1.肛門腺炎
「肛門腺」というのはその名の通り、肛門のすぐ近くにある腺のことです。大変匂いのキツイ「肛門腺液」を分泌する組織で、肛門腺液は相手の識別やマーキングに使われます。分泌された肛門腺液を貯めている袋が「肛門嚢」です。
肛門腺液がその通り道で詰まってしまったり、そこに細菌が感染したりすると炎症が起き、「肛門嚢(腺)炎」になる場合が。細菌感染の結果化膿すると、膿が肛門嚢の出口やその付近から出てくることがあります。
放置すると重症化し、次にご紹介する肛門嚢破裂を起こしてしまうことがあります。肛門周囲の腫れや赤み、お尻を気にしている様子があったら早めに動物病院を受診し、治療する必要があります。
2.肛門腺破裂
前出の「肛門嚢(腺)炎」と同様に、肛門腺液が正常に排出されずに肛門嚢に肛門腺液が溜まり過ぎたり、そこに炎症や細菌感染が起きたりすると、肛門嚢が破けてしまうことがあります。この状態が「肛門嚢破裂」です。肛門嚢が破裂すると、体液や膿、血液などが出てきます。肛門腺炎や肛門嚢破裂は、想像に難くないように痛みを伴いますので、元気がなくなってしまうことも。
またこれらは苦痛を感じる病気ですし、重症化したり何度も繰り返したりすると手術が必要になってしまうこともあるため、肛門腺液が詰まりやすい猫では、肛門腺が詰まらないように定期的に絞ってあげてください。猫がお尻をしょっちゅう舐めたり噛んだり、床にお尻をすりつけるなどしていたら、一度動物病院を受診するとよいでしょう。もし肛門腺液が溜まっている場合は、「肛門腺絞り」によって排出してくれ、自宅でのやり方も教えてもらえます。
3.子宮蓄膿症
「子宮蓄膿症」は猫では少ないといわれています。それは、猫が交尾後に排卵する生き物だから。つまり、人や犬のように交尾しなくても定期的に排卵する動物よりも、妊娠に必要な黄体ホルモンが妊娠していないのに出ることが少ないため、子宮蓄膿症にかかりにくいのです。
どういうことかというと…子宮蓄膿症は、子宮の中に細菌が入り込み膿を作るために起こる病気ですが、そこには妊娠に関わるホルモンが大きく影響しているのです。黄体ホルモンは妊娠できるように子宮内膜を厚くしたり、子宮頚部を緩めたり、免疫を低下させたりします。これらは受精や受精卵の着床が行われるために必要なことなのですが、妊娠しなかった場合には細菌に感染しやすくなるというデメリットになるのです。
排卵はしたけれども妊娠しなかった場合、黄体ホルモンの作用によって子宮の内膜が厚い状態が続き、「子宮内膜炎」や「子宮内膜過形成」となります。この状態は細菌が増殖しやすい環境であることから、「子宮蓄膿症」になってしまうことがあるのです。子宮蓄膿症になると、膿が陰部から出てくる場合も出てこない場合もあります。
膿が出てくる場合、猫の陰部と肛門は近いため、肛門から何か出てきたのかと見間違えてしまいがちです。また、出血と勘違いしてしまう場合もあるでしょう。また、病気がかなり進まないと飼い主さんが気付ける症状が現れないこともあります。
4.腸の異常(下痢)
腸に異常が起こると、下痢になることがあります。下痢の時は肛門周りの皮膚や毛が汚れることもあり、水っぽい下痢だと何か液体がついているように見えることもあるでしょう。便そのものではなく、粘液がついていることもあるかもしれません。大腸に異常があると、便の表面に白いゼリーのような粘液が付いている、「粘液便」という便が出やすくなります。
便に異常があったらそれを持参したり写真を撮って動物病院を受診してください。
まとめ
突然愛猫のおしりから、液体が出てきたらビックリしますよね。原因はご紹介したようにさまざま考えられますので、何か変わったことがあれば動物病院を受診しましょう。