってくれたのです。
この黒猫に出会ったとき、Marthaさんは強いストレスと精神的なショックに悩んでいました。10代のころに「子宮内膜症」と診断された彼女は、2022年の夏までに体外受精を数回受け、4回も流産を経験していました。
このため彼女は、体内に細いカメラを入れる「子宮鏡検査」を受け、状態を調べることにしたのですが、「この検査は思ったよりも体への衝撃がひどく、体調がますます悪化してしまいました」といいます。
術後の体力回復のため自宅で療養していたとき、見知らぬ黒猫が訪ねて来るようになったのです。
毎朝やって来る黒猫
「首輪はしていませんでしたが、きっとだれかの飼い猫に違いないと思い、毎晩猫を外に出して、家に戻るよう促しました。でも朝になると、時計仕掛けのようにやってきて、開けた窓から入って来るか、裏口の前で鳴いて『入れてくれ』とせがむのです」
やがて彼女はこの黒猫と仲良くなりました。
「奇妙な言い方ですが、わたしのそばに誰かが必要だということが猫にはわかっていたようでした。検査のあと数週間は自宅勤務をしていましたが、その間、黒猫はわたしの膝に頭をのせたり足元で丸くなったりして、ゴロゴロと心地よい音をたてていました」
このゴロゴロ音や猫との触れ合いがとても心地よかった、とMarthaさんは振り返ります。その後数ヵ月にわたり猫の訪問は断続的に続き、彼女の体調も回復していきました。
「最後の人工授精をしたあと、わたしはなんとか妊娠までこぎつけました。すると黒猫の訪問回数が減っていったのです。あるイースターの午後、日差しをあびながら、猫はわたしのベッドの上でのんびりと丸くなっていました。その姿はいまも目に焼き付いています。忘れられない、すばらしい瞬間でしたね」
これが、彼女が黒猫を見た最後でした。
猫との別れの真相が明らかに
Marthaさんは6月に、無事女の子を出産。しかしその間も、苦しいときに自分を救ってくれた猫がどうなったのか、ずっと気にかかっていました。
そこで彼女は猫探しを始めました。「TikTok」に投稿した黒猫のビデオは、70万回も再生されるほど話題になりました。
通りに面した家を1軒ずつ訪ねていくと、あの黒猫の飼い主だという高齢者夫婦が見つかりました。2人は猫を保護施設から引き取り、Squidgeと名づけたというのです。
「毎朝出かけていくのを不思議に思っていたそうです。この猫はいつも、自分を必要とする人がいるのをわかっていたようです」と彼女はいいます。
しかし残念なことに、あれほど無償の愛を注いでくれた黒猫との感動の再会は果たせませんでした。
「猫は重いリンパ種を患っていたそうで、最後にやって来た日の1週間後、安楽死をさせざるを得なかったそうです。わたしはショックで落ち込みました。でも心の奥では、突然来なくなった黒猫が、もうこの世にいないことを予想していました」
この猫は、苦しいときに彼女の心を支えてくれました。それこそ、ペットが人間に与えてくれるもっともすばらしい贈り物です。
「猫は、わたしの元に来るべくして来ました。辛いときに、やさしく支えてくれました。そしてわたしが大丈夫だと知って、去っていったのかもしれません。本当に神秘的な黒猫です」
中世のヨーロッパでは「黒猫は魔女の化身」などといわれ、恐れられたことがあります。でもSquidgeは、人間に幸せをもたらす「神秘の黒猫」だといってもいいかもしれませんね。
出典:Woman Dealing With Miscarriages Explains How Mysterious Cat Eased Her Pain