猫も「うつ病」になることがある
うつ病は人間特有のものではなく、猫や犬にも起こり得る病です。
人間のうつ病もその発症メカニズムについて解明されていない点は多く、猫については更に解明されていないことがほとんどです。
ここでは猫で認められている精神障害について、「うつ病」と表現してご紹介していきます。
うつ病を「心の風邪」と表現することがありますが、「シンプルな治療で治るもの」の例えではありません。正しくは「風邪のように身近な存在で、些細なことがきっかけで起こる」という意味になります。
猫の場合は、何を引き金にうつ病を発症してしまうのでしょうか?よくある例を紹介いたします。
環境の変化
猫は変化を嫌う動物です。例えば引越しによる環境の変化や、飼い主さんのライフスタイルの変化などが響いてしまいます。
また、動物でも人間でも新しく家族が増えることは、猫にとって大きな環境変化となります。
同居動物や大切な人との別れ
親しかった仲間との死別や、人間家族との別れも大きな打撃になります。人間家族の場合は、必ずしも死別というわけではありません。
例えば、実家を巣立つ家族がいるなどの別れも、猫にとっては辛いものになります。特に懐いていた相手が離れてしまう場合には、しばらくの間猫への心配が必要になるでしょう。
刺激が少ない
過度な刺激がストレスになる一方で、全く刺激のない生活も脳の活動を低下させてしまいます。
窓越しに外の空気を吸う・飼い主さんと遊ぶ・高い場所から周囲を観察するなどの適度な刺激が必要なのです。
見逃さないで!初期症状
猫がうつ病になる要因も、やはり小さなことがきっかけでしたね。さらに、身近な病気という理由も伝わったでしょう。
次は、見逃さないでほしい初期症状を5つ紹介いたします。
1.ぼーっとすることが多い
うつ病によって脳の活動が低下すると、ぼーっとした印象が増えます。気力がなくなることで、徐々に猫特有のルーティーンもこなせなくなってしまいます。
2.毛繕いや爪研ぎをしなくなる
猫は毛繕いをすることでにおいを消し、身なりを整えます。また、爪を研ぐことで狩りの準備をします。これらは猫が生きるうえで大切な習慣です。
人間がうつ病になると身なりを整えるどころではなくなるように、猫にも同じような症状が現れます。
3.食欲がなくなる
うつ病は、食べる気力すらも奪ってしまいます。「~したい」という欲求が失せ、何もできない状態に陥るのです。
4.好きなものに反応しなくなる
うつ病には、無気力の他に無関心という症状があります。趣味を楽しいと感じなくなる(飽きるとは別物)と同様に、猫も好きだったものに全く関心を示さなくなります。
遊びはもちろん、おやつに目がない猫が放心状態で無反応になることも危険信号です。
5.飼い主さんを執拗に追い回す
以前と比べ、後追いが酷くなる猫もいます。これは心がざわついて落ち着かず、言い知れぬ不安があるからです。
治療のために実践してほしいこと
猫のうつ病はどのように治療していくのでしょうか?回復に向けてやってほしいことを紹介いたします。
体の病気との鑑別をする
人間の場合もそうですが、うつ病でみられる症状が猫に起きていたからといって、必ずしもうつ病にかかっているとは限りません。他の病気が原因で似たような症状が起きている可能性があるのです。
まずは動物病院に行き、身体的な病気がないかチェックを受けましょう。病気が潜んでいた場合、そちらの治療を受けることで改善することがあります。獣医さんの指示を仰ぎながら、治療をしていきましょう。
ストレスの解消と発散
猫も人も、完全にストレスをゼロにすることは困難です。ストレスの原因で除去できるものはなるべく取り除き、自分に合った方法でストレス発散をしていく等の方法も取り入れる必要があります。
猫の場合は、落ち着ける環境を整える、本能が満たせるようにする、過干渉を避け寄り添ってあげる(さり気なくそばにいる)などが有効です。
特に快方に向かって来たら、本来の狩猟本能を生かした遊びを取り入れて再発を予防していきましょう。
抗うつ薬を用いる
症状が酷い場合は、環境改善だけでは追いつかないことがあります。その場合は、猫も抗うつ薬を用いて回復を試みます。
日本国内で猫に認可されている抗うつ薬は少なく、どの病院でも取り扱いがあるわけではありません。
この治療法は少しハードルが高いように思えますが、適切なタイミングで薬を使うことで、その他の方法が良い方向に向かうことがあります。
逆に、環境や生活の改善を行わずに薬だけに頼っても、病気は良くなりません。猫の精神障害には飼い主さんの長期的な協力が必須なのです。
まとめ
猫も人間のように、うつ病を発症することがあります。背景は異なりますが、大きな変化やストレスなどの共通点も多く見られます。
初期症状や治療法においても重なる部分がありましたね。環境改善を試みつつ、回復期には予防に向けたアクションを取り入れることが大切です。
猫も人間も、心や脳が活発で健康なのは当たり前なことではなく、状況や環境によっては不調をきたすこともあります。
特に猫の場合は言葉で不調を伝えられないので、日頃からよく観察してあげましょう。