なぜ「ねこまんま」ではいけないのか
昭和の頃は、猫のご飯といえば「ねこまんま」でした。ねこまんまとは、白いご飯の上に削り節や味噌汁、食べ残した焼き魚などをかけたようなご飯です。
今考えると、炭水化物の消化能力が人間や犬に比べて低い猫に対して、炭水化物主体で猫には塩分の濃い味付けをし、ネギ類などの猫に禁忌な食材も含まれていておかしくない食事を与えていたことになります。
猫に最も必要なタンパク質も少な過ぎたはずです。当時の猫たちのほとんどが家の中と外を自由に行き来して暮らしていましたので、おそらく必要なタンパク質は外で自力で得ていたのでしょう。
人間は活動するためのエネルギーを炭水化物から得ていますので、食事の50〜65%を炭水化物にすることが目標だとされています。20種類のアミノ酸から構成されているタンパク質は、消化されたアミノ酸を体に必要な筋肉等のタンパク質に再構築するために使われます。
しかし完全肉食動物の猫は、タンパク質主体の食事を消化し、得たアミノ酸から体に必要なタンパク質を再構築し、残ったアミノ酸から活動するためのエネルギーを得ています。そのため、人間とは大分異なった栄養バランスの食事が必要となるのです。
猫を長生きさせる食生活で意識したいポイント
1.適切な栄養バランス
前述の通り、猫は人間と比べると炭水化物はほとんど必要がなく、代わりに大量のタンパク質を必要とします。つまり猫には、猫に最適な栄養バランスを満たした食事を与えなければいけないのです。
さらに、必要な栄養バランスは年齢や健康状態によっても変化します。つまり、猫には猫のために栄養設計された食事であることが大前提で、かつ愛猫の年齢や健康状態も考慮した食事を与えることが、長生きさせるためには欠かせないポイントになるのです。
2.適切なカロリーバランス
どんなに愛猫の年齢や健康状態に適した食事でも、少なすぎたり多すぎたりしては長生きさせられません。ただし、適量は猫によってさまざまです。食事から得られる熱量と、消費するカロリーのバランスが個々に異なるからです。
運動量の多い猫、筋肉質で基礎代謝力の高い猫は消費カロリーも多く、高齢になり筋肉が減少してきた猫は消費カロリーが少なくなります。猫に合わせて、摂取カロリーと消費カロリーのバランスが取れた適切な量の食事を与えることが、長生きの秘訣の一つです。
3.水分補給も大切な要素
水も生きていくためにとても大切な要素です。子猫の身体は60〜80%、成猫も50〜60%が水でできているのです。
元々あまり進んで水を飲もうとしないのが猫です。特に高齢になればなるほど、喉の乾きには鈍感になっていきます。長生きさせるためには、愛猫がいつでも好きな時に好きなだけ新鮮な水を飲めるようにしてあげましょう。
4.食欲低下時の適切な対応
直接猫が口にするものについての考え方をご紹介してきました。最後は、猫に何らかの問題が生じて食欲が減退してしまった時の対処についてです。
ケガや病気などで食欲がなくなることは、猫にもよく見られることです。このような場合、低血糖症や肝臓疾患を起こすなど命に関わる場合もありますので、とにかく食べられるものを食べさせることが大切になります。
これなら好んで食べてくれるという好物を知っておくと、食欲を回復させるきっかけになるでしょう。それが仮に、総合栄養食ではないおやつ(副食)とされるものや、人間の食べ物など、猫に最適な食材ではなくても、ごく少量なら食べさせても体調に影響しないものであれば、いくつか好物を作っておくと良いでしょう。
また猫の場合、同じ味に飽きてしまうのか、今朝まで美味しそうに食べていたフードを突然食べなくなってしまうことがよくあります。これは、愛猫のお気に入りの風味のフードをいくつか見つけておき、適度なタイミングでローテーションすると避けられるでしょう。
食生活だけでは長生きできない
今回は、愛猫を長生きさせるために必要なポイントを、食事に焦点を当てて見てきました。たしかに食事は身体を作るためのベースですから、食生活と長生きは切っても切り離せない関係です。
しかし、愛猫を長生きさせるために気を付けなければならないポイントは、食生活だけではありません。
ねこまんまだった時代から時を経て、現在は猫にとって良質なキャットフードや、手作りしたい飼い主さん向けにさまざまな猫の栄養に関する書籍も販売されています。また完全室内飼育も普及しています。そんな現代では、愛猫を長生きさせるためにはストレスコントロールも大切な要素になります。
毎日適度な運動をさせ、刺激的な生活をさせ、人間社会の中で生きていくためのルールをきちんと教えることで、ストレスの少ない生活を送ってもらうことができます。
また、生きていく上で避けて通れないのがケガや病気です。信頼できる動物病院を見つけ、定期的に健康診断を受けることも長生きには大切です。
猫を長生きさせるためには、「食事」「ストレス」「健康」の3点に気を付けてあげることが大切だと考えましょう。
まとめ
食事は毎日の楽しみでありながら、健康を維持するために重要な役割を持っているものです。それは、愛猫にとっても人間にとっても同じです。美味しく食べて満足しながら、健康を維持できるのが一番です。
前述の通り、猫はついさっきまで美味しそうに食べていたフードも、長く続くと突然プイッと食べなくなってしまうことがあります。
このような猫の特性も理解した上で、愛猫の嗜好性を普段から把握し、上手に食事管理の中に組み込むことで、一日でも長く一緒に楽しく暮らせるようにしていきましょう。