1.伸びやかな動きを妨げないため
猫のお腹のたるみは肥満が原因なのではなく、実は皮であることも多いです。もちろんぽっちゃりな猫であれば脂肪でたるんでいる場合もありますが、標準体型の猫なら、皮がたるたるしていると考えてよいでしょう。
このたるみを「プライモーディアルポーチ」と言います。日本では、通称「ルーズスキン」と呼ばれているようです。
なぜこのたるみが猫のお腹にあるのかという理由には諸説あり、はっきりしたことは分かっていません。ひとつの理由として、猫のしなやかで伸びやかな動きを妨げないため、と考えられています。
ご存知のように、猫は変幻自在に体の形を変えることができます。まるで液体のように感じる場合もあるでしょう。胴体を伸ばすと、びよ〜んとどこまででも伸びてしまいそうです。
また、ジャンプしたり全速力で走ったり、体を伸び縮みさせて動くこともあります。そんなとき、皮膚が足らずに突っ張ってしまうと、自由な動きが邪魔されてしまいますが、たるみがあれば体をびよ〜んと問題なく伸ばせます。猫のお腹のたるみは、そのために存在していると考えられているのです。
2.たらふく食べても大丈夫なように
野生下の猫は、いつでも食べ物があるわけではありません。獲物を獲得したときに、たらふく食べておく必要があるわけです。しかし、お腹の皮がシュッと引き締まった状態だと、さほど量が入りません。
つまり、お腹にたるみがあれば、満腹になるまでたらふく食べても問題なく入るというわけです。
ただし、猫よりもたくさん食べると思われる犬にはたるみがないため、この理由はあまり信憑性があるとはいえないかもしれません。
3.急所を守る
猫の急所は「お腹」です。その理由は、大事な内臓が詰まっているのにも関わらず、骨などで守られていない部分だからです。もし敵の鋭い歯でガブっとやられてしまったら、命を落とすほどの大ダメージをくらってしまうでしょう。
特に野生下では、いつ敵に遭遇するか分かりません。奇襲に遭い、攻撃されてしまうかもしれないのです。
そんなとき、お腹にたるみがあれば、万が一お腹をガブッとやられても内臓にまでは達しない可能性があります。敵からすれば皮を噛んだだけで、その猫にダメージは与えられないわけなのです。
すなわちあのお腹のたるみは、だらしないからたるたるしているのではなく、必死で猫の命を守っていると考えられています。
4.保温するため
もし機会があれば、猫のたるみを触らせてもらってください。余談ですが筆者は、あのなんともいえない感触が、猫の体の中で一番好きです。ただ、お腹を触られるのを嫌がる猫もいるので、触らせてもらうときは様子を見ながら行ってください。
触れると意外に、厚い皮なのが分かります。個体差はあるでしょうが、ペラッペラの薄い皮ではありません。そのため、大切な体温を保温するためにあるのではないか、といわれています。
いわば、腹巻のような役割を果たしているわけです。夏はちょっと暑そうですが、寒い冬には大活躍してくれるでしょう。
お腹がたるみやすい猫の特徴とは?
お腹のたるみは、全ての猫が同じ大きさではありません。あまり目立たない猫もいますし、立派なたるみがある猫もいます。子猫にはなく、成長する間に徐々に形成されていくのです。
また、お腹がたるみ始める時期にも個体差があるようです。どのくらいたるむかに、性差や体型はあまり関係がないとか。
野生味あふれる遺伝子を持っている猫にできやすい、ともいわれています。猫種では、アメリカンショートヘア、ベンガル、エジプシャンマウ、ピクシーボブなどが挙げられますが、挙げた猫種や他の猫種でもたるみの生じやすさは個体差によるものであるため、この説の信ぴょう性も証明しづらいと言えるでしょう。
たるみがキャットショーでの評価対象になっている場合もあるそうです。
まとめ
知られざる猫のお腹のたるみ、なかなか奥深かったと思います。筆者はあの感触が本当に好きなのですが、触ろうとしても大抵嫌がられるので、半分まぼろしの触感です。
たるみがあるからといっても脂肪がなければ、太っているわけではないですし、問題は全くありません。大切な愛猫の一部分なので、嫌がられない程度にたっぷり愛でてあげてください。