猫が一日中寝るのは主に狩猟本能に由来
気がつくと体を横たえて目を閉じている猫。そんなに寝ていて大丈夫?と心配になってしまいます。猫がずっと寝ているのには3つのワケがあります。
1.狩りのためにエネルギーを温存するため
猫が人間に飼われはじめたのは約9500年前ですが、常に家の中で暮らし、1日の食事すべてを飼い主から提供されるようになったのは最近のこと。
それまでは飼われていたというよりは、穀物庫のネズミ捕りとして猫は自分で狩りをする生活を送っていました。そのため、狩りに備えた習性は今も変わっていません。
狩りには多くのエネルギーを使います。たとえそれがおもちゃでも「狙い」「追いかけ」「飛びつく」ために戦闘態勢に入ります。この興奮は短時間に多くのエネルギーを消費してしまうため、狩り以外の時間はゴロゴロしてエネルギーをおさえておく必要があるのです。
2.活動時間が明け方と日没直後に偏っているため
狩りの時間は、おもに明け方や日没直後の周囲が薄暗いときに集中しています。夜中に活動する夜行性とは異なり、薄明薄暮性(はくめいはくぼせい)と呼ばれます。これは獲物になる小動物が巣穴から起き出す時間で、狩りの成功率を高めるためです。
逆に、獲物が巣穴の奥や外を走り回っているような時間帯は、狩りをしても効率が悪いので、その間は休んでいるというワケなのです。
3.安全な環境であることを理解しているため
自然界にいる猫は外敵から身を守るため、たびたび起きて場所を移動する必要がありますが、一方、家の中で飼われている飼い猫は敵から襲われる心配がないので、長時間同じところで寝ていても問題ありません。したがって、一日中寝ていることが可能になったのです。
本当に眠っているわけではない
猫の睡眠パターンは、数十分の睡眠と覚醒を一日に何度も繰り返すといわれています。
成猫の睡眠時間は、平均で15時間ほどです。寝ているうちの多くの時間は、眠りの浅いレム睡眠です。寝ていても何か物音がすると耳を動かしたり、パッと目を開けたりするのは、いざというときに備えて仮眠の状態が保たれているからです。
代わりに猫の眠りが深いときは、呼んでも起きないでしょう。このノンレム睡眠は、筋肉や骨を作り、免疫力を上げるといわれます。
子猫は最大で20時間ほど寝るといわれるのは、体を作るためにたくさんノンレム睡眠に入る必要があるためです。成長するにつれてノンレム睡眠の時間を含めた睡眠時間は少しずつ減少していきます。
高齢猫は、エネルギー消費量が減少するため横になる時間が長くなりますが、睡眠時間は若い成猫とあまり変わりません。その代わり、子猫のようにノンレム睡眠が長くなります。
寝すぎている猫が心配になったら
猫は私たち人間と睡眠パターンが異なることから、一日中寝ていることは特に問題はありません。しかし、普段の睡眠パターンが大きく変化したときには注意する必要があります。
考えられるポイントは、季節(気温)の変化、病気、痛みなどです。年齢によっては、食欲の有無や食いつきは、健康管理をするうえでのバロメーターです。
寒いとき、病気や痛みがある時には寝ている時間が長くなります。起きているときの顔つきや食事の様子を観察しましょう。起きているのに動かない、反応しない、食べない、隠れようとするような場合は病気の恐れもあります。
逆にあまり寝なくなった場合、甲状腺機能亢進症に注意が必要です。甲状腺機能亢進症は、高齢になると発症しやすくなります。活発になりすぎて睡眠時間が減少、大きな声で鳴く、多飲多尿、体重減少などの症状があらわれます。
もし気になる症状がある場合は、元気そうに見えても早めに動物病院を受診しましょう。
まとめ
自然界で生きてきた習性から、猫は一日の大半を寝て過ごすようになりました。本来の狩猟本能から、エネルギーを温存や活動時間による理由、そして飼い猫は安全な場所で暮らしているという点が挙げられます。
一見するとずっと眠っているように見えますが、実は数十分ごとに睡眠と覚醒を繰り返しています。気持ちよさそうに寝ていても、物音ですぐに起きるのは眠りが浅いからなのです。
あまりにも猫が寝すぎている場合、体の具合が悪い場合があります。食欲や普段の活動量との比較、呼び声に対する反応などの点を注意して観察しましょう。もし不安な点があれば、動物病院でみてもらうことをおすすめします。