猫が『分離不安症』になったら…原因と5つの改善策

猫が『分離不安症』になったら…原因と5つの改善策

猫にも起こり得る「分離不安症」。その原因は一体なんなのでしょうか。もしも愛猫の身に起こってしまったら、適切に対応できるでしょうか。今回は、猫が「分離不安症」になる主な原因と改善策を紹介いたします。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

猫の「分離不安症」の原因

鳴く猫

猫の「分離不安症」とは、飼い主さんと離れて過ごすことに強いストレスを感じる結果、飼い主さんが困る行動をしたり心身に不調を来す状態のことです。

飼い主さんが困る行動には「大声で鳴く」「走り回ったり噛んだりして物を壊す」「トイレ以外での排泄」などがあり、ストレスによって現れる猫自身の心身の不調には「過剰なグルーミングをして脱毛したり皮膚炎になったりする」などがあります。

では、その原因は一体何なのでしょうか。

元々の性格

何歳の猫でも分離不安症になる可能性はありますが、3~5歳までに発症した場合には、元々の性格が大きく関与しているのだろうと考えられます。

特に甘えん坊な性格で、人と一緒にいるのが大好き、飼い主さんが家にいる時は後をついて回るような性格な猫は、安心してひとりで過ごす時間を持たせる飼い方をしないと分離不安症になる可能性が高まるでしょう。

また、生後2~9週の社会化期の過ごし方は、不安を抱きやすい性格になるかどうかに影響します。

環境の変化

環境の変化も分離不安症を発症させる要因のひとつになることがあります。例えば飼い主さんの結婚や出産、引越し、家族や同居動物との死別などの大きなイベントです。

飼い主さんに過度に依存する生活環境

飼い主さんが一人暮らしで相性の良い同居動物もいない場合や、退屈な留守番時間が長い猫、四六時中飼い主さんのそばについて回って過ごしている猫などは、飼い主さんに精神的に過度に依存したり普段からストレスを抱えて不安を抱きやすくなったりします。

5つの改善策

本棚の中で眠る猫

分離不安症を抱えた猫と暮らす飼い主さんはもちろん大変ですが、猫自身も日々大きなストレスを抱えています。できるだけ早く症状を改善したりストレスを減らしてあげる必要があります。

ここからは、分離不安症を疑った時にできる改善策を5つ紹介していきます。

1.落ち着いて休める場所を用意する

人や他の動物達に邪魔されることなく安心して寛げる場所を用意してあげましょう。

愛猫が好む場所で、安全に過ごすことができればどこでも構いません (棚の上、ベッドの下など) 。安心できる空間を作ってあげることは、猫と暮らす上で必須です。

引越しで心機一転したい場合や新生活をスタートさせる際は、家具も新しくしたいかもしれませんが、「猫の生活用品も…」というわけにはいきません。環境が大きく変わることで猫にとって大きなストレスとなる引越しでは、お気に入りのものは継続して使わせてあげてください。

猫のトイレやベッドなどを新調したい場合は、引越し前に用意して使わせてあげましょう。ある程度慣れた状態で新居に持ち込むとトラブルを最低限にすることができます。

2.愛猫がひとりで過ごす時間を持つ

飼い主さんが家にいる時でも、愛猫がひとりで落ち着いて過ごす時間を普段から持ちましょう。飼い主さんとは違う部屋で過ごさせたり、ケージを活用したりしましょう。

飼い主さんの姿が見えなくなると鳴いたり、飼い主さんのあとをついて回るような甘えん坊な猫では特に重要なことです。飼い主さんが家にいる時は常にそばにいさせ、でかける時だけ一緒にいられなくなるようでは、飼い主さんと離れることが猫にとって大きな不安になりやすくなります。

猫トイレなどを新調する場合は、引越し前に用意して使わせてあげましょう。ある程度慣れた状態で新居に持ち込むとトラブルが少なくなります。

3.愛猫と十分遊ぶ、ひとりで遊べるおもちゃを用意してあげる

普段から愛猫と十分遊んであげることも重要です。十分遊んで心身共に満足していれば、お留守番の時も落ち着いて休んでくれやすくなります。

ひとりで遊べるおもちゃを用意してあげて、普段から退屈する時間をできるだけなくしたりお留守番の時も遊べるようにしておくのも良いことです

また、猫はルーティーンに則った生活を好む動物です。毎日決まった時間帯に遊んであげると、余計な不安を抱きにくくなるかもしれません。

4.「出かけるふり」を繰り返す

既に飼い主さんが出かけることに何かしらの反応を示している場合には、「出かけるふり」の反復をすると良いでしょう。

鞄を持って靴を履くだけで出かけずに玄関から部屋に戻る、鍵を持つだけで出かけない、上着を着るだけで出かけない、などを繰り返します。すると、それまでは飼い主さんが出かける合図になっていて猫の不安につながっていた行動も、何の意味もない行動へと変わっていきます。

また、実際に玄関から外に出てもすぐに帰ってくることを繰り返すことで、「飼い主さんは出かけても必ず戻ってくる」と猫が認識するようになるでしょう。

5.獣医さんに相談する

ご家庭でできることをやり尽くしても改善しない場合は、獣医さんに相談してみましょう。

診察の中でまだ試せていない方法が見つかることもありますし、猫の行動学に基づいたアドバイスができる病院もあります。

状況に応じて、不安を和らげる薬(抗不安薬やサプリメント)を処方してもらえることもあります。

まとめ

不安げな顔で抱っこされる子猫

分離不安症は人間や犬に多い印象がありましたが、実は猫にも見られます。その主な原因は、「性格」「環境の変化」「生活環境」だと考えられます。

安心して休めるお気に入りの場所を用意してあげる、普段からひとりで過ごす時間を持たせる、十分に遊んであげる、飼い主さんが出かけることを何とも思わないような練習をする、などが分離不安症の予防策や改善策になります。

その他の原因に対するアプローチとしては、縄張りを整える・遊ぶ時間帯をある程度決めてしまう・出かけるふりをするなどが挙げられます。

これらを試しても改善しない場合は、獣医さんに相談してみてください。特に猫の行動学に詳しい獣医さんなら、専門的なアドバイスがもらえたり適切な薬を処方してもらえるでしょう。

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