猫とスイカ
猫は完全肉食動物です。自然界で暮らす野生の猫たちは、獲物を捕まえて丸ごと食べ、そこから必要なすべての栄養分を吸収します。基本的に、人間のように穀物や野菜、果実を食べることはありません。そのため、植物をうまく消化する能力や、糖分の甘さを感じる味覚は発達していません。
にもかかわらず、美味しそうにスイカにかぶりつく猫達の動画がSNS上に数多くアップロードされています。信頼する飼い主さんが美味しそうに食べているのを見て興味を持ち、味はともかく、水分が補給できたりシャクシャクとした食感が気に入ったりしたのかもしれません。
実際にスイカの成分には、健康な猫にとって特別害になる要素はありません。水分を多く摂れることはメリットです。猫にとって有益な栄養素も含まれています。ただし、本来猫が口にすることのない食材ですから、当然与えるにあたってはいくつかの注意点もあります。
今回は、スイカを好む猫にスイカを食べさせるメリットや注意点をご紹介したいと思います。
猫にスイカを与えるメリット
普段、愛猫に良質な総合栄養食のキャットフードを与えているのであれば、特別にスイカを与える必要はありません。ただし、もし愛猫がスイカを好んで食べたがる場合は、以下のメリットを挙げることができます。
1.効率的な水分補給
文部科学省の食品成分データベースでスイカを検索すると、赤肉種も黄肉種も、生の可食部100gに対して、水分が89.6gと記載されています。つまり、約9割が水分ということです。
猫はあまり積極的に水を飲んでくれず、腎臓系の疾患に罹りやすいというのが飼主さんの悩みの種ですが、もし愛猫がスイカを好んで食べてくれるのであれば、夏の水分補給にはもってこいのおやつになるといえるでしょう。
2.高血圧予防や利尿作用
カリウムが豊富に含まれているのも、スイカの特徴の一つです。カリウムは、体内の過剰な塩分を排出してナトリウムとのバランスを保ち、血圧を安定させてくれる効果が期待できます。
また皮に近い部分には、アミノ酸の一種のシトルリンも豊富に含まれています。シトルリンは一酸化窒素を作り出し、血管を広げて血流を促し、血管を若々しく強くしなやかにする作用があるため、人では動脈硬化の予防にも役立つと考えられています。
さらに腎臓機能を助けて積極的におしっこを作り出す作用もあるため、カリウムとともに体内の余分なナトリウムや毒素の排出を促進してくれます。
3.抗酸化作用
赤肉腫のスイカには、ビタミンCや赤色を作り出しているカロテノイドの一つであるリコピンも豊富に含まれています。
これらの成分には抗酸化作用があります。抗酸化作用とは、体内の酸素が引き起こす有害な作用を抑制する作用のことです。これにより、老化や発がんのリスクが抑制されるといわれています。
猫にスイカを与える際の注意点
適量
スイカは主食としてではなく、あくまでもおやつとして与えてください。おやつの目安は、1日の総摂取カロリーの1割以内です。ご褒美など、スイカ以外のおやつも与える場合は、おやつ全てのカロリーが、1日の総摂取カロリーの1割以内に収まり、カロリーの過剰摂取とならないように調節してください。
体重4kgの避妊・去勢済みの猫に、おやつとしてスイカだけを与える場合を考えてみましょう。
1日に必要なエネルギー要求量の簡単な算出式は「(30×体重+70)×係数」で求められます。避妊・去勢済みの猫の場合の係数は1.2になりますので、この式に当てはめると、「(30×4+70)×1.2」となり、228kcalとなります。この内の1割、つまり22.8kcalはおやつとして与えられることになります。
前述の食品データベースでは、100gあたりのスイカのカロリー数は41kcalとなっていますので、与えられるスイカの量は56g程度ということになります。
ただし、スイカは水分が多いので与えすぎてしまうと下痢など逆に体調を悪くさせてしまいます。カロリーの計算上は正しくても与える場合はほんの少しにしてあげてください。
与える部分
猫には、種や皮をうまく消化できる能力がありません。また、実も中央部分は糖分が多くなります。愛猫に与える場合は、種と皮を取り除き、実の部分を食べさせるようにしてください。
なお、添加物を考慮して、加工品ではなく、必ず生のスイカを与えましょう。
アレルギー対策
どんな食材でも、アレルギーを起こす可能性を考慮しなくてはいけません。
初めて食べさせる時は、ごく少量のみを与えてしばらく様子を見る必要があります。大丈夫そうであれば、少しずつ適量まで量を増やしていけます。
腎臓に問題のある猫には与えない
カリウムやシトルリンが豊富であることはメリットなのですが、腎臓に問題のある猫にとってはデメリットになってしまいます。カリウムを腎臓で濾過できずに体内に蓄積させてしまい、それが原因で心臓にダメージを与えるリスクが高くなってしまうからです。
命に関わる状況を引き起こす可能性もありますので、腎臓に問題があったり心機能が落ちている猫には、与えないようにしましょう。
まとめ
猫には糖分の甘さを感じる味覚が発達していません。そのため、スイカを食べても甘みは感じません。しかし味ではなく、食感が気に入っているのか、猫の中には好んでスイカを食べる猫も少なくないようです。
スイカを食べることで、普段あまり水を飲んでくれない猫にも多くの水分を摂らせることができます。栄養成分としても、メリットになる要素も多いです。
愛猫の健康状態やアレルギーの有無を見極めた上で、適量を守っておやつとして与えるには、スイカは良い食材だといえるでしょう。