非常に危険な脱水症状
気温が30℃を超えるような日が続くようになると、しきりに「水分補給」という言葉が聞かれるようになります。暑いと人間は汗をかいて体温を調節します。汗をかくと水分と共に塩分も失われ、これが過度になると身体に悪影響が生じます。
いわゆる「脱水症状」と呼ばれる症状ですが、酷い脱水症状はやがて熱中症へと移行し、場合によっては命の危機も引き起こすような状態になってしまいます。
猫は、肉球と鼻からしか汗をかくことができません。しかし、猫も脱水症状を起こします。猫の祖先は水の少ない砂漠地帯に住んでいたため、もともとあまり積極的に水を飲もうとしないという習性を持っているため、猫は脱水弱者だともいわれています。
脱水症状は、猫にとっても好ましい状況ではありません。前述の熱中症はもちろん、体のだるさやふらつき、皮膚や唇、舌などの乾燥や皮膚の弾力性の低下、微熱などが起こり、ひどくなると食欲低下、脱力、意識障害、血圧低下、頻脈などの重篤な症状も引き起こします。
脱水症状を起こしているかどうかの確認方法
前述の通り、脱水症状を起こすとさまざまな症状が起こります。ただし、外見だけで脱水症状を起こしているかどうかを察知するのは難しいでしょう。そこで、簡単に愛猫が脱水症状を起こしているかどうかを確認する方法をご紹介します。
愛猫の脱水症状の有無は、皮膚の弾力性を評価することで確認します。
脱水症状の確認手順と判断基準は以下の通りです。
脱水症状の確認手順
背中側の首の皮膚をつまみ、軽くひねり、指を離す
【脱水症状の判断基準】
- 正常:皮膚があっという間に元の状態に戻る
- 脱水症状の可能性あり:皮膚が元の状態に戻るのに、数秒かかる
愛猫の様子に違和感を感じた時に、ぜひこの方法を試してみてください。
なお愛猫が健康な時に、一度この方法を試しておきましょう。正常な時の様子を把握しておけば、正常でない状態の際にすぐに判断できるのでおすすめです。
自宅でできる応急処置
脱水症状は、放置しておくと進行して重篤な状態に発展する可能性があります。特に子猫や老猫の場合は体力もなく免疫力も低いため、速やかに動物病院へ連れていきましょう。
病院に連れて行く前に自宅でできる、応急処置をご紹介します。
1.水を飲ませる
猫に意識があり、自ら水を飲むことができる場合は、新鮮な水を飲ませましょう。
なお脱水症状の場合、不足しているのは水分だけではありません。塩分(電解質)も不足していますので、経口補水液がある場合は、水よりも効率的に回復を促せます。動物用の経口補水液がなく人間用を使う場合は、2倍程度に薄めて飲ませてください。
2.シリンジ(注射筒)や脱脂綿を使って水分を与える
自力で飲める状態ではない場合は、シリンジ(注射筒)を使って飲ませたり、水に浸した脱脂綿を口元に持っていってなめさせましょう。
ただしそれでもうまく飲み込めないようなら、誤嚥性肺炎を起こす危険性もありますので、無理に飲ませないでください。
3.涼しい場所で体を冷やす
脱水症状を起こしていて室温も非常に高い場合は、熱中症になるリスクが非常に高く危険です。
水分の補給だけではなく、涼しい場所につれていき、猫の体を冷やしてあげましょう。
4.電話で動物病院に相談する
自宅でできる応急処置を行ったら、とにかく速やかに動物病院につれていき、診てもらいましょう。
事前に電話で愛猫の様子を伝えておくと、獣医師からアドバイスをもらえ、速やかに診察してもらえるでしょう。
猫が脱水症状を起こす主な原因
では、猫が脱水症状を起こす主な原因は何でしょうか。知っておくことで、普段から注意をして愛猫を脱水症状から守ることができるでしょう。
水分補給量の不足
脱水症状とは、体内の水分が不足した結果生じる症状ですので、水分の補給量が不足することで生じます。
新鮮な飲み水を十分に飲める状況ではない、食欲不振でフードからの水分摂取ができない等の場合、脱水症状を起こす可能性があります。
暑さ
気温の高い場所に長時間いると、猫も脱水症状を引き起こし、それが原因で熱中症になる可能性があります。
猫は人間のように全身から汗をかくことはありません。しかしあまりにも暑い状態が続くと、口を開けてハァハァと荒い息遣いになり、口内の水分を蒸発させることで体温を下げようとするのです。
猫は犬と違い、通常口で息をすることはありません。猫が口を使って呼吸をしている場合は、猫にとって余程体調が悪い状態であると考えて良いでしょう。
病気等
下痢や嘔吐、大量のおしっこが続いている時にも、体内の水分と塩分が大量に体外に排出されていしまい、脱水症状を起こします。
下痢や嘔吐、大量のおしっこが続く原因としては、猫風邪などの感染症や消化不良、肝疾患、膵炎、慢性腎臓病、糖尿病、ストレスなどが考えられます。
まとめ
もともと、猫はあまり積極的に水を飲もうとはしません。だからこそ、普段から猫が飲みたい時に飲みたいだけ、新鮮な水を飲めるような環境を整えてあげましょう。
また、猫はウォーターボウルの形状や材質などによっても、水をよく飲むようになることがあります。できるだけ積極的に水を飲むようにいろいろと工夫をしてあげましょう。
目安として、猫の場合は体重1kgあたり20〜45ml程度の水分補給が必要だといわれています。水分はフードからも摂取するため、飲水量だけでは判断できませんが、例えば体重3kgの猫なら、1日60〜135ml程度の水を飲んでいれば安心でしょう。