人間の女性では、閉経前後の10年程、女性ホルモンの減少や乱れから「更年期障害」と呼ばれる不調を感じる人が多くいます。症状にはのぼせや動機、発汗、イライラや不眠などがあります。猫は繁殖に関するメカニズムが人間とは異なるため、メス猫においても人間と同じ「更年期」はありませんが、高齢の猫で多く見られる「甲状腺機能亢進症」という病気があります。
甲状腺機能亢進症によって以前より活動的/攻撃的になったり、様々な体調不良が見られるので、人間の更年期障害に似ている病気と言われることもあります。女性ホルモンが関係している更年期障害とは異なり、猫の甲状腺機能亢進症は「甲状腺」という臓器から出る甲状腺ホルモンが多過ぎることが原因です。
1.猫の甲状腺機能亢進症は何歳に多い?
猫の甲状腺機能亢進症は8歳以上の猫に多く見られ、8歳未満の猫ではまれにしか見られません。
2.猫の甲状腺機能亢進症の症状は?
「甲状腺機能亢進症」は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、代謝が異常に上がる病気です。
下記のような症状が見られます。
- • 活動的/攻撃的になる
- 水を大量に飲む
- 食欲旺盛になる
- 嘔吐、下痢
- よく食べるのに体重が減っていく
典型的には「元気でよく食べるのに痩せていく病気」と言われますが、猫によって症状は様々なので、高齢の猫で何か不調がある時には甲状腺機能亢進症を疑う必要があります。
病院で検査し、血液検査によって甲状腺ホルモンが多く出ていることを確かめることで診断されます。
3.猫の甲状腺機能亢進症で注意すべきことは?
「甲状腺機能亢進症」を発症すると、食欲旺盛になることがよくあるため、一見元気に見え、飼い主さんが気づきにくい病気でもあります。
落ち着きなくウロウロしたり、よく鳴くようになった、嘔吐や下痢をよくする、体重が減っているようであれば、病院で診てもらいましょう。
また、「よく食べるのならいいじゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、甲状腺機能亢進症の猫の体では代謝が異常な状態にあり、決して猫は快適ではありません。甲状腺機能亢進症が疑われたら、早期に診断して治療を開始してあげましょう。
4.猫の甲状腺機能亢進症を予防・早期発見するための対策は?治療は?
残念ながら、甲状腺機能亢進症にかからないようにするための予防法はありません。甲状腺がホルモンを過剰に分泌するようになることとの関連が疑われている化学物質がいくつかありますが、甲状腺機能亢進症の原因だと断定されているものはありません。
甲状腺機能亢進症は薬や療法食によって治療が可能ですし、早期に発見すれば他の臓器への悪影響を最低限に抑えることができます。早期発見するためには、次のようなことに気を付けましょう。
猫をよく観察する
高齢猫で何か不調がある時は「年だから」と片付けないで、何か病気がある可能性を常に考えましょう。
猫をよく観察すると、以前とは違っていること、そういえば半年前とは違うなあと思うようなことがいくつか見つかるかもしれません。
更年期のような症状が見られたときは、原因を突き止めることが大切です。異変がないか、日頃からよく観察してあげましょう。もし病気を発症していたとしても、初期段階であれば食事療法や投薬で治療をすることが出来ます。
食べているから大丈夫だろう、年だから不調があってもしょうがないと考えずに、日頃から猫をよく観察して変化を発見したら、動物病院を受診してみあげましょう。
定期的な健康診断を受ける
猫の甲状腺機能亢進症は、猫によって症状のばらつきが大きい病気です。典型的には「元気でよく食べるのに痩せていく病気」と説明しましたが、食欲不振となる猫もいますし、嘔吐や下痢だけが症状として現れる猫もいます。
症状が分かりにくい病気を早期発見するには、半年に一回程度の定期的な健康診断を受けましょう。高齢の猫では、甲状腺機能亢進症にも腫瘍や糖尿病、腎臓病などの病気も多くなります。そのような病気を早期発見するためにも定期的な健康診断は役立つでしょう。
治療は、飲み薬・療法食・手術で
甲状腺機能亢進症の治療は、出過ぎている甲状腺ホルモンの量を抑えることになります。飲み薬や療法食がよく使われ、生涯に渡って続ける必要があります。飲み薬や療法食が使えなかったり効かなかったりする場合には、甲状腺を切除してしまう手術を行うこともあります。
まとめ
いかがでしたか?猫も人間同様、高齢になると様々な病気にかかりやすくなります。大体7歳を過ぎるとシニア期に入りますが、飼い主さんの日頃のケアと観察により、猫はより健やかに過ごすことが出来ます。
猫のシニア期に代表的な病気の一つに、甲状腺機能亢進症があり、血液検査で診断可能で、主に飲み薬や療法食で治療が可能です。
愛する猫がいつまでも健康でいられるよう、飼い主さんは猫のシニア期の病気や対策を知っておきましょう。