どんな症状が出るの?
「猫回虫」とは、猫の体内で成長・繁殖する寄生虫の1種です。成虫の大きさは輪ゴム程度で、卵や幼虫を猫が口にして感染します。
しかも猫回虫は人にも感染します。日本国内では稀ではありますが、小児に感染した場合は重症化する可能性もあるので注意が必要です。
猫回虫に感染した成猫は、ほとんど無症状です。しかし子猫には以下のような症状があらわれます。
- 嘔吐や下痢
- お腹が膨れる
- 栄養状態が悪い
- 体重が増えない
- 成長が遅い
これに加え、たまに幼虫を吐く子猫もいるようです。
どんなふうに感染するの?
猫回虫の感染経路は3つですが、どれも口から卵や幼虫を飲み込むことで感染します。
猫の糞(のそば)に触る
猫回虫の卵は猫のウンチに混じり、その近くの土に散らばります。猫は知らずにそれを踏み、舐めて卵を飲み込んでしまうのです。
ネズミや昆虫を食べる
獲物のネズミなどの小動物や昆虫が卵を口にして感染し、それを食べた猫が感染する場合です。
母乳を飲む(母子感染)
猫の母親が感染している場合、母乳に幼虫が混じることが知られています。子猫はミルクと一緒にそれを飲み、感染してしまうのです。
治療はどうやって?
猫回虫には駆虫剤を使いますが、効くのはお腹の成虫だけです。実は猫回虫は幼虫時代、肺や肝臓など身体のあちこちに潜んでいるため薬が届いてくれないのです。
ですからもしウンチを検査して卵が見つかったら、まず駆虫剤(飲み薬またはスポット剤)を投与します。そして幼虫が成虫になる2週間目ごろ再検査を行なって、卵があればまた薬。これを卵が出なくなるまで繰り返します。
母子感染など濃厚感染が疑わしい場合は、3ヶ月齢まで2週間毎、その後、1ヶ月毎、3ヶ月毎の投薬、とする方法も推奨されています。
猫回虫症の予防法とは
猫回虫は口から入って感染するので、卵や幼虫を口から入れないように気をつけなければなりません。
1.幼猫は6週齢以降、定期的に検査を受ける
2.ウンチをしたらすぐ処理する(ウンチ中の卵が感染力を持つには10日ほどかかる)
3.トイレは月に1回以上砂の総入れ替えとトイレ自体の掃除(洗う、拭くなど)をする
4.感染猫がいる場合は上記3の掃除を1〜2週間おき
5.猫を外に出さない(卵のいそうな場所に行かせない、小動物を食べさせないため)
このように、定期的な予防と環境整備で、感染と再感染を防ぎます。
飼い主さん本人が注意したいこと
猫回虫は人にも感染しますが、困ったことが1つあります。猫回虫は猫の寄生虫なので、人に寄生すると体の中で迷子になってしまうのです。
これを「幼虫移行症」といい、迷走先の臓器によってさまざまな障害(例えば脳ならてんかんなど)を引き起こします。しかも腸にいないので駆虫剤が届かず、治療は対処療法になるのです。
これに対する予防策は、単純ですが手を洗うこと。猫のトイレや公園の砂場、庭の土や野良猫自体を触ったときなど、猫回虫の卵のありそうなところを触ったら、とにかく手を洗って口に入らないよう気をつけましょう。
まとめ
猫回虫症は子猫のときによく見られる感染症です。子猫はすぐ症状が出るので検査につながりやすいのですが、おとなはほとんど無症状なので、知らぬ間に同居猫や人にまでうつっているかもしれません。
猫回虫の卵は肉眼では見えませんが、成虫が卵を産んだタイミングであれば検査ですぐに見つかります。わざわざ検査に出向くのは大変ですが、年に1度か2度の健康診断にウンチを持参すれば定期的に検査できます。
健康診断の検査では、猫回虫以外にも分かることがたくさんありますので、是非習慣化することをおすすめします。
もし検査で虫卵が見つからなくても、「感染はない」とは断言できませんし、回虫以外にも猫にとって危険な寄生虫がいます。成猫であっても3ヶ月毎の駆虫をすることがおすすめです。