人間も薬用として利用しているまたたび
またたびとは、マタタビ科マタタビ属の落葉つる性植物で、日本各地の山地に自生しています。つるがとても丈夫なため、つり橋や筏を作る縄に使えるほどだといわれています。
通常のまたたびの実はツルッとしたどんぐり型ですが、花が咲く前の5月頃に蕾の中にマタタビミタマバエが産卵すると、ボコボコとしたコブのような実になります。この状態の実は虫えい果と呼ばれます。
虫えい果は、古くから乾燥させて木天蓼(もくてんりょう)という名前の人間用の生薬として、腰痛、神経痛、リウマチ、浮腫み、冷え性、不眠症といった症状の改善目的で利用されてきました。
具体的な木天蓼の効能・効果を挙げると下記になります。
- 鎮痛
- 血行促進
- 滋養強壮
- 利尿
- 消炎
- 健胃作用 など
またたびの猫への効果
人間用の木天蓼と同じように、虫えい果を乾燥させることで、猫に多幸感を引き起こすことも、昔から知られています。それは「猫にまたたび」ということわざにもよく表れています。
またたびには幹、枝、葉、実などがありますが、猫に最も効果があるのは虫えい果を乾燥させて粉末にした「またたびパウダー」だといわれています。初めて猫にまたたびパウダーを与えた時にあまりにも陶酔してしまうと、「これは危険だ!」と思われるかもしれません。
しかし、またたびに対する反応の強さにはかなりの個体差があるため、そこまで反応しない猫もいるでしょう。また、猫が陶酔している状態の時にも呼吸数や血圧が上がったりすることもなく、危険性や中毒性はないといわれています。
これまでは、虫えい果に多く含まれるマタタビラクトンやアクチニジンといった成分が多幸感・陶酔感を引き起こしていると考えられていましたが、2021年に発表された日英の研究グループの調査では、猫はマタタビラクトンではなく、ネペタラクトールに惹きつけられている事がわかりました。
この調査によると、猫がネペタラクトールを取り込むことでμオピオイド系と呼ばれる神経系が活発になり、実際に幸せに浸っていることが確かめられました。μオピオイド系は多幸感や鎮痛を制御する神経系で、嗅覚で活性化できることもわかりました。
さらに、猫がまたたびを嗅いで床に転がるのはまたたびが床にあるときだけで、意図的にネペタラクトールの匂いのもとを顔に擦り付けていることがわかりました。そしてその理由が、寄生虫やウイルスなどを媒介する蚊を避けるためだということが分かったのです。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S258900422200726X?via%3Dihub
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2022/06/post-274.html
新旧の研究結果等から、またたびが猫に与える効能・効果には下記があるといわれています。
- ストレス解消
- 食欲増進
- 老化防止
- しつけへの利用効果
- 蚊よけ
猫にまたたびを与える時の注意点
ではここからは、猫にまたたびを与えるときの注意点について解説します。
1.たくさんあげすぎない
またたび自体に猫への危険性はありませんが、反応に関してかなり個体差がありますし、興奮しすぎて暴れてしまう可能性も考えられます。
1回に付き0.5g以内(耳かき1杯程度)が適量だといわれていますが、最初はごく少量から初めて、様子を見ながら調整してください。
2.幼齢猫・極高齢猫・病弱な猫には与えない
与え始める年齢は、嗅覚と神経系が十分に成長するまで待った方が良いといわれています。個体差がありますが、生後6ヵ月齢〜1歳頃が適当でしょう。
また、15歳以上の極高齢の猫にもあまり与えない方が良いといわれています。
3.連続して与えない
毎日のように与えていると、次第に効き目が薄れてくるといわれています。
毎日ではなく、ご褒美などとしてたまに与えるようにすると良いでしょう。
4.与えている最中は目を離さない
またたびの実そのものや、またたびパウダーを中に仕込んだおもちゃなどを与える時には、必ず目を離さないようにしましょう。
猫が興奮して噛み壊す、丸呑みする等で、喉や胃腸に詰まらせて開腹手術が必要になったというケースもないわけではありません。
またたびに反応しない?
アメリカ・テキサス州で100頭の猫を対象に2016年に行われた調査では、またたび、イヌハッカ(キャットニップ)、アカバナヒョウタンボク、セイヨウカノコソウの4種の植物に対する猫の反応率は、79%、68%、53%、47%という結果でした。つまり、すべての猫がまたたびに反応するわけではありません。
ただし、日本でも手に入れやすいキャットニップにもまたたびと似たような効果があるとされています。またたびには反応しない猫に対しても、キャットニップで代用できる可能性がありますので、愛猫がまたたびに反応しない場合は試してみるのも良いでしょう。
まとめ
筆者が初めて愛猫にまたたびパウダーを嗅がせた時には、3頭のうち1頭が非常に陶酔し、自分のよだれの海となった床の上で体をくねらせ大変な状態になりました。それを見て怖くなったのですが、市販されていた小袋をそのまま1つ分与えてしまったのが悪かったようです。
しばらく陶酔状態は続きましたが、その後はケロッと元に戻り「まるで酔っ払いのようだな」と思ったものです。とにかく、最初はごく少量から始め、その猫なりの適量を見つけてあげるのが良いと思います。
ちなみに我が家では、食欲が落ちている時、新しい爪とぎ器を購入したときなどに利用していました。ウイルスや寄生虫を媒介する蚊を避ける効果があるのであれば、もう少し積極的に活用しても良かったかなと思っています。
上記の注意点を参考にしながら、愛猫に合わせて上手な使い方を工夫してみてください。