猫の体を蝕む「悪性腫瘍」とは
実は、猫も癌を患うことがあります。今回は、代表的な悪性腫瘍を3つ紹介いたします。
飼い主として知っておくべき予防法を合わせて紹介していきますので、いざという時に備えてぜひ覚えておきましょう。
1.乳腺腫瘍
この腫瘍はホルモンが関与する病気です。猫の場合約8割は悪性になります。
ただし、生後6ヶ月程度、初めての発情を迎える前に不妊・去勢手術を受けることで予防することが可能です。
将来的に繁殖を望まない場合は前向きに検討してみてください。不安なことや、気になることがあれば獣医さんに相談してみましょう。
2.リンパ腫
リンパ腫は、発生する部位によって異なる症状が現れます。
猫に発症が多いのは消化管のリンパ腫で、慢性的な嘔吐や下痢、便秘などを引き起こします。胃腸炎が長引いたり、薬が効かない場合は要注意です。
鼻腔内(鼻の中)リンパ腫も多くみられます。
また、猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している猫では、縦隔型リンパ腫がよく見られます。肩で息をする・食欲がない・急に痩せてきたなどの症状が特徴です。
リンパ腫に関しては、副流煙に晒される環境によって発症するリスクが上がるといわれています(非喫煙者家庭の2.4倍)。
喫煙者の飼い主さんは、猫を迎えたら禁煙するか、完全に分煙するように心がけてください。
3.扁平上皮癌
扁平上皮癌は、皮膚が薄い耳・まぶた・鼻の頭、口腔内であればくちびる・歯肉・舌・扁桃などの部位で多く見られます。
特に口の中にできた場合は口の中に違和感があるため、スムーズに食事が取れなくなります。不自然に食事をこぼす、食べたいのに食べられないような様子があれば診察を受けましょう。さらには涎が増えたりすることがあります。
また、扁平上皮癌は、予後があまりよくありません。転移するスピードは遅いのですが、特定の部位に対する浸潤度が高いという特徴を持っています。それだけに命を脅かす存在になるのです。
ちなみに効果的な予防法は確立されていません。ただ、完全室内飼育によってウイルス感染を予防する、日光に当たり過ぎないように注意することで皮膚を痛めるリスクを予防することができます。
猫が癌になる原因
こちらでは、猫の「悪性腫瘍」の一般的に考えられている原因について解説いたします。
愛猫の健康を守るために、悪性腫瘍の原因と考えられるものを知り、日々の愛猫の生活でその知識を活用していく必要があります。
細胞の突然変異(エラー)
全ての生き物の体は細胞からできています。細胞は、細胞分裂によって新陳代謝を繰り返し、古いものから新しいものに置き換わることでその働きを維持しています。
ところが時々、細胞分裂が行われる過程でエラーが発生し、異常な遺伝子を持ったものが作られます。これが腫瘍細胞の原型です。
この誤った細胞が、異様な増え方をすると腫瘍となります。
活性酸素の増加
動物は皆、呼吸をすることで酸素を取り入れています。その約2%は、活性酸素という強力な酸素に変化します。これ自体は、細菌やウイルスを撃退するものなので悪者ではありません。
しかしその数が多くなると、正常な細胞や遺伝子を攻撃してしまいます。
細胞が錆び付くことでエラーが起こりやすくなり、結果的に腫瘍になりやすい環境にしてしまうのです。
老化や生活習慣病など
活性酸素は、老化や生活習慣の乱れによっても増えやすくなります。猫の場合は暴食が引き起こす肥満などが危険因子になるでしょう。
ストレスによる免疫力の低下
日々ストレスに晒されると、免疫力が低下します。抵抗力が弱い体内では活性酸素が増えやすく、誤作動を起こした細胞を修復する機能まで落ちています。
これは腫瘍細胞にとっては好条件であり、増殖しやすい環境になります。
感染症
猫白血病ウイルス感染症・猫免疫不全ウイルス感染症・猫伝染性腹膜炎(FIP)などの感染症は、悪性腫瘍を引き起こす要因の1つになります。
ホルモンの影響
猫の体内にも、男性ホルモンや女性ホルモンなどが存在します。これらが関与するタイプの悪性腫瘍も存在します。
ただし腫瘍を防ぐことはとても難しく予防法はありませんので、参考程度にしてください。
まとめ
今回は、猫に死を招く『悪性腫瘍』と知っておくべき予防法について解説いたしました。
悪性腫瘍の原因の一つとなりうる猫の老化を止めることはできませんが、食習慣を見直したり、ストレスを溜めない楽しい過ごし方を工夫することはできると思います。
猫が長生きできる時代になった今、病気の特徴を知り、適切な予防法があるものは取り入れていきたいですね。