猫パルボウイルスとは?
数年前、都内のとある猫カフェで蔓延してしまった猫パルボウイルス。多くの猫が犠牲となり、改めてその恐ろしさと予防の重要性を思い知りましたよね。
そもそも猫パルボウイルスとは一体どのようなウイルスなのでしょうか?
生命力が強いウィルス
このウイルスは環境中でも安定性が高く、感染力を保って数年間生き延びることができてしまうウイルスです。
アルコール消毒は効かず、グルタルアルデヒド系消毒薬や塩素系消毒薬が有効です。
猫汎白血球減少症を引き起こす
次の項目で詳しく紹介しますが、猫パルボウイルスは猫汎白血球減少症を引き起こすウイルスです。
ちなみに犬のパルボウイルスも存在しますが、猫のウイルスとはタイプが異なります。猫パルボウイルスは犬に感染するという研究結果もありますが、犬に病気を起こすことはありません。
両者ともに人に感染することはないものの、人間がウイルスを拡げてしまうことがあるので注意が必要です。
とにかく感染力が強い!!
このウイルス最大の特徴は、とにかく感染力が強いことです。その背景には、このウイルスは猫の体の外でも長く生き続けられることが関係しています。環境中で長く生き続けられることによって、以下のものなどが感染源となってしまいます。
- 感染猫の吐瀉物、糞便
- 共有の食器やケージ、リネン類
- 感染猫の被毛
- 感染猫に触れた人の手や衣類
多頭飼育の場合、1匹でも感染猫が出てしまうと感染拡大の恐れがあります。隔離することはもちろんのこと、お世話をする我々も細心の注意を払って行動しなければ媒介者となってしまいます。
致死率が高い!!
抗体を持たない子猫が感染すると、高い確率で死に至ります。猫カフェで命を落とした猫も子猫だったそうです。
猫パルボウイルス感染症の症状は?
猫パルボウイルス感染症は猫汎白血球減少症や猫伝染性腸炎、猫ジステンパーなどとも呼ばれます。発症すると、どのような症状が現れるのでしょうか?
1.発熱・食欲不振(初期症状)
発熱や食欲不振が初期の症状になります。近くに感染猫がいない場合は、これだけで猫パルボウイルスへの感染を強く疑うことは難しいでしょう。
2.嘔吐や下痢
この病気で最も特徴的なのは、激しい嘔吐や下痢などの消化器症状です。そして、それに伴ってご飯を全く食べなくなったり脱水症状も起こります。
胆汁性嘔吐(黄緑色の液体を吐く)や、血便が見られることもあります。猫カフェの子猫達も、最期は下血が酷かったというお話もあるそうです。
3.白血球が激減する
病名にもあるように、白血球が大幅に減少します。
白血球は細菌やウイルスと戦う戦闘員です。ウイルスの感染によって白血球が正常に作られなくなったり、ウイルスとの戦闘で白血球が激減して、敗血症を引き起こすこともあります。
4.妊娠猫が感染すると流産のリスクも
妊娠中の猫が感染すると、お腹の赤ちゃんの発育に悪影響を及ぼします。流産や死産のリスクがあるのです。また、感染時期によっては生まれた子猫に小脳障害が見られることもあります。
5.無症状の場合も
健康な成猫やワクチン接種済みで十分な免疫力のある猫が感染した場合、無症状の場合がほとんどです。
予防すれば大丈夫!!
猫パルボウイルスは読むだけで鳥肌が立ちそうなウイルスですが、しっかりと予防すれば大丈夫!愛猫を守るためにできることを紹介いたします。
ワクチン接種を受けよう
生後間もない子猫は初乳から免疫を得ています。恐ろしいのは生後2ヶ月頃の子猫です。この時期には初乳から得た免疫が切れ、無防備の状態になります。また、初乳から得た免疫が切れる時期には大きな個体差があります。
ここで鍵を握るのがワクチンです。一般的な飼い猫に接種する3種混合ワクチンの中には、猫パルボウイルスに対するものが含まれています。
室内を清潔に
こまめに室内を掃除して、清潔にしておきましょう。猫用トイレや食器も綺麗にしてあげましょう。一般的な掃除では猫バルボウイルスを殺すことはできませんが、清潔な環境を整えてあげることによって猫の体へのストレスが減り、免疫力アップにつながります。
無闇に野良猫と絡まない
家に猫がいるご家庭では、無闇に野良猫と関わりすぎないことも大切です。地域猫活動や保護猫活動などに参加している場合は、活動が終わったら衣類や靴を替え、活動後や帰宅時に念入りに手洗いをしてから愛猫と触れ合うようにしましょう。
猫好きのお子様がいる場合は、帰宅時に必ず手を洗ってから愛猫と遊ぶようにも習慣づけてください。
まとめ
実は特効薬がない猫パルボウイルス感染症。ワクチン未接種の幼い猫が感染すると死に至る可能性が高い恐ろしいウイルスです。その一方で、ワクチンの接種・手洗いの徹底・ウイルスに接触した可能性のある衣類や靴を家に持ち込まないなどの対策を行えば、それほど恐ろしい存在ではなくなります。
まずは飼い主さんが媒介者にならないこと、そしてワクチン接種などを通して愛猫を守ってあげてください。
万が一感染を疑った場合は、必ず事前に連絡してから動物病院に連れて行くようにしましょう。感染猫は別室で隔離し、感染猫や感染猫の分泌物に触れた物は廃棄するか塩素系漂白剤で消毒をし、他の猫に移らないように気をつけてください。