猫の「糖尿病」とは
膵臓から分泌されるインスリンは、血糖値を一定に保つ働きがあります。
猫の糖尿病は、分泌されるインスリンの量が低下したり、インスリンが分泌されているのに身体が反応しなかったりして、血糖値が異常に高くなると共に細胞へのエネルギー供給が正常に行われず全身での代謝に様々な異常をきたす病気です。
猫の「糖尿病」の症状
ではここからは、猫の「糖尿病」の症状について解説します。猫の糖尿病の症状はいくつかありますが、今回は以下の4つの症状や病態について解説します。
1.多飲多尿
猫が高血糖になると、血液中の余分な糖が尿中に出ていきます。その時、血液から水分も出ていってしまうため、尿の量が増えるのです。
さらに、尿の量が増えると自然と体が水分を補おうとするので、水を飲む量が増えます。
2.食べているのに痩せる
糖尿病になると、血液中から細胞へ糖が取り込まれなくなります。すると、身体はエネルギー不足状態となり、猫がやせてきます。
しかし同時に、エネルギー不足である身体は栄養をもっと摂らなきゃと思い、よく食べるようになります。この結果、「よく食べるのにやせていく」という症状が見られます。
ただし、肥満の猫では痩せていっていることに気付きにくい場合もありますし、どのように痩せていくかは猫によって違います。
3.ケトアシドーシスが起きる
糖尿病になると糖をエネルギーとして使えない状態になるため、身体は脂肪からもエネルギーを作り出そうとします。その過程で、「ケトン体」というものが作られます。ケトアシドーシスとは、このケトン体が増えて身体が酸性に傾いた状態のことをいいます。
具体的には、食欲不振、嘔吐、ぐったりするなどの症状が見られ、重度の脱水が起こります。重症になると意識が低下したりショック状態になり、命に関わります。そのため、ケトアシドーシスになっている場合は、すぐに治療が必要です。
猫が糖尿病だと分かった時にはすでにケトアシドーシスが起きていたり、治っても再発することがあります。
4.かかとを床につけて歩く
健康な猫は通常、人のかかとにあたる部分をあげて歩いていますが、高血糖の状態が続くと末梢神経に障害が生じてかかとを床につけて歩いたり、ふらついて歩いたりします。高い所へのジャンプが苦手になることもあります。
神経障害による症状は、血糖値が安定すると元に戻ります。
猫の「糖尿病」の予防方法
様々な合併症を起こしたり命にかかわることもある「糖尿病」は、出来れば予防したいですよね。
そこでここからは、愛猫に糖尿病で辛い思いをさせないための予防方法について解説します。糖尿病を完全に予防できる方法はありませんが、肥満にさせないことと糖尿病を引き起こすことがある膵炎にできるだけならない生活をさせることが予防のポイントとなります。
適切な食事
猫には、「高タンパク質」「低炭水化物」の食事が必要です。
そもそも猫は肉食動物なので、食事には多くのタンパク質が必要です。炭水化物も一定程度は消化してエネルギー源として利用できますが、炭水化物が多すぎると高血糖になりやすくなります。
また、大量の脂肪を摂取すると膵炎になりやすくなります。脂肪分の多い食べ物を猫に与えたり盗み食いされたりして急性膵炎を起こすことがあります。急性膵炎から慢性膵炎になったり糖尿病を引き起こしたりすることがあるため、猫に脂肪分の多い人間の食べ物を与えることは絶対にやめましょう。
適正体重の維持
『肥満の猫は糖尿病になりやすい』と言われています。肥満の猫はインスリンの効きが悪くなり、糖尿病になりやすいのです。
適正な食事量を守り、運動をさせて肥満にならないようにすることが必要です。
ストレスの少ない生活
長期的なストレスは、糖尿病を引き起こすかもしれないと言われています。
猫は健康な場合でも、ストレスを感じたり興奮したりすると、一時的に血糖値が上がります。ストレスの原因が取り除かれたり興奮が落ち着けば血糖値は下がりますが、猫は一旦上がってしまった血糖値を元に戻すのは苦手です。そのため、重度のストレスが長期間続くと糖尿病が引き起こされる可能性があるそうです。
猫がのぼれる高い場所、隠れられる場所、きれいなトイレ、無理に猫に構わないことなど、猫がストレスを感じにくくなる環境を用意しましょう。
まとめ
猫の「糖尿病」では、初期の頃は症状が見られない場合もありますが、水を飲む量と尿の量が増える、食欲が増すなどの分かりやすい症状がよく見られます。
病気が進行すると、様々な合併症を引き起こしますので注意が必要です。
食事内容や体重管理、ストレス対策など、できることは行って、愛猫を糖尿病を含む様々な病気からできるだけ守ってあげましょう。