マッサージを行うメリット
そもそも、シニアや介護期の愛猫にはなぜマッサージをしてあげるといいのでしょうか?まずは、愛猫にマッサージをしてあげるメリットからお話します。
メリット1:血行を促進させる
介護が必要になった猫ちゃんのほとんどは、これまでのように自由に体を動かすことが難しくなった子かと思います。
シニアになった子であっても段々と体のさまざまな機能が衰えてくるため、血行が悪くなるケースは珍しくありません。
そうした際にも、猫にマッサージを行うと皮膚に適度な刺激を与えられるので、滞っていた血流が促されます。
すると新陳代謝も高まり、結果として多くの病気や不調を予防することができるのです。
メリット2:異常を見つけやすい
マッサージを行う際は、飼い主さんの手で猫ちゃんの体を触ることになりますよね。
マッサージによって普段撫でないような箇所を触る場合もあるため、皮膚炎はもちろん、体にできたしこりや関節の痛みなど、これまでは気づけなかった体の異常に気づくことも珍しくありません。
中には早期発見・治療が大切な病気もあります。定期的にマッサージを行って、愛猫に体の異変が生じた場合に早く気づいてあげられるように心がけましょう。
メリット3:ストレス緩和になる
みなさんもご存知の通り、猫は1日の3分の2もの時間を寝て過ごすと言われているほど、よく眠る動物です。
シニアになった子や介護が必要になった子は特に体力を消耗しやすいため、これまで以上に眠って過ごすことが増えるかもしれません。
それに比例して「飼い主さんと猫ちゃんのスキンシップの時間も減った」というご家庭も珍しくはないかと思います。
その一方、大好きな飼い主さんに触れてもらえるのは猫ちゃんにとって大変嬉しいことだということは忘れてはいけません。
今までのように体の自由が効かなくなった猫ちゃんはストレスが溜まりやすくなりますが、飼い主さんのマッサージによってリラックスできるので、溜まっていたストレスも少しずつ解消できますよ。
もちろん、嫌がっているのを無理に行うのは逆効果ですが、猫ちゃんが起きているタイミングを見計らって少しずつマッサージを行ってみましょう。
愛猫へのマッサージ方法
シニアや介護期の猫ちゃんにマッサージを行うメリットについてお話しました。
一言に「マッサージ」と言ってもさまざまなものがありますが、ここからは飼い主さんがおうちでできるマッサージ方法をご紹介します。
「マッサージ」と聞くと「テクニックが必要なのでは?」と考える飼い主さんも多いかと思います。ですが、軽く撫でるだけでも立派なマッサージですから、飼い主さんはあまり気張らずに進めていきましょう。
全身のマッサージ
まずは手のひらやペットブラシを使って、毛並みに沿って後頭部あたりから尻尾の付け根までを数回ゆっくりと撫でていきましょう。
背骨の周りにはツボが多く集まっていると言われていますので、軽く背骨をつまむイメージで撫でていくのもオススメですよ。
ギュッと強く押すのではなく、あくまでも優しく行いましょう。
顔のマッサージ
顔には視覚・嗅覚・味覚・聴覚を司る感覚器官が集まっているため、疲れが溜まりやすいとされています。
それと同時に、非常にデリケートな部分でもあるので、マッサージをする際には他の箇所以上に軽い力で行うことが重要です。
顎のあたりをクルクルと円を描くように撫でたり、頬を軽くつまむようにほぐしたり、猫ちゃんが嫌がらない程度にマッサージしてみましょう。
鼻先から額を通り頭を撫でる方法も「気持ちいい」と感じる猫ちゃんが多いのでオススメです。
足のマッサージ
足先を触るのを嫌がらない猫ちゃんの場合には、優しく肉球をマッサージしてあげるのもいいでしょう。
肉球はさまざまなツボが集中している箇所のため、マッサージすると免疫力を高めてくれるとも言われています。
猫ちゃんの前足の肉球の中で最も大きい部分を、下から優しく数回押し上げてみましょう。難しい場合には猫ちゃんと握手するように軽く足先を握るだけでも大丈夫です。
足先などの先端部分は猫ちゃんにとって「急所」となるため、触られるのを嫌がる子も珍しくはありません。
無理に行うのではなく、あくまでも猫ちゃんの様子を見ながらマッサージしてくださいね。
お腹のマッサージ
繰り返しになりますが、シニア期にはさまざまな体の機能が低下します。
腸の動きやお尻周りの筋肉・踏ん張る力も弱くなるため、シニアになってから便秘気味になってしまう猫ちゃんはとても多いのです。
2〜3日の間に一度も便が出ていない場合、便秘に陥っている可能性が十分にあります。おへそを中心にして、「の」の時を描くようにゆっくりお腹をマッサージしてみましょう。
うんちを出してあげたい気持ちはわかりますが、強く押してしまうと内臓にダメージを与えます。力はかけずに、優しく行ってくださいね。
また、便秘は軽く考えがちな飼い主さんが多いのですが、別の病気につながる可能性もあり、最悪の場合には命に関わるケースもあります。
便秘に気づいた際にはご家庭でのマッサージだけで様子を見るのではなく、早めにかかりつけの動物病院を受診するようにしましょう。
マッサージする際の注意点
シニア期や介護期の猫ちゃんへのマッサージ方法をご紹介しました。
先ほどから「あくまでも優しく行う」というのはお話していますが、それ以外にもいくつか飼い主さんに気をつけていただきたいことがあります。
最後に、猫ちゃんのマッサージをする際の注意点について解説しますので、実践する前には必ず確認してくださいね。
1日5〜10分程度でOK
マッサージが健康に良いとはいえ、長くやれば良いものでもありません。あまり頻繁に行うと、猫ちゃんにはかえってストレスになってしまう場合もあります。
愛猫へのマッサージは週に1〜2回、1回5〜10分程度で十分です。猫ちゃんが起きていて、なおかつリラックスしているタイミングを見計らって行いましょう。
ただし、猫ちゃんが嫌がる場合にはすぐにやめてくださいね。
自分の手を確認
猫ちゃんにマッサージを行う前に、飼い主さんはご自分の手をよく確認してみましょう。
- 手は温かいか
- アクセサリーはついていないか
- 爪は長すぎないか
人でもマッサージしてくれる相手の手が冷たいと、触られた時に驚いてしまいますよね。
猫ちゃんでも同じで、飼い主さんの手が冷えていると触られた時点で驚いて逃げてしまうかもしれません。
また、手にアクセサリーがついていたり爪が長すぎたりすると、猫ちゃんの皮膚を傷つけてしまう可能性もあるので危険です。
マッサージを行う際には不要なアクセサリー類や付け爪は外して、手をホットタオルなどで温めるように心がけましょう。
アロマは使わない
人の場合にはリラックスのためにアロマオイルなどを使用してマッサージを行うことも多いですよね。猫ちゃんにもリラックスしてもらうことはとても大切なのですが、アロマを使うのはNGです。
種類にもよりますがアロマの中には猫にとって「毒」となるものも多く、最悪の場合には死に至ることもあり得ます。
最近では動物でも使えるアロマを厳選して取り扱っているペットサロンも多いのですが、ご家庭でマッサージを行う際には不用意に使わないことが最善の策と言えるでしょう。
また、猫にとって毒性はない種類であっても、人よりも嗅覚の優れている猫にとっては、そのアロマの香りが「きつくて不快」ということも考えられます。
リラックスしてもらうためのマッサージなのに、猫ちゃんを不快にさせてしまっては本末転倒ですよね。
猫ちゃんへのマッサージではアロマは使わずに、猫ちゃんが本当にリラックスできる環境で行いましょう。
持病やケガがある場合は獣医師に相談
猫へのマッサージにはたくさんのメリットがありますが、持病やケガのある場合には必ず前もってかかりつけの獣医師さんに行っても良いかを確認しましょう。
良かれと思ってやったことが愛猫にとっては逆効果だった…なんてことになったら、飼い主さんもつらいですよね。
持病やケガに限らず、少しでも心配な点がある場合には自己判断で行わずに、頼れる獣医師や動物看護士に相談してみてください。
以前はトリマーとして従事していたが、愛犬の死をきっかけにペットロスカウンセラーへと転身。現在では、Rapport Cielの代表として、ペットロスカウンセラーやグリーフケアを行う一方で、Webライターとして動物に関する様々な記事の執筆を行う。 著書「ペットロスで悩んだときに読んでほしい愛犬の死がきっかけで平凡主婦がペットロスカウンセラーとなって起業した話: 「意外」と驚かれるペットロスとの向き合い方 (ラポールブックス)