猫の介護とはどんなもの?介護の種類や飼い主さんの心に留めてほしいこと

猫の介護とはどんなもの?介護の種類や飼い主さんの心に留めてほしいこと

命あるもの、老化や病気を避けることはできません。では、愛猫に介護が必要となった時、私たち飼い主はどのようなことを心に留めておけばいいのでしょう?動物介護士資格を持つペットケアアドバイザーが解説します。

愛猫の介護の種類

老猫

猫でも人と同じように「介護」と一言に言っても、さまざまな種類があります。まずは、猫の介護の種類にはどのようなものがあるのか、主なものを見ていきましょう。

食事の介護

病気の時だけではなく、多くのシニア期の猫に必要となるのが「食事の介護」です。

介護と聞くと「食べさせてあげる」といった強制給餌を想像する飼い主さんも多いかもしれませんね。

しかし、食事に限らず介護は決して「お世話をしてあげる」ということだけで括られるわけではありません。

例えば、食事面で言うと「食べやすいフードや食器に変えてあげる」「食が細くなってきた愛猫の食欲を増進させるために工夫をする」なども、食事の介護の一つと言えます。

そのため、食事の介護は割とどの家庭でも身近なもので、自力で食べられる猫ちゃんにも必要となることがほとんどなのです。

というのも、シニア期になるとどんなに健康な猫ちゃんでも首・背中の筋肉や骨が衰えます。

若い頃には特に問題なく背中を曲げてご飯を食べていても、歳を重ねるにつれて徐々にその体勢がきつくなってしまうのです。

また、シニア期には筋肉や骨だけではなく内臓も機能が低下してくるので、食事の内容にも気をつけてあげる必要があります。

詳しいことはまた別の記事でご紹介できればと思っていますが、食事は生きていくために必要不可欠なことです。自力で食べることのできる子であっても、飼い主さんは食事の介護を正しく行えるように心がけましょう。

排泄の介護

動物介護の中でも特に配慮と工夫が必要とされているのが、排泄の介護です。

猫に限ったことではありませんが、排泄は食事と同じく生きる上で重要な基本本能ですよね。

病気によって「排泄機能がなくなった」と診断を受ける場合もありますが、病気になったり歳を重ねて物忘れが激しくなったりしても、排泄そのものを忘れてしまうことはまずありません。

トイレに連れて行ったり、漏らしてしまったうんちやおしっこの掃除をしたり、排泄の介護は飼い主さんにとっても負担が大きくなりがちです。

しかし、猫ちゃんからしても今まで当たり前のようにできていた排泄を自力で満足にできなくなるのは、とてもつらいことなのです。

もしも愛猫が粗相をしてしまっても決して叱ることはせずに、「どうしたら失敗を減らせるのか」をご家族で話し合っていきましょう。

場合によってはオムツの検討も必要ですが、きれい好きの猫にとってオムツの着用はストレスにもつながります。

できる限りは飼い主さまや家族がトイレの介護を行うようにして、オムツは最終手段に残しておくのがおすすめです。

床ずれの予防

猫は元々よく寝る動物ではありますが、自由に体を動かせない寝たきりの状態となると「床ずれ」の心配も出てきます。

床ずれは長期間にわたって同じ姿勢でいた時に、体重がかかっている部分の皮膚表面が壊死してしまうことを言います。

発生初期には目で見て確認することは不可能なので、家族が気がついた時にはすでに床ずれが悪化してしまっているケースがほとんどです。

さらに、床ずれは一度起きてしまうと治療の期間が長くなったり再発しやすかったりと、愛猫にも飼い主さんにも大きな負担となってしまいます。

そのため、寝たきりの猫がいる場合には、床ずれを起こさせないように介護の初期から工夫を行うことが重要です。

市販の床ずれ予防マットなども使いつつ、定期的に体の向きを変えてあげるようにしてくださいね。

夜鳴きへの対応

人生のほとんどを家で過ごすことの多い猫は、どうしても脳への刺激が少なくなりがちです。そのため、シニア期には多くの猫が認知機能が低下するとも言われています。

認知機能の低下によって起こることはさまざまありますが、中でも「夜鳴き」は睡眠を妨げたり近隣への配慮が必要となったり、飼い主さんの精神的にもつらい症状ですよね。

夜鳴きの原因は、孤独感・不安感・昼夜逆転などが考えられます。

不安感を解消するために寝床を飼い主さんの近くに移動させてみたり、昼夜逆転した生活を正すために昼間には朝日を多く浴びせてあげるようにしたり、まずはできるだけ工夫をして様子を見てみましょう。

介護を行う飼い主の心に留めてほしいこと

猫と人間が手を取り合う

大切な愛猫の介護を行う際、飼い主さんはつい「この子のために私が頑張らなくてはいけない」と思ってしまいますよね。

ですが、気張る前にまずは「介護の目的」をしっかりと考えてみましょう。

愛猫の介護を行っているうちに、いつの間にか“介護をすること”が目的になってしまう飼い主さんは珍しくありません。

愛猫のために一生懸命になれるのはとても素晴らしいことですが、介護はゴールの見えないものですし、強いて終わりを指すのならそれは「愛猫とのお別れの日」です。

そのため、介護そのものを目的としてしまうと、飼い主さんは精神面でもとてもつらくなってしまいます。

家庭によってさまざまな考え方があるかと思いますが、ペット介護の大きな目的としては「愛猫の生活の質を保つこと」が一般的です。

みなさんの愛猫にもきっとその子らしい個性がありますよね。どんなに歳を重ねても病気を患っても、その個性が消えてしまうことはありません。

つまり「愛猫が愛猫らしく最期まで暮らせるようにすること」こそが、私たち飼い主が介護を行う目的なのです。

そのように生活の質を保って最期までその子らしく過ごせることは愛猫にとってはもちろん、飼い主さんにとっても嬉しいことだと思います。

介護は目的ではなく「愛猫と自分が幸せに暮らすための手段なのだ」ということを忘れないようにしてくださいね。

力を抜くことも忘れずに

猫の介護の種類、介護を行う際に飼い主さんの心に留めておいてほしいことについてお話しました。

介護を行う飼い主さんの中には「自分の愛猫なのだから、自分が介護をするのは当然」と思う人もたくさんいるでしょう。

しかし、1人で大変なことをすべて抱え込む必要はないのだということも覚えておいてくださいね。体の小さな猫とはいえ、介護には大きな労力が必要です。

それを1人で抱え込んでしまっては、飼い主さんは肉体的にも精神的にもストレスがかかってしまいます。

愛猫もきっと、飼い主さんがストレスを抱えながら自分のお世話をするのは見ていてつらいはずです。

介護をすべて自分で行うことが、必ずしも猫への愛情になるわけではありません。

家族と協力したりペット介護のサービスを使ったりして、力を抜けるところは抜きながら無理なく介護を行ってくださいね。

執筆者情報

写真
Rapport Ciel
代表・ペットロスカウンセラー・ペットケアアドバイザー
松永由美

以前はトリマーとして従事していたが、愛犬の死をきっかけにペットロスカウンセラーへと転身。現在では、Rapport Cielの代表として、ペットロスカウンセラーやグリーフケアを行う一方で、Webライターとして動物に関する様々な記事の執筆を行う。
著書「ペットロスで悩んだときに読んでほしい愛犬の死がきっかけで平凡主婦がペットロスカウンセラーとなって起業した話: 「意外」と驚かれるペットロスとの向き合い方 (ラポールブックス)

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